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Research

グアニン四重鎖DNAとRNAに結合するタンパク質の探索

生命の設計図であるDNAや、DNAから転写されたRNAは、それぞれ右巻きの2本鎖や1本鎖構造だけでなく、さまざまな局所構造を形成する。そのような核酸の局所構造の1つに、グアニン塩基が豊富な配列が形成するグアニン四重鎖がある。グアニン四重鎖を形成する配列をもつDNAとRNAは、プロモーター領域、mRNAや非コードRNA、さらに細胞のガン化や寿命に関わる染色体末端構造であるテロメア領域にあることが知られている。さらに近年、グアニン四重鎖はガンだけでなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)に関わっていることが明らかになってきたが、疾患との関係や元々の細胞内の機能は不明な点が多い。

グアニン四重鎖DNAとRNAは、それぞれに結合するタンパク質によって制御され、機能していると考えられる。そこで、我々の研究室では、この核酸構造に結合するタンパク質を見出し、その詳細な核酸認識機構を研究している。その結果、EWSやTLS/FUSといったガンや神経変性疾患に関わるタンパク質がグアニン四重鎖に結合することが明らかとなり、特に各タンパク質中のアルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し配列からなる領域(RGG領域)によって、特異的に認識されていることがわかった。現在、EWSやTLS/FUSだけでなく、多くの核酸結合タンパク質に保存されている同様の領域の核酸認識機構や、それ以外のさまざまな局所構造結合タンパク質について研究している。

Identification of Ewing’s sarcoma protein as a G-quadruplex DNA- and RNA-binding protein. Takahama, K., Kino, K., Arai, S., Kurokawa, R., Oyoshi, T. FEBS. J. 2011, 278, 988-998.

Loop lengths of G-quadruplex structures affect the G-quadruplex DNA binding selectivity of the RGG motif in Ewing’s sarcoma. Takahama, K., Sugimoto, C., Arai, S., Kurokawa, R., Oyoshi, T. Biochemistry 2011, 50, 5369-5378.

G-quadruplex-proximity protein labeling based on peroxidase activity. Masuzawa, T., Sato, S., Niwa, T., Taguchi, H., Nakamura, H., Oyoshi, T. Chem. Commun. 2020, 56, 11641-11644.

 

グアニン四重鎖DNAとRNAの機能の解明

遺伝情報はDNAだけでなく、DNA以外の分子によっても伝達されることがわかってきた。このようにDNAの塩基配列は変化せずに、細胞の性質が変化してそれが継承されていくことをエピジェネティクスというが、真核細胞内のDNAが巻きついているタンパク質であるヒストンの修飾も、エピジェネティクスの要因の1つである。しかし、核酸の塩基配列によって形成される核酸の局所構造とヒストン修飾との関係はわかっていなかった。

グアニン四重鎖結合タンパク質であるTLS/FUSの機能を研究した結果、このタンパク質はテロメア領域のグアニン四重鎖DNAとRNAに結合して、ヒストンの修飾を促進することで、テロメア領域のヌクレオソーム構造を凝集させることがわかった。これは、グアニン四重鎖がグアニン四重鎖結合タンパク質を介してヒストンの修飾する最初の例である。現在、エピジェネティクスとゲノム構造の中に広く存在している核酸局所構造との関係性の解明を目指している。

Regulation of Telomere Length by G-Quadruplex Telomere DNA- and TERRA-Binding Protein TLS/FUS. Takahama, K., Takada, A., Tada, S., Shimizu, M., Sayama, K., Kurokawa, R., Oyoshi, T. Chem. Biol. 2013, 20, 341-350. 

 

RGG領域によるグアニン四重鎖認識機構の解明

アルギニンーグリシンーグリシンからなる領域(RGG領域)は、核酸結合タンパク質中に広く保存されているが、そのすべてがグアニン四重鎖結合性を示すわけではない。これまでの我々の研究によって、グアニン四重鎖結合性を示すには以下の条件が必要であることがわかった。

1)アルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し配列が2つ以上

2)アルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し配列の近傍にフェニルアラニンまたはチロシンなどの芳香族アミノ酸があると、結合性が強くなる

3)βターン構造の形成

これらの性質を有するRGG領域が単独で、または他の核酸結合領域と共にグアニン四重鎖を形成することがわかった。これらの知見は、まだ未知のグアニン四重鎖結合タンパク質の解明や、グアニン四重鎖に特異的に結合する分子の開発に有用である。

G-quadruplex Binding Ability of TLS/FUS Depends on the β-Spiral Structure of the RGG Domain. Yagi, R., Miyazaki, T., Oyoshi, T. Nucleic Acids Res. 2018, 46, 5894-5901.

Roles of the RGG domain and RNA recognition motif of Nucleolin in G‑quadruplex stabilization. Masuzawa, T. and Oyoshi, T. ACS Omega 2020, 5, 5202-5208.

 

グアニン四重鎖に結合する人工分子の開発

グアニン四重鎖はガンだけでなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)などの神経変性疾患に関わる核酸も形成することから、グアニン四重鎖がこれらの疾患の薬剤の標的として注目されている。そのため、このグアニン四重鎖を標的とした薬剤の開発が世界中で行われている。しかしその選択性の面で問題もあったり、より高機能性分子の開発が求められている。我々の研究室では、これまでに明らかにしたグアニン四重鎖結合タンパク質をもとに、新規人工グアニン四重鎖タンパク質の開発に成功している。これらの分子は、グアニン四重鎖DNAとRNAを見分けることができる。さらに、これらの分子を用いることで、テロメアにおける、グアニン四重鎖 DNAとRNAの異なるヒストン修飾能を明らかにしている。現在、この分子を利用して、細胞の機能を制御できる、より多機能な分子の開発をすすめている。さらに、より選択性の高い新たなコンセプトの人工分子の開発にも取り組んでいる。

Specific binding of modified RGG domain in TLS/FUS to G-quadruplex RNA: Tyrosines in RGG domain recognize 2’-OH of the riboses of loops in G-quadruplex. Takahama, K., Oyoshi, T. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 18016-18019.

G-quadruplex DNA- and RNA-specific-binding proteins engineered from the RGG domain of TLS/FUS. Takahama, K., Miyawaki, A., Shitara, T., Mitsuya, K., Morikawa, M., Hagihara, M., Kino, K., Yamamoto, A., Oyoshi, T. ACS Chem. Biol. 2015, 10, 2564-2569.