乳酸菌などが菌体外に作る多糖であるα-グルカンの分岐を切断する酵素の同定に関する論文が、日本応用糖質科学会の英文誌 Journal of Applied Glycoscience にアクセプトされ、本日オンラインで公開されました!
乳酸菌の一グループであるLeuconostoc 属細菌は菌体外にグルコースがα-(1→6)結合で連なった多糖であるデキストランを作りますが、中にはα-(1→2)、α-(1→3)、α-(1→4)の分岐を多く持つα-グルカンを作るものがいます。この多糖の主鎖(すなわちデキストラン)のα-(1→6)結合を加水分解する酵素の研究例は数多くある一方で、分岐を加水分解する酵素の報告は数報に限られていました。
デキストランα-1,2枝切り酵素(dextran α-1,2-debranching enzyme, EC 3.2.1.115)は分岐の α-(1→2)結合を加水分解し、グルコースを遊離する酵素で、1978年に放線菌Microbacterium dextranolyticum(当時はFlavobacterium sp. M-73)から見出されていましたが、長らくアミノ酸配列が不明でした。私たちはこの酵素をM. dextranolyticumより精製し、解析した一部のアミノ酸配列から遺伝子を同定し、組換え酵素が同じ活性を有することを示しました。
CAZyによるアミノ酸配列の相同性に基づく分類ではGH65に分類されると考えられ、我々が以前発見したα-1,2-グルコシダーゼ(kojibiose hydrolase, EC 3.2.1.216)に続いて、GH65における2例目の細菌由来加水分解酵素になります。
昨年度の卒業生である田中君の卒業論文研究において、本酵素の精製とアミノ酸配列の同定が行われ、その後、宮崎が遺伝子のクローニング、大腸菌による組換え発現と性質解析、論文執筆を行いました。
宮崎と同じグリーン研に所属する道羅先生にはLC-MS/MSによるアミノ酸配列の同定を行っていただきました。山梨大・舟根先生との共同研究でもあります。
題名:Identification and characterization of dextran α-1,2-debranching enzyme from Microbacterium dextranolyticum
著者名:Takatsugu Miyazaki*, Hidekazu Tanaka, Shuntaro Nakamura, Hideo Dohra, Kazumi Funane