研究紹介

M2

影林
「 PLD法によるSi(001)基板上への(001)配向7%YO1.5-93%HfO2薄膜の作製 」

フラッシュメモリやEERROMは高電圧をかけてONとOFを切り替えるのに対し、強誘電体メモリは、強誘電体の分極反転を用いてONとOFFを切り替えます。この仕組みにより、強誘電体メモリは低消費電力、高書き換え回数、高書き換え速度であるという特徴があります。しかし、現在用いられている強誘電体材料は、膜厚が薄くなると、残留分極の値も小さくなるため、微細化が困難です。HfO2は膜厚が薄くても安定的に残留分極の値を示すため、強誘電体メモリ材料として期待されています。HfO2は直方晶で強誘電性を示し、この直方晶は準安定相であり、安定化のために様々なドーパントが試されており、その中で最大の残留分極の値を示すYをドープします。現在作製されているHfO2薄膜は(111)配向が多く(001)配向はあまりありません。さらにSi基板上に作製された報告も少ないです。そのため私は、Si(001)基板上への(001)配向7%YO1.5-93%HfO2薄膜の作製を目標に、PLD法を用いて実験を行っています。

 

高見
「Naイオン二次電池用の固体電解質の探索」

Liイオン二次電池は携帯端末やモバイルバッテリー等で幅広く利用されているが、Liの資源量は少なく、かつ偏在しているため資源確保にリスクがある。このため、電力用などの定置型で大容量の二次電池にはさまざまな方法が検討されている。Naは資源が豊富で入手が容易なためNaイオン二次電池は有力な候補である。Naイオン二次電池もLiイオン二次電池と同様に安全性の高い固体電解質が望まれている。Liイオンの固体電解質としてLiNbO3-Co4Nb2O9の固溶体が室温で高いLiイオン伝導率を示すことが明らかにされている。Naイオンの固体電解質としてNaNbO3-Co4Nb2O9の固溶体をはじめ、種々の固体電解質を作成し、Naイオン伝導率が高く実用性の高い材料の探索をしている。

 

柴田
「スマートウィンドウ応用を目指したNdNiO₃薄膜の作製」

本研究では、スマートウィンドウへの応用を目指し、ペロブスカイト構造酸化物であるNdNiO₃(NNO)薄膜の作製と評価を行っています。スマートウィンドウは周囲の温度に応じて赤外線透過量を自動調節する機能を持ち、冷暖房負荷の低減による省エネ効果が期待されています。NNOは急峻な金属-絶縁体転移を示す材料ですが、転移温度が室温より低いため、室温付近への制御が実用化に向けた重要な課題です。本研究ではダイナミックオーロラPLD法を用い、Si(001)基板上にYSZ・CeO₂バッファー層を介したNNO薄膜の成膜条件を確立しました。またSmの固溶比を変えたNd₁₋ₓSmₓNiO₃薄膜を作製し、XRDによる結晶構造解析とXRFによる組成評価を行いました。電気抵抗測定では金属-絶縁体転移は確認されず、格子定数の解析から酸素欠損が原因である可能性を見出しました。今後はポストアニール処理による酸素欠損の低減に加え、基板との格子不整合を利用した応力制御によって転移温度を室温付近へ制御する手法についても検討していきます。

 


「 かご型結晶12CaO・7Al2O3へのカリウムドーピングと固溶領域の調査 」

新規酸化物透明電極や高効率アンモニア合成触媒としての応用が期待されている12CaO・7Al2O3(C12A7)は、その単位胞中に正に帯電した12個のかごと、かご構造の正電荷を補償するための2つの自由酸素イオンがかご内に緩く包接されている。この包接種は様々な陰イオン種(e、H等)に置き換えが可能で、イオン種の置換により様々な特性が発現する。現在、C12A7のかご骨格は正の電荷を持つが、骨格の電荷をCa2+サイトにKで置換することにより負にすることができれば、アニオンではなくLi+やNa+、K+といったアルカリ金属を包接することができると考えられ、安価でかつ高イオン伝導率を示す新たなイオン伝導性物質としての応用が期待される。しかし、安定したK固溶を行うことが難しいという課題がある。そこで本研究では原料の添加方法や焼成中の雰囲気を制御することで安定したK固溶C12A7の合成を目標としている。

 

町野
「新規ガーネット型犠牲層を用いた固体電解質LLZTO単結晶自立膜の作製」

高出力・長寿命の次世代型電池である酸化物全固体Liイオン電池の固体電解質には高いイオン伝導率(10-4~10-3 S/cm)を持つLi6.5La3Zr1.5Ta0.5O12(LLZTO)が有望視されています。基礎研究および薄膜電池への応用の観点から大面積を有する単結晶自立膜は重要です。現在、自立型固体電解質薄膜の多くはテープキャスティング法により作製されています。しかし、この方法では膜厚を薄くすることが困難であり、エネルギー密度の向上が課題となっています。そこで、単結晶基板上に犠牲層を導入しLLZTOを成膜した後に犠牲層を除去することでLLZTOを自立型エピタキシャル薄膜として得るという手順を考えています。犠牲層の研究自体は多く進められていますが、LLZTOと同じガーネット構造を有する犠牲層の報告例は一件もありません。そこで私の研究は、ガーネット構造を有する犠牲層材料の探索およびLLZTO単結晶自立膜の作製に取り組んでいます。

 

丸山
「 C12A7の高温水蒸気吸収現象に関する研究 」

12CaO・7Al₂O₃はカルシウムアルミネート系化合物の一つで、C12A7と略されます。C12A7は12個のかごを有するかご形構造をしており、正に帯電した骨格の中に、それを補償する自由酸素イオンが包接されています。このような構造により、内部のイオンが入れ替わることで多様な特性を示すことが知られています。このC12A7を大気中でTG測定すると、2段階の重量変化が生じることが分かっています。そのうち一つは原因が明らかになっていますが、もう一つについては、水蒸気の吸収・脱離が関係していると考えられているものの、詳しい仕組みはまだ分かっていません。そこで本研究では、X線回折などの構造解析を用いて、水蒸気の吸収・脱離に伴う結晶構造の変化に着目し、この重量変化の原因を明らかにすることを目的としています。これにより、C12A7の新たな機能の理解や応用につながることが期待されます。

 

M1

井野口
「蛍石構造酸化物バッファー層上に作製したペロブスカイト構造酸化物薄膜の配向性マップの作成と境界線の確定」

現在使用されているほとんどのデバイスはSi(001)基板上に作製されている。しかしSi(001)基板上にペロブスカイト構造酸化物薄膜を直接エピタキシャル成長することができないため蛍石構造酸化物バッファー層を用いることによりペロブスカイト構造酸化物薄膜を作製することができる。ペロブスカイト構造酸化物薄膜には、強誘電性、圧電性、導電性、イオン伝導性など多くの優れた機能を有しており、その機能を最大限に発現するためには、配向制御が重要となる。本研究の目的は、過去の本研究室から得られた配向性マップを元にして配向の境界線付近と考えられる組成でPLD法を用いて薄膜を作製し、その後薄膜の配向をX線回折で解析することにとって配向性マップを埋めていき配向の境界線を確定することである。また配向の境界線がどのような要因で変化するかを明らかにしたいと考えている。

 

兼利
「スマートウィンドウ応用を目指したNdNiO₃薄膜の作製」

本研究では、スマートウィンドウへの応用を目指し、ペロブスカイト構造酸化物であるNdNiO₃(NNO)薄膜の作製と評価を行っています。スマートウィンドウは周囲の温度に応じて赤外線透過量を自動調節する機能を持ち、冷暖房負荷の低減による省エネ効果が期待されています。NNOは急峻な金属-絶縁体転移を示す材料ですが、転移温度が室温より低いため、室温付近への制御が実用化に向けた重要な課題です。本研究ではダイナミックオーロラPLD法を用い、Si(001)基板上にYSZ・CeO₂バッファー層を介したNNO薄膜の成膜条件を確立しました。またSmの固溶比を変えたNd₁₋ₓSmₓNiO₃薄膜を作製し、XRDによる結晶構造解析とXRFによる組成評価を行いました。電気抵抗測定では金属-絶縁体転移は確認されず、格子定数の解析から酸素欠損が原因である可能性を見出しました。今後はポストアニール処理による酸素欠損の低減に加え、基板との格子不整合を利用した応力制御によって転移温度を室温付近へ制御する手法についても検討していきます。

 

川合
「Liイオン固体電解質LLZTOに格子整合するガーネット型犠牲層材料の開発」

 高出力・長寿命の次世代型電池である酸化物全固体Liイオン電池の実用化のために、高いイオン伝導率(10-4~10-3 S/cm)を持つガーネット型固体電解質Li6.5La3Zr1.5Ta0.5O12 (LLZTO)が注目されている。電池の出力向上と電池構造プロセス上、固体電解質自立膜の作製が望まれている。本研究室では、LiOHフラックスLPE法によりGd3Ga5O12(GGG)基板上にLLZTOをエピタキシャル成長させることに成功している。さらに自立膜のための犠牲層としてLLZTOと比較的格子整合性の良いガーネット相を有するCa3Sn2TiFe2O12(CSTFO)(12.677 Å)を採用し、PLD法を用いてCSTFOのエピタキシャル薄膜の作製しその上にLLZTOをエピタキシャル成長させることに成功している。しかし、CSTFOとLLZTOの格子ミスマッチが1.93%とやや大きくLLZTOの結晶性に悪影響を与えている可能性が考えられる。そこで本研究ではLLZTO(12.929Å)と完全格子整合する新犠牲層材料の開発を行う。

 

齊藤 
「プラズマ支援PLD法を用いた酸窒化物薄膜の作製」

半導体分野において、バンドギャップと格子定数を固溶体組成によって制御することで様々な応用を実現させています。しかしドープ制御のために、稀少元素や毒性の高い元素を使用しており代替が望まれています。本研究室では岩塩型構造を有する酸窒化物であるMgO:TiN薄膜に着目しており、これまでの研究から、MgO:TiN薄膜において、全率固溶すること、TiN組成によってバンドギャップサイズが変化することが明らかになっています。一方で、TiN組成の増加に伴って抵抗値が指数関数的に低下しており、キャリア濃度が大きく増加していることが示唆されました。このことから、成膜過程で窒素欠損が導入されている可能性が高く、バンドギャップとキャリア濃度を独立に制御するには、窒素欠損量を制御する必要があります。そこで本研究では反応性の高い窒素プラズマを供給可能であるプラズマ支援PLD(PA-PLD)法を用いてMgO:TiN薄膜の窒素欠損の低減を目標としています。

 


「ニッケル酸化物系常圧超伝導体の探索」

超伝導体は、超伝導転移温度Tc以下において電気抵抗ゼロや完全反磁性といった特徴を持つ。超電導リニアや医療用MRIなど様々な分野に応用されているが、冷却コスト削減の観点から高いTcを有する新物質の探索が進められている。近年、Cu酸化物系やFeヒ素系に続く新たな系としてNi酸化物系が注目されている。ただし、現状発見されているのは超高圧下あるいは薄膜化でのみ超伝導が発現するもののみである。そこで常圧超伝導を発現するNi酸化物系の探索を目的とした。既報のNi酸化物で超伝導転移を示すのは単位格子にNiO2面を2枚有する。La3Ni2O7と、Niの価数をCu2+と同様の3d9配置となるNi+を有する。(Ln,Sr)NiO2 (Ln=La, Pr, Nd, Sm)である。これらの方針を参考として本研究では、①Cu酸化物系超伝導体で単位格子に2枚のCuO2面を有する。Bi2Sr2CaCu2O8+δ (Bi2212)のCuサイトをNiで全置換した化合物と、②Cu酸化物系超伝導体である(La,Ba)2CuO4 (214)のCuサイトを3d電子数が9に近い値となるようにNi2+ (3d8)とZn2+ (3d10)で共置換した化合物の合成を試み,結晶構造および磁気特性を評価した。

 

土屋
「かご型結晶12CaO・7Al2O3の水蒸気吸収現象に伴うプロトン伝導性の評価」

私の研究は12CaO・Al2O3(C12A7)の水蒸気吸収によるプロトン伝導性の評価をすることを目的としています。C12A7はかご型の構造を有しており、かご内に包接されているイオンを置き換えることでさまざまな機能が発現する材料です。大気中で合成したC12A7に対して水蒸気を吸収させることによる重量変化が報告されており、かご内にはOHとH2Oが包接されることが示唆されています。さらに、H+がキャリアとなり、かご内を移動することでプロトン伝導を示すことが示唆されています。一方で、過剰な量の水蒸気を吸収させることで、かご内に包接する反応だけでなく、C3AH6の生成が確認されました。この点も踏まえて私の研究では、インピーダンス測定から水蒸気の吸収量とプロトン伝導性の関係を評価することにより、C12A7の新しい応用方法や実用上の問題を検討する。

 


「抵抗変化型メモリ薄膜の抵抗変化挙動に及ぼす熱的影響」

抵抗変化型メモリ“RRAM”は、金属/絶縁体 /金属(MIM)構造を基本とし、絶縁体層内に形成される導電性フィラメントの生成・消滅による抵抗状態の変化を利用して情報を記憶する不揮発性メモリである。単純な構造、高速スイッチング特性、低消費電力動作、高いスケーラビリティ、および三次元集積への高い適合性といった利点を有することから、次世代メモリとして有望視されている。一方で、RRAMの動作を支配する導電性フィラメントの形成・破壊機構については、未だ統一的な理解が確立されていない。そのため、RRAMのフィラメントを断面加工したうえで断面へのAFM の導電性マッピングによりフィラメントを観察することができれば、フィラメント形成・破壊機構に関する理解につながると期待される。しかし試料の断面加工に用いるイオンミリングの過程で試料に熱的影響が及ぼされる可能性がある。このことから本研究では、RRAMのフィラメント形成後に試料を再加熱し、熱によるフィラメントの消失が起こる温度を調査し、フィラメントの耐熱性について評価した。

廣瀬
「 オンサイト制御加水分解法によるアナターゼTiO2薄膜の作製」

アナターゼ型TiO2は光触媒、太陽電池などの分野で広く使われている。しかし、アナターゼ型TiO2は準安定相で800 ℃以上に温度が上がるとルチル型TiO2に相転移する。そのため、単結晶育成は困難で市販のアナターゼ型TiO2の単結晶は天然由来のもので、着色や寸法に制限があり、不純物が含まれている。そこで私は基板上で加水分解させる方法である、オンサイト制御加水分解法を用いてエピタキシャル成長した平滑なアナターゼ型TiO2厚膜を作製することができるのならば、成膜後に基板を除去することによって、単結晶ライクのアナターゼ型TiO2が得られるのではないかと考えた。

 

二神
「(La,Sr)CoO3薄膜の配向制御に及ぼすペロブスカイト型ナノシートのシード効果」

ペロブスカイト型層状化合物であるKCa2Nb3O10 (KCNO) の層間を剥離することによって得られるCa2Nb3O10(CNO) ナノシートは、厚みが1.5 nm前後、横方向に数μmの広がりを持つ異方性の高い二次元単結晶であり、多くのペロブスカイト型酸化物と格子整合する。CNOナノシートをシード層としてペロブスカイト型酸化物薄膜をローカルエピタキシャル成長させられれば、ガラスやプラスチックなどの安価な基板上でも配向を制御した薄膜を成長させることができ、安価で高性能な強誘電体薄膜を作製可能になると期待される。ガラス基板上にCNOナノシートを製膜し、ナノシート上に (La,Sr)CoO3(LSCO)電極薄膜をPLD法によって成膜し、その上にPZT強誘電体薄膜を成膜した。強誘電体薄膜の物性には薄膜や下部電極の微構造が影響を与えることが知られているため、本研究では特にLSCO薄膜やPZT薄膜の微構造に着目し、CNOナノシートのシード効果について調査を行った。また今後はLSCO電極薄膜の結晶成長様式について詳しく調査する予定です。