【第128回】日本人の心

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投稿者: 西条 光洋
(昭和42年 教育学部小学校教育課程卒/教育学部同窓会 会長)


今も、名残りはあると思いますが、諸外国の人たちの日本人観は、概ね「親切」、「正直」、「勤勉」という言葉で表わされていたような気がします。
「甘いね」とお叱りを受けそうですが、海外を旅する機会が多くなりますと、この言葉は現実味を帯びてくるから不思議です。誤解のないようにして頂きたいが、世界にも「親切」、「正直」、「勤勉」が当てはまる人たちが沢山存在することは承知しています。

一方、昨今のニュースには、訪日外国人が不幸な事故に遭う報道もあり、日本人に対する信頼度が、減退しているのではないかと危惧しています。理由はいろいろあろうかと思いますが、多様な価値観の尊重と、氾濫する情報の識別能力の衰えが、日本人の良さを喪失させているようにも思います。
日々変化する時代の中で、環境や人の心が昔のままであるはずがないと思いながらも、一抹の寂しさを禁じえません。

翻って、世界を見渡しますと、崇高な人類愛や厳格な倫理観が、自然に培われている国が沢山あります。そこには、人々が国の成り立ちに関わる民族の歴史や宗教を、連綿と受け継いでいる様子が垣間見えます。こうした国の人たちは、海外に雄飛し、不自由な生活を強いられる中でも、母国で培われ信念を失うことなく、たくましく生きています。こうした姿には、尊敬の念さえ覚えます。

日本に帰化した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は「東の国から・心」という著書の中で、自国(日本)の道徳力を創造し保存した二つの要因について、「一つは神道であり、もう一つは悲しみに打ち勝ち、苦しみを忍び、執着するものを滅却し、憎悪するものの暴虐を、永遠の法則として甘受するように国民を鍛え上げた、かの仏教である。」と述べています。
西洋の物質文明と個人主義に、疑念を抱いていたという、八雲らしい世界観です。