研究室選びをしている学生の方へ


これまでの学校生活を振り返ってみれば、「答えの分かっている問題を解けることができるようになる」訓練をしてきたことに気づきます。それができた程度に応じて、自分や学校に偏差値やGPAという数字が貼り付けられ、他の人や学校との比較をされてきました。最終年次はこれまでとは全く異なった時間を過ごすことになります。
 卒業研究では、誰も答えを知らないような問題を試行錯誤していって、自分で何らかの答えを見つけていくという過程を経験していきます。ここには他との比較としての数字は出てきません。比較対象がないからです。できることは、今の自分を自分の目指す理想像にどれだけ近づけられたか、それを自分で認識することだけです。最初は知らなかった答えを見つけたということとそこまでの行き方を経験したことによって、次にどんな新しい問題が目の前に現れても自分には何とかやっていけるはずだという自信を、卒業論文を提出するときには持つことができているはずです。その後「競争」社会の一員として参加しても、他が決めた基準でなされた評価はそれまでよりずっと気にならなくなっています。むしろ、自分のできることを手を抜かずにやり通したか、が基準になるでしょう。
   ところで、ハードウエア製造メーカーの技術職・研究職は大きく製品技術・製造・設計に分かれています。製品技術は、開発段階にある製品の評価解析をし、その結果を設計や製造にフィードバックを行います。また、製品が量産にある場合は信頼性を保証し製造工程を管理します。製造は信頼性と製造コストを確保する製造工程を構築します。設計はその製造工程で仕様を満たす製品のデザインを行います。
 IC design lab では、集積回路の設計に関わる研究をおこなっています。回路設計の研究は図1に示されています。この「回路」には回路Aと回路Bという形式が知られているけれどこの条件に最適なのは回路Bの方だとか、回路Bを回路B’のように工夫すればもっと低電圧で動作できるとか、回路B’の回路パラメータはこのような理屈でこう決めるべきだとか、そういうことをやっています。「入出力条件が決まればこのように回路を設計すればいいんですよ」という指針を作っていって、その回路を設計しようとする人がこれを見ればいい設計ができてしまうような、そういう設計理論を築いていくのが研究室の目的です。


 自分は将来は必ずしも集積回路の設計の仕事をするとは考えていないけれど、何かハードウエアの設計の仕事をやってみたいとかそういうのに興味があるという学生は歓迎です。アナログ集積回路の大家の一人であるUCLAのProf. Razaviは著書の中で「アナログ設計者は…1) エンジニアとしての才覚と、…2) 数学者としての資質と、…3) 芸術家としての才能を身につけなければならない」」と述べています。図形やパズルが好きなら回路設計の中にそれを感じることができます(私はそれを感じます)。あなたの将来取り組む製品がICではなく別の対象であったとしても、製品設計は図1と同様な図2となります。従って、将来従事する仕事の対象が変わっても、IC design labで一年間(学部で就職する方)~六年間(四年生で研究室に所属してそのまま博士を取る方)取り組んで身につけた研究方法を適用することができるはずです。

〇「数学は式を見るのもイヤだ」という方は不向き。ただし「この一年でそれを克服してやろう」と気合いの入った方歓迎。
〇学部を出て就職することを考えている方には、電子回路設計研究のやり方の基礎を身につけることを目標にします。
〇大学院進学希望の方歓迎。
〇大学院進学を考えている方には、自分が考案した回路・回路設計方法・回路解析を学会で発表することと聴いている方に理解してもらうような発表をすることを目標にします。
    自分には試行錯誤しているほとんどの時間をそれに没頭することができると思ったら、あなたはこの研究室でやっていくことができると考えて間違いありません。自分だけの研究テーマという道なき道を私といっしょに歩んでみましょう。ほんのたまに訪れる、答えが見えたときのつかの間の喜びが報酬です。
 研究室見学はいつでも歓迎です。見学といっても見て楽しいものはありません。今研究室にいるあなたの先輩から取り組んでいる回路の話や研究室での過ごし方の話を聴くことができるという程度なので、聴学というべきかもしれません。私にメールで「いつ見学したい」を送って下さい。toru.tanzawa at-mark shizuoka.ac.jp

〇丹沢研究室を卒業した先輩たちの主な就職先
スズキ
フタバ
ソニーセミコンダクタソリューションズ
ローム
マキタ
JVCケンウッド
プライムアースEVエナジー
アンリツ
竹内製作所
住友電装
日本セラミック
FUJI
浜松ホトニクス

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