駿河湾環境およびプランクトン量の定期調査
サクラエビの餌となる植物プランクトンの存在量および種類の調査、駿河湾海水中の栄養塩類の調査、光や水温等の環境調査を定期的に行っています。
由比漁業協同組合と連携し、プランクトンネット(北太平洋標準ネットNORPAC)を用いて深度50mから表層までの海水約8トン(80,000L)をろ過しプランクトンを採集します。さらにニスキンボトルを用いて深度50m、20m、5mの海水を採取し、実験室で様々な成分分析を行います。光・温度センサーにより測定した深海の環境条件とあわせ、サクラエビが生息している環境条件の評価を行っています。
左:プランクトンネットによる採取、 右:ニスキンボトルによる採水
サクラエビ幼生の人工孵化実験
サクラエビの資源量回復に向けた取り組みの一つとして、サクラエビの人工飼育技術の確立を目指しています。
サクラエビは幼生時の致死率が高く、これまで長期の人工飼育は難しいものでした。
本プロジェクトでは幼生時の餌と飼育環境を検討し、稚エビまで成長できる条件の確立を目指します。幼生の時期を培養し育てる技術を確立することで、サクラエビの資源再生に大きな貢献ができるほか、将来的にサクラエビの種の保存も可能になることが期待されます。
上:アタマグロ、下:通常のメス
サクラエビの卵は青黒く、卵巣内で卵が成熟すると胸部が青黒く染まるため「アタマグロ」と呼ばれています。
サクラエビの群集遺伝学的解析
サクラエビは幼生の時期は海流に乗って駿河湾内で分散すると言われています。成長したサクラエビは通常は集団(パッチ)を形成していることは漁船のソナーで確認がされていますが、どのように駿河湾内で移動しているのか、現在まで全く分かっていません。
水揚げされたサクラエビの一部を由比漁業組合から譲り受け、体長、体重、性別、卵の有無を記録して統計解析を行い、季節ごとの成長、パッチごとの個体組成の差異の分析を行っています。さらにそれぞれの群集のミトコンドリアゲノムを解析し、群集ごとの駿河湾内での移動の追跡や前年の個体群との親子関係を明らかにすることで、これまで仮定することしかできなかったサクラエビの致死率も知ることができ、より正確な資源量の推定が可能になることが期待されます。
サクラエビの雌雄判別方法のひとつであるpetasmaの観察