Researches

Toward the Construction of a Science of Nanospace Engineering /
ナノ空間工学の学理構築に向けて
地球環境・社会環境が大きく変化する中で、我々の生産活動はエネルギーおよび資源に関して「持続可能性」という問題を突き付けられています。茂木グループでは、数ある課題の中でも資源循環に資する材料・技術開発を行っています。資源循環の大きな対象である「炭素」は我々の身の回りの中で様々に様相を変えて存在していますが、廃棄された炭素物質を再利用・再構築するという視点に立つと、炭素物質の認識・吸着・分離・分解・結合といった技術が必要です。我々はこれを達成するために、「ナノ空間」に着目しています。
ナノメートルサイズの空間は、同程度の大きさの分子に対する選択的な吸着・分離性能を示しサイズによる分子認識能を示すと共に、空間内部での閉じ込め効果や特異な触媒活性点の発現によって分解反応・結合反応を促進させます。目的に合わせて戦略的にナノ空間をデザイン・応用していくためには、ナノ空間の創出・機能の発現に関する基本的な理解と技術の確立が必要不可欠であり、ナノ空間の学理構築が必要です。
 我々は
・分子サイズのナノ空間を有する材料の創出とデザイン
・ナノ空間を利用した分子変換反応の開発
を研究グループの目標とし、日々研究を進めています。

Research topics
1. Designed synthesis of nanoporous materials via novel approach /
新たな合成戦略に基づく機能性ナノ空間材料の創製
ゼオライトや多孔性配位高分子(PCP)に代表される結晶性ナノ多孔質材料は、その特異な吸着・イオン交換・触媒能などから広く工業的に利用されている材料です。精緻に制御された結晶性骨格とそれに起因する機能を発現させるためには、骨格構造やその組成を狙って設計する必要があります。これまでにも、水熱条件下での核生成・結晶成長に関する速度論的過程と平衡論的過程を制御しようと、様々なアプローチが試みられてきました。しかしながら、主たるアプローチは有機分子の多様性を利用したものであり、新たな革新的手法が求められています。
我々は多孔性材料のデザイン合成に向け、新たな有機構造規定剤や規則的構造欠陥を利用した新たなアプローチに挑戦します。

2. Catalytic upgrading of small molecules /
触媒による低分子の高付加価値化

 現在、ほとんどの化学品は石油由来の資源から製造されています。様々な環境・資源問題に対応し、この石油資源に頼ったプロセスから脱却することが求められています。究極的な炭素資源である二酸化炭素の利用の他、バイオ発酵で得られる含酸素低分子などを石油に代わる資源として利用するために、触媒を用いた分子変換技術が必要とされています。これまでに取り組んできたメタン転換やメタノール転換以外にも、エチレン、エタノール、またはこれらの混合物などを更なる高付加価値化学品へと転換する技術に挑戦していきます。

3. Precise control of a single atom site in heterogeneous catalyst /
不均一系触媒における単原子触媒活性点の精密制御

不均一系触媒(固体触媒)は分離などのプロセスの優位性から均一系触媒に比べ大規模に利用されています。一方で、緻密な触媒活性点(反応点)の制御という点では均一系触媒に軍配が上がり、製薬等の精緻な合成プロセスに役立っています。固体触媒上に精密な活性点を創製する手法として、担体に単原子金属を担持させるアプローチがあります。これは理想的なモデル活性点として反応解析などに利用できますが、調製が困難であり、工業プロセスでの利用にも向いていません。
我々は、結晶性骨格を担体とし骨格構成原子を同型置換することによって得られる触媒反応点も、同様にモデル活性点とみなせることに着目しています。精緻な結晶性骨格を有する材料の合成と、そこで進行する触媒反応の解析に挑戦していきます。

Reseaches 2023~ / 卒論・修論題目
2024年度
– 大細孔ゼオライトの結晶化挙動およびそれを鋳型とした炭素材料合成 (2024卒論)
– (仮) 層間架橋型の金属触媒サイト創出 (2024卒論)
– (仮) 二価有機カチオンを用いたゼオライト合成 (2024卒論)
– (仮) C2含酸素化合物からの1,3-ブタジエン合成反応 (2024卒論)
– (仮) フッ化物法を用いた中性領域でのゼオライト合成 (2025卒論)
2023年度
– 多孔体に担持したRh触媒によるエチレンのヒドロホルミル化反応 (2023卒論)

– 層状シリケートの層間架橋によるゼオライト類縁物質の合成 (2023卒論)
– ケージ構造を有するゼオライトの合成と機能性炭素材料の内包 (2023卒論)

卒業研究紹介動画 (静岡大学 化学バイオ工学概論より)
※学内アクセスのみ
2024 ver. ,2023 ver.

Reseaches ~2022 / 過去の研究テーマ
– ゼオライト触媒を用いたオレフィン合成において骨格構造がプロピレン選択性に及ぼす影響 (M2)
(Effect of framework structure on the propylene selectivity in olefin production over zeolite catalysts)
– 4配位Tiを高濃度に骨格に含む多孔性シリカ材料の合成と触媒応用 (M2)
– アルカン転換反応を指向した骨格タンタルを有するゼオライトの合成 (M2)
– Study of Relationship between Al Distribution in ZSM-5 Zeolite Framework
and the Catalytic Performance in MTO Reaction by Transient Kinetic Method (M2)
– ZSM-5担持貴金属種上での触媒的メタン直接部分酸化反応による含酸素化合物の合成 (M2)
– 定常状態同位体過渡応答法を用いたZSM-5上でのMTO反応におけるプロピレン生成の解析 (M2)
(Steady-state Isotopic Transient Kinetic Analysis on Propylene Formation
over Methanol-to-Olefins Reaction Catalyzed by ZSM-5)
– 窒化によりメソポーラスシリカ上に生成する各アミン種の量的制御と塩基触媒反応での特性 (M2)

Reseach Gallery / 過去の研究テーマの紹介コンテンツ