EDXマッピングとモード測定

EDXマッピングを用いてモード測定を行ってみました。
以下にその手順を記します。

EDXマッピングを用いたモード測定の手順
1 必要な範囲のマッピングをとる(スライドガラスや樹脂部などは極力マップにいれないようにしたほうが良い)

2 (LAマッピングの場合)マップを合成する
(大きいサイズの時は時間がかかる(解像度128、500枚くらいで10分くらい?))

3 「マップ作成」の「マップの詳細」で、含まれている元素が適切に選ばれているか確認

4 (必要ない?)
「マップ作成」の「マップ」「TruMap」「定量マップ」の並び一番右のボタン(AutoLayer)を押

5 「相の分析」の「相の検索」を押す
(設定はデフォルト?カスタム?大きいサイズの時は時間がかかる(解像度128、500枚くらいで10分くらい?))

6 「相の検索」で出てきた相を一つずつ選択して相を確認
6-1 相を選択(上から順?)
6-2 左上「マップ」から「ポイントID」または「アナライザー」を選択
6-3 「元素の確認」を選択し、選択した相が選ばれているのか確認(スペクトル右上にスペクトル名が表示されている)
また、スペクトルをみて、組成計算に必要な元素が選択されているのかを確認
(スペクトルを右クリック、「Y軸」の「単位」を「カウント」にし、十分なカウントがあるか確認するとよい)
6-4 「組成の計算」を選択し、化学組成を確認。相を決める。(6-4-1~6-4-3はその手順)
6-4-1 (岩石や鉱物(酸化物)の場合)「設定」を押し、「ストイキオメトリーによる元素」を「酸化物」、イオン数を予想される元素に応じて設定(24が便利)
6-4-2 (岩石や鉱物(酸化物)の場合)「結果タイプ」を「酸化物%」に設定し陽イオン、陰イオン比を見る。またシグマの値が酸化物%に対して十分に低いことも確認
6-4-3a 相を決めることができたら、(1)または(2)をする
(1) 右の「データツリー」タブ中、該当の相の名前を同定した鉱物種に変更。
(2) すでに決定した相と同じ鉱物種(相)である場合は、「マップ」の「相の分析」に行き、該当する相のマップ像上で右クリックし、「相の結合」から、同一の相を結合する
(この時、「データツリー」の相の名前がデフォルトに戻るので、再び同定した鉱物種に変更)
6-4-3b 相が同定できない場合は
・ 6-4-1からやり直す(教科書などで相を考える。あるいは「EBSD」の「フェーズID」の「相の検索」を用いて結晶相を調べるなども検討する)
・ unknownとみなす
・ 5の工程に戻り、「カスタム」の値を変える
7 6-1から6-4を繰り返す
unknownについては、SEMやBSE像なども確認しつつ同定を試みる
(マップからunknownの位置を確認し、実際に”unknown”を観察、あるいは点分析して同定を試みる。それでもわからない場合は”unknown”として残す)
「相の検索」で出てきた相すべてに対して同定できたら、次の工程へ
8 ピクセル数をその薄片の面積(=体積)とみなしてモードを計算する

 

花崗岩(トーナル岩)の薄片の実践例

得られたマッピング像の詳細については「花崗岩(トーナル岩)のマッピング像」を見てください
モード測定結果に関しては「花崗岩薄片のラージエリアEDXマッピングとモード測定(光学顕微鏡)の比較」をみてください

EDXマッピングと光学顕微鏡の比較の結果を下の表に示します

表 EDXマッピングと光学顕微鏡のモード測定結果の比較

主要な無色鉱物である石英、斜長石についてはEDXと光学顕微鏡で大きなずれがありませんでした。
アルカリ長石た単斜輝石については量が少ないため何とも言えないかと思います。
一方で角閃石に関しては一致しているとはいいがたいように思います。

ですが花崗岩の分類に大切な、石英・斜長石・アルカリ長石の比については十分に再現できていると思います。

 

以下に色々考えたことを記しますので、やってみるときの参考にしてください。

 

EDXと光学顕微鏡のモード測定結果の違いが起こる要因

・ 薄片全体で一様にモードが一定というわけではないので、測定する領域により違いが生じます

・ 光学顕微鏡観察で誤った同定をした場合、結果の違いが生じます

・ EDXで誤った同定をした場合、結果の違いが生じます
※ 鉱物特有の誤った同定になる要因例
石英、長石など、含まれる元素が限られており、なおかつアニオン(酸素などの陰イオン)に対するカチオン(陽イオン)の比が決まっているものは誤った同定も少ない。
一方で、鉱物に含まれる元素が多様だったり、価数が多様な元素があったり、アニオンとカチオンの比が変化するものは誤った同定になりやすい
※ 岩石特有の誤った同定になる要因例
岩石に含まれる鉱物間でピークスペクトルが似てしまう場合や、鉱物粒界で得たピークスペクトルが別の鉱物のピークスペクトルに見えてしまう場合は誤った同定になりやすい

 

EDXマッピングでモード測定をするときの注意事項

・ 粒径が十分大きいか、または粒径に対して適切なマッピング条件で分析できているか(鉱物の粒界を分析する率が低いか)注意する
※ 粒界はUnassighned pixelsとなっていることが多い(こちらを参照)。
そのため、この手法の場合
1 粒径の小さな鉱物の多い岩石は正しい値を測定することができない
2 粒径が小さい鉱物は大きな鉱物と比較して、モードの値が実際の値よりも低く出る傾向にある
ように思います。

・ あらかじめ、どのような鉱物が含まれているか調べておく
(光学顕微鏡観察、SEM観察、EDXを併用して鉱物種を予想して起き、それぞれの鉱物がどのようなEDXスペクトルを示すのかを調べておく)

・ 含まれる元素が似ている鉱物について、相が分離されているような条件で「相検索」を行う

 

さらにこだわりたい場合

「エクスポート」でそれぞれの元素のマッピング像をテキストデータとして出力することが可能です
下記の文献を参考に、エクスポートデータを用いてモード測定を行ってみてください

石橋正祐貴、湯口貴史
花崗岩類中の鉱物分布および鉱物組合せとその量比(モード組成)の新たな評価手法の構築:走査型X線分析顕微鏡で取得した元素分布図を用いた画像解析
応用地質,第58巻,第2号,80-93頁,2017

松本啓作、平島嵩男
走査型電子顕微鏡を用いたモード測定
岩石鉱物科学35, 97-108, 2006