研究テーマ例
・素数ゼミ
・多胚性寄生コバチの兵隊幼虫による雄殺しによる適応性
・混み合い効果を含んだ ロトカヴォルテラ競争方程式上での多種間共存
はじめに
当研究室では、生物の進化理論を中心に、世界の先端を創造する研究をします。
研究内容は、生物進化や自然資源、国際経済など幅広い分野のモデリング、動的最適化理論の展開および動的ゲームの開発などです。
- 素数ゼミ
素数ゼミ(周期ゼミ)は世界で唯一アメリカだけに見られる世にも不思議なセミです。このセミたちは17年と13年という長い発生周期を持つのですが、なぜ周期を持ち17年と13年という期間で発生するのか長い間明らかになっていませんでした。本研究では、素数ゼミが氷河期を踏まえた長い進化史の中で絶滅回避のため17年と13年という素数の周期性を獲得したという仮説のもと現地のフィールド調査の観察結果や採取による遺伝子分析を基に仮説の正当性に取り組んでいます。
- 多胚性寄生コバチの兵隊幼虫による雄殺しによる適応性
自分を犠牲にするまたは自分の子孫が残せなくなるような行動、自己犠牲は特異な現象です。
例えばカマキリの共食いや社会性昆虫の蜂や蟻の生態的防御などが知られていますが、
この自己犠牲による適応性のメカニズムは解明されていません。そのため、同じような生態を持つ
多胚性寄生コバチのキンウワバトビコバチ(以下コバチと呼ぶ)に着目しました。
このコバチは生殖幼虫と兵隊幼虫がいる宿主内で雄生殖幼虫への雌兵隊幼虫による雄殺しを行うのですが、野外調査から雌雄混合の宿主では9割以上の雄が殺されている事が知られています。そのため新しいモデルを用いた、雄殺しを行うコバチの適応性を示すことを試みています。
- 混み合い効果を含んだ ロトカヴォルテラ競争方程式上での多種間共存
古典的ロトカヴォルテラ競争方程式は多くの場合、種間競争よりも、種内競争が強いときのみ共存を示すといわれています。(Gause 1932)。つまり、同じ生息地にn種存在したとき,n-1種は絶滅し1種のみが生き残ると考えられるのです。
この現象はGauseの競争排除則として知られていますが、自然界では様々な種類の動物が共存して、生物の多様性が観測されており、大きな問題があると推測されます。
そのため、本研究では競争種同士の共存を簡単に示す新たなメカニズムのモデル構築を試みています。 例えば、自然界では集団が大きくなれば大きくなるほど死亡率が上昇することがわかっていて、この現象は” 混み合い効果”(crowding ) として知られていますが、
本研究では古典的ロトカ ヴォルテラ競争方程式上でこの混み合い効果を考慮する事で、
自然界の競争種同士の共存の必然性も試みていきます。