本学の機器で、透過EBSDを行うことも可能です。
※ 14mmΦの試料台を必要としますが、2022年7月現在は14mmΦの試料台を所持していません。
透過EBSDを行うにあたり、14mmΦの試料台を用意する必要があります
透過EBSDのメリット
・ TEM用の試料の薄膜全体の結晶相および方位を得ることが可能
・ 従来よりも高い空間分解能でEBSD分析を行うことが可能
・ EDXについて、平面試料で行う場合と同じWD(11mm)で行うことが可能
・ 試料平面が水平であるため、通常のEBSDのマッピング像(70°傾斜の像)と比較してゆがみが少ない
透過EBSDのデメリット
・ 電子を透過させるための準備(薄膜など)が必要
・ 加速電圧、照射電流が高いため試料によっては分析中にアモルファスになる
・ 使用経験のある人が少ない
透過EBSDのやり方
※ 通常のEBSDが使用できることを前提としています(通常のEBSDが一緒にいること前提)
1 傾斜試料台にTEM用の試料ホルダー(Cuメッシュなど)をセットする
1-1 図1の左図の傾斜試料台の真ん中のネジを外して、中図のように分解する
1-2 TEM用試料を挟むパーツのネジを外すと、右図のように分解可能。短辺の欠けている箇所にTEM用試料を挟み、ネジをしめてTEM用試料を固定する
※ 通常のピンセットのみの場合、TEM用試料を固定する作業が最も難度が高いように思います
1-3 1-1で外したネジをしめて、左図のような状態にもどす(TEM用試料は固定されている)
図1 傾斜試料台
2 14mmfの試料台に傾斜試料台をセットする
図2左のように傾斜試料台をセットする
※ 2022年7月現在、14mmΦの試料台を所持しておりません
図2左 14mmΦの試料台にセットされた傾斜試料台の模式図
図2右 FE-SEMの試料室で70°傾斜させたときの電子ビーム、薄膜試料、EDX検出器、EBSD検出器の位置関係
3 14mmΦの試料台を用いて試料をFE-SEMの試料室に入れる
通常の試料交換作業と同じでよいが
・ 図2左のように、傾斜試料台の傾斜がEBSD検出器の反対側になるようにする
・ 高さの入力に注意して、試料台がぶつからないようにする
4 試料台を70°傾ける
4-1 FE-SEM制御ソフトの右のステージの写真を、ステージ横からの光学カメラに切り替える(図2右のような視点からのカメラに切り替え、試料台がぶつからないか注意する)
4-2 (任意)試料台がぶつかるか不安な場合は、「z」を押して、zの値を大きくする
4-3 FE-SEM制御ソフトの右下の方の [x, y , z, R, T SRT] の「T」を押して、Tを70に°設定する
5 薄膜に加速電圧30kVの電子ビームが当たるようにする
5-1 加速電圧を段階的に上げていき30kVにする(15kV~30kVは5kV刻みで上げる)
5-2 (任意)Std-PCを75ぐらいにして、電流値を上げる(大電流ではないほうが良い場合はここは不要。好みの電流値に設定する)
5-3 通常の観察をしながら、薄膜試料を探す
5-4 ステージ横からの光学カメラを見ながら、観察したいWDになるように「WD」及び「Z」を調整する
6 EBSD検出器の準備1 ジオメトリの準備(+結晶相の準備)
6-1 右PCのEDX、EBSD検出器用の制御用ソフトを立ち上げる
6-2 制御用ソフトの左上から右へと順に「EBSD」 → 「TKDマップ」 → 「試料の詳細」を選択する
6-3 試料詳細ウィンドウの上部の「試料ジオメトリ」を選択し、「傾斜試料台を使用」にチェック、「傾斜試料ホルダ(度)」を「-70」に設定
※ これをやらないと、正しい方位の鏡写しの結果が出力されてしまう
6-4 試料詳細ウィンドウの上部の「結晶相」から、結晶相を選択する
図 6-3の資料ジオメトリーの設定画面
7 EBSD検出器の準備2 EBSD検出器の挿入
7-1 制御用ソフトの右下から、EBSD検出器の制御ウィンドウを立ち上げる
7-2 ステージ横からの光学カメラを見ながら、EBSD検出器を途中位置まで挿入する
7-3 このまま挿入するとぶつかりそうな場合は、エレベーションにより挿入しても大丈夫な位置に調整
7-4 ステージ横からの光学カメラを見ながら、EBSD検出器を分析位置まで挿入する
8 エレベーションの調整(この調整中は近接性センサーはonのままのほうが良い)
8-1 上の方にある「パターン調整」を選択する
8-2 ステージ横からの光学カメラを見て、エレベーションの上下でEBSD検出器がぶつからないことを確認
8-3 光学カメラのモードを切り替えて、EBSD検出器に可視光が入らない状態にする
8-4 薄膜試料に電子ビームを当て、透過の散乱電子がEBSD検出器に入るようにする
8-5 EBSD検出器の制御ウィンドウのエレベーションでEBSD検出器を動かし、EBSD検出器中心付近の透過の散乱電子の強度が高くなるようにする(EBSD検出器の「Raw」の像の中心付近が明るい状態にする)
9 バックグラウンド調整
9-1 EBSD検出器の制御ウィンドウで近接性センサーを「off」にする
9-2 通常のEBSDの時と同様のやり方で、露光時間を決定する(自動バックグラウンドをとる)
9-3 (任意)静的バックグラウンドが取れそうな場合(アモルファス、多結晶がある)場合は、静的バックグラウンドを収集する
10 幾何学的条件の最適化
10-1 上の方にある「ソルバーの最適化」を選択する
10-2 通常のEBSDの時と同様に、ビームを画面中央付近の結晶に当て、MADの小さい候補を選び、最適化をする
※ 透過EBSDの場合、しっかりと最適化することが重要
EBSDパターンと方位に関しては、WD25~35mmでキャリブレーションがとられています。
したがって、通常のEBSDの場合はWDはキャリブレーション範囲内であり最適化なしでも大きくはずれていない状態です。
一方、透過EBSDの場合は、WD25~35mmのキャリブレーションから約WD10mm付近を慨そうしているため、最適化なしの場合は方位が大きくずれるおそれがある
11 透過EBSDの開始
これで準備完了です。観察や方位解析を開始してください。
実際に透過EBSDを行った結果
オンファス輝石について本学の機器で透過EBSD観察をしてみました。
こちらを参考にしてください。