SEM-EPMAのローランド円と分光結晶、特性X線の波長とエネルギーの関係

試料、分光結晶、検出器の位置関係(X線回折)

本学のSEM-EPMAにはWDXが4チャンネルついています。

それぞれのチャンネルには分光結晶が2つついており、
CH1、CH3はPET(2d=0.8742nm)とLIF(2d=0.40267nm)が
CH2、にはTAP(2d=2.5757nm)とLDE1(2d=5.8-6.2nm)が
CH4、にはTAP(2d=2.5757nm)とLDE2(2d=9.5-10.5nm)がついています。

電子線照射された試料から特性X線が出て、それがそれぞれのチャンネルの分光結晶で回折し、検出器で測定されます。

WDXにおいて分析する試料の位置は固定(WD約11mmの位置)されていますが、
分光結晶、検出器はそれぞれのチャンネルで次の条件を満たす位置関係を保ちながら動きます。
・ X線取り出し角度が(電子線 – 試料 – 分光結晶のなす角度)が常に一定になるように動きます
(本機器は40°らしい)
・ 試料、分光結晶、検出器の3点を通る円の半径が常に一定になるように動きます
(この円はローランド円と呼ばれ、その半径はCH1, 2では140mm、CH3, 4では100mmです)


L値と特性X線の波長(l

WDXのスペクトルの横軸はL(mm)です。
このLは上図の長さで、

L = 2Rsinq ・・・ ①

であらわすことができます。
また以下のブラッグの式を満たすときに分光結晶は回折します。

2dsinq = nl ・・・ ②
dは分光結晶の面感覚、lは特性X線の波長、nは自然数(通常1を考えればよい))

①、②から、

L = nRl/d ・・・ ③

それぞれのチャンネルで分光結晶を一つ選択したときRとdの値が決まるため、
Lとにより特性X線の波長lを決めることができます。

 

L値とエネルギー(keV)の関係

X線のエネルギー(E(keV))と波長(l(nm))には以下の関係があります

El = 1.24 ・・・ ④

③、④から

LE = 1.24nR/d ・・・ ⑤

⑤式を用いることで、EDXのスペクトルとWDXのスペクトルを比較することができます

 

※ 細かいことですが、Ch3, Ch4のL値についてL = 1.4L’としているため、⑤式に入れるRはR=140としています。