科学技術・学術研究の高度化・複雑化に伴い、研究不正の発生予防及び対応策が重要な社会的課題となっています。世界各国では政府機関、学術団体、研究費配分機関、研究機関が中心となり、それぞれの国情に即した「研究公正システム」の構築が進められてきました。

藤井研究室では、調査権限を持つ「研究公正局」を設置して集権的システムを構築した米国とは異なり、研究者および研究機関の自律性及びセルフ・コントロールを基盤にすえるドイツ型「研究公正システム」に注目して、そのガバナンス思想および制度設計を実証的に分析しています。これまでにドイツ研究推進協会(DFG)、ドイツ大学長会議(HRK)、理化学研究所、国内外の研究機関の関係者と連携をとりながら以下のような調査研究を進めてきました。

論文:ドイツにおける研究倫理への取組(1)

論文:ドイツにおける研究倫理への取組(2)

論文:ドイツの研究倫理:抄訳『DFG提言』(2014)

研究ノート:欧州における「国家研究公正システム」の国際比較

論文:ドイツにおける研究公正と「学問の自由」(1)

論文:ドイツにおける研究公正と「学問の自由」(2)

共著:『学問の自由の国際比較』(岩波書店)

今後も日本の「研究公正システム」が抱える諸課題(制度理念、連携体制、教育プログラム開発等)について参照となる知見及び国際的な比較視座を提示することを目指します。

本研究は文部科学省科学研究費助成事業(基盤研究C:15K04288)「ドイツにおける『研究公正システム』の構築と展開に関する思想的・制度的研究」(基盤研究C:19K02500)「ドイツにおける『責任ある研究・イノベーション(RRI)』教育の制度論的研究」及び研究代表者:羽田貴史(基盤研究B:18H00973)「学問の自由の動態と再構築に関する国際比較研究-コモンローと制定法ー」「学際・超学際研究を推進する『研究公正』の概念・法制度・教育開発研究」(基盤研究B:23H00979)の一環として進められてきました。また、これまでの研究の成果は以下の委員会にも提供しています。

1)文部科学省・未来工学研究所(2014)「研究不正に対応する諸外国の体制等に関する調査研究」有識者委員

2)文部科学省・PwC(2018)「諸外国の研究公正の推進に関する調査・分析」有識者委員

3)文部科学省・デロイト・トーマツ(2019)「諸外国における研究倫理教育内容の水準に関する調査・分析」有識者委員