RESEARCH

自然と人間社会の共生
世界人口の過半数は海に隣接する所に住んでいます。この沿岸域は海洋生物においても生物多様性が最も豊富な場所です。しかし、近年、人口増加などによる急速な都市化・工業化に伴い、沿岸域では資源・エネルギー枯渇と言った様々な社会問題が表面化しています。私はこれらの問題の解決に貢献することを目的として、以下のテーマについて研究を行っています。
① 汚泥からの電気エネルギーの生産(微生物燃料電池)
② 産業副産物(石炭灰、製鋼スラグなど)を利用した水環境の改善
③ 藻類・海藻によるCO2の固定
④ 新たな水環境モニタリングセンサーの開発
人間社会と自然が共生可能な社会を構築することは、これ以上先送りできない課題です。 上記のテーマは、人間社会由来の汚染物や廃棄物を、自然に有益な資源として還元することに基づいています。研究フィールドは海に限らず、環境・エネルギーに関するさまざまな分野を視野に入れ、興味深い研究をこれからも行っていく予定です。

汚泥から電気を作る「微生物燃料電池」
私たちは毎日のように食べ物を消化して「エネルギー」を得ています。このエネルギーは、熱や電気などのさまざまな形に切り替えることができます。このように生物が食べ物(有機物)を分解して作る電気を生体電気(bioelectricity)といいます。
先の海の話に戻って、汚染された水や土には有機物が豊富で、さまざまな微生物が住んでいます。このような場所に電極を設置して微生物が生産する生体電気を回収する技術を微生物燃料電池(microbial fuel cells)といいます。微生物燃料電池は、2000年代から本格化した次世代型再生可能エネルギー技術です。例えば、韓国から年間排出される下水には新型原子炉6.5個が生産するエネルギー(6.5GW)に近似する量のエネルギーが含まれています。この下水を40%の効率でエネルギー化することで、新型原子炉3.2個(3.2GW)を代替する効果が得られます。私は産業副産物(製鋼スラグ)や藻類など、人間社会および自然に存在する資源を利用して微生物燃料電池のエネルギー効率を上げる研究をしています。高い電力生産を求めるとともに、干潟・養殖場・製鉄所・畜産業・農業といった各分野に特化した活用法を提案し、微生物燃料電池の普遍化に努めています。