2011年3月、東日本大震災をテレビや新聞などで目の当たりにした学生たちから「今年は防災教育をやりましょう」と発案があり、研究室全体で防災教育への取組がスタートしました。静岡大学防災総合センターの専門家からも助言や支援をいただき、半年間をかけて先行教材の分析や情報収集を重ね、最終的に災害時における葛藤場面(ジレンマ)に焦点をあてた授業案を20種類ほど作成。授業の中では、①防災の知識を知ること、②じっくりと考えること、③話し合いを通じて最善の判断を吟味すること、といった学習過程を大切にしています。同授業は「防災道徳」授業と名付けられて、さまざまな場所で紹介・実施いただきました。2012年度には兵庫県などが主催する「1.17防災未来賞(ぼうさい甲子園)」において「教科アイデア賞」を受賞し、学生たちにも大きな励みとなりました。

続く2013年、特別支援学校に勤務する卒業生から「特別支援学校での防災教育をどう進めていけばよいか」という相談を受け、災害時要援護者に対する防災教育の研究に踏み出すこととなりました。「防災道徳」授業は話し合い活動が中心となるため、小学校の低学年、保育園、幼稚園などでは不向きとなります。そこで初期の避難行動を適切に身につけてもらうための教材として防災紙芝居『みずがくるぞ!!!!』を作成し、あわせて防災ダンスや防災ゲームを組み合わせた授業パッケージを提案しました。同パッケージは現在、静岡県、愛知県をはじめ東北各地や地域の防災センターでも活用いただいています。2014年には留学生向けの防災教材も開発・実践し、2014年度の「1.17防災未来賞(ぼうさい甲子園)」では「優秀賞」を受賞しました。

この頃になると私たちの研究プロジェクトは日本各地の学校からも関心を寄せていただくようになりました。内閣府が主催する「防災教育チャレンジプラン」の実践団体に指定され、学生たちも各地で巡検や授業を行い、共同研究も加速。これまでに学生たちが授業を行った教育機関は70機関以上となり、教材を提供した連携機関は100機関を超えました。他大学との研究会や合同ゼミ合宿も開催されており、防災教育のネットワークも全国規模に広がっています。2015年からは発達段階に応じた防災教育のカリキュラム開発や心のケアの視点を取り入れた教材づくりに着手し、これまでの一連の取組と実績が評価されて、2015年度から3年連続で「1.17防災未来賞(ぼうさい甲子園)」の「ぼうさい大賞」をいただきました。

学生たちとのゼミ活動を通じて実感してきたことは、静岡大学の学生たちの誠実さ実直さと教育者としての潜在能力の高さです。ゼミ活動では「Footwork & Network」、「Challenge & Change」、「Response & Responsibility」を合い言葉として、どん欲に学び、行動する姿勢を大切にしています。今後も活動を通じて、学生たちの成長を支援しながら、防災教育の裾野をさらに広げていけたらと願っています。

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