Obsidianを用いた検証(Naの特性X線強度の時間変化)

Astimex MINM25-53 に含まれているObsidian(ガラス)を用い,下記の条件で検証します

分析条件
使用する装置名     JEOL JXA-iSP100
加速電圧        15kV
照射電流        10nA
照射時間        60秒
試料の化学組成(wt%) H0.09, O48.63, F0.07, Na3.01, Mg0.04, Al6.94, Si34.56, Cl0.36, K4.18, Ca0.54, Ti0.06, Fe1.34
ビーム径        0-20 mm
フォーカス位置     WD11.1-10.4mm (光学系のピントが合う時のWDは約11.1mm)

※ 使用した装置の場合、倍率1000倍の時に操作パネルのフォーカスつまみを一周させると、WDが0.1mm変化します
(倍率によりWDの変化量は異なります。2000倍の時は約0.066mmぐらいでした)
※ 細かなWDの値は写真を保存した時に一緒に保存されるテキストファイルでわかります

 

Obsidian中のNaの特性X線強度の時間変化

下の図にビーム径を変化させたときの変化及びデフォーカスした時の変化を示します。
Naの特性X線は、2chのTAPが129.494mm、4chのTAPHが129.374の時に最も強く検出できます。
(TAPHのほうが分光結晶や検出器が近くにあるため高感度です。一方TAPは高分解能です)


図a-d ビーム径及びWDを変化させた時Naの特性X線強度変化(縦軸は強度、横軸は時間)
強度は、開始5秒間の平均強度を1とした時の強度を示す。また、各データ点は前後5秒で平滑化処理したものである
図中のSpotはビーム径0mmでピントを合わせて分析した結果を示す。またA5, A10, A20はビーム径を5, 10, 20mmで、D0.2-D0.7はWDをピント位置から0.2-0.7mm変化させて分析した結果を示す

Spotの時、1分後には特性X線強度は約50%以上減少しています
またA20やD0.7でも5-10%程度の減少がみられます

Obsidianなどのガラスを測定するときは、ビーム径20mmやデフォーカス0.7mmよりも大きくする必要があるようです

 

 

ビーム径の変化とデフォーカス変化の比較

デフォーカスした時に、どれくらいの範囲に電子線が当たっているのか、下の写真から考えてみます


図e ビーム径の変化と試料が受けたダメージの二次電子像
図f WDの変化と試料が受けたダメージの二次電子像
図g マイナスに0.2mmデフォーカスした時と、プラスに0.2mmデフォーカスした時のダメージの二次電子像
CWD0.2は1000倍の時に時計回りに2回転させており、WD11.1mmでピントが合う状態からWD10.9mmへ変化させた。またCCWD0.2は反時計回りに2回転させており、WD11.3mmの時のダメージである。
図h マイナスに0.2mmデフォーカスした時と、プラスに0.2mmデフォーカスした時の特性X線強度変化

 

0.2mmデフォーカスした時は約5mm、0.3の時は約10mm、0.5の時は約15mm、0.7の時は約20mm、の範囲でダメージを負うみたいです。
またWDがマイナス方向に0.2mmデフォーカスした時(CWD0.2)とプラス方向の時(CCWD0.2)で若干の違いがあるうに見えますが気のせいでしょうか?

ではとりあえず、ダメージを負った範囲が電子線の当たった範囲と仮定してビーム径変化とWD変化を比較してみます
(この比較が正当かどうかは不明です)

 


図i 見た目のダメージから推測する電子線の照射範囲と1分後の特性X線強度の関係
縦軸は最初5秒間の平均X線強度に対する最後5秒間の平均X線強度であり、2chと4chの平均値をプロットした

 

見た目のダメージを照射範囲とすると、ビーム径の変化とWD変化には差がないように見えます

デフォーカスの場合どの程度の範囲に電流が照射されるのか照射範囲がイメージしにくいのに対し、ビーム径は照射範囲がイメージしやすいかと思います

なので標準試料登録や定量分析の条件を考える際は、デフォーカスせずに適切なビーム径を決定したほうがよさそうです
(そうすることで、照射範囲をイメージしつつ分析できる)

 

Obsidian中のKの特性X線強度の時間変化

他のアルカリ元素(カリウム)について考えたいと思います
下の図にビーム径を変化させたときの変化及びデフォーカスした時の変化を示します
Kの特性X線は、2chのPETJが119.726mm、4chのPETHが119.620の時に最も強く検出できます図j-m ビーム径及びWDを変化させた時Naの特性X線強度変化(縦軸は強度、横軸は時間)
強度は、開始5秒間の平均強度を1とした時の強度を示す。また、各データ点は前後5秒で平滑化処理したものである
図中のSpotはビーム径0mmでピントを合わせて分析した結果を示す。またA5, A10, A20はビーム径を5, 10, 20mmで、D0.2-D0.7はWDをピント位置から0.2-0.7mm変化させて分析した結果を示す

 

Spotの時、1分後には特性X線強度は約70%以上減少しています
一方Naの場合とは異なり、スポットではない条件ではKの特性X線強度はそれほど減少しないみたいです

照射範囲という観点から考えると、Naが分析できる条件であればKを分析する条件も満たされているとおもいます