ブログリレー(海老原孝雄)

ブログリレー

物理学科 海老原孝雄

ご入学おめでとうございます。入学できてとても嬉しいという人と、少し残念という感情を秘めながら入学した人と、さまざまだろうと思います。しかし、自分自身の思ったのとは異なることや、思った通りにならないことも多いので、入学を機会に少し落ち着いて、学業を中心に様々な人との出会い等を通じ、色々なことを見つけてみてはどうでしょうか。

例年ですと、このような書き出しで新入生にメッセージを送ってきましたが、今年は予期せぬ事態で遠隔授業になり、登校もままならない事態になってしまいました。上級学年の皆さんも、それぞれの学年で学業の他に部活動や就職活動あるいは新入生を受け入れる準備などに力を尽くしてきたのに、目の前で急激に状況が変化してしまい、戸惑いを含めさまざまな感情が湧いてきたと思います。私としても、リモート授業の準備を急遽行うため、機材の調達や使い方の習得から始まって、期日までに相応の内容を届けるために試行錯誤しました。このような状況下で学問する意義は何なのか、リモート授業と対面授業のそれぞれの長短所、人が集まって何かを行うことの良い点は何かなど、内容も種類も人それぞれだとは思うものの、学生さん達と離れていても同じタイミングで思い悩むことで、見えてくるものもあるかもしれないと思っています。

私は固体物理学の実験家なので、ニュートン力学について常に考察・応用しているわけではありませんが、基礎中の基礎として体に染み込んでいます。今回の疫病の流行とともに、改めて子どもの頃に読んだニュートンの伝記を思い出しました。1600年代中頃の人なので、例えば「ニュートンのリンゴの木」のような真偽不明の逸話もあるのですが、疫病大流行中に故郷へ避難している中で、さまざまな成果を上げたことは確かなようです。教員の私が言うのも何ですが、もともと大学の授業は一種のペースメーカーで、教員は学生さんのアドバイザーであり、学業は基本的に自分で深めると言う点で、ニュートンの話はキャンパス外で学業に励む上での参考になるかと思います。

とはいえ、知性の鍛錬を中心として人と集う場が大学だとすれば、大学で行うことの核心部分はやはり、実際に会って議論や実験・実習等をすることだろうと思っています。私のような者でも何かを伝えようとジタバタすることで、息遣いや熱気等の電子的には伝わらない何かがあるだろうと。(私のことなどあまり見たくないかもしれませんが、、、)一瞬にして病気を治せる薬も、一瞬にして状況を変えられる魔法もこの世には存在しないのは身も蓋もない事実ですが、防疫上の対策は前提として、できる限り早く皆さんと同じ場にたち、少しだけ先行した人間として君達とともに学業に励んでいきたいと思います。キャンパスで会える日を心待ちにしています。