【第208回】18年の軌跡と、これからの18年

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投稿者:頼 紘一郎(平成21年 理学研究科 生物科学専攻 修了)


理学部共通A棟、通称「不夜城」。その6階にある研究室の窓際が自席だった。そこから見下ろす静大キャンパスと、遠くに広がる駿河湾の風景は、今も鮮明に脳裏に焼き付いている。

私が生物学科を志向したのは、幼いころから植物に興味があったからだ。動物実験など絶対にやりたくないとさえ思っていた。しかし、研究室紹介での直感に導かれ、選択したのはマウスの肝発生研究。毎日実験用のマウスの世話をする全く想像しなかった日々が、結果として私の「再生医療」への扉を開き、キャリアの礎となった。今振り返れば、あの時の選択こそが人生の分岐点だった。

院修了後、医療機器メーカーに就職して18年目を迎える。歩んできた道のりは濃厚そのものだった。重症心不全向け再生医療等製品の研究開発に従事し、2015年に世界初となる製品の承認を勝ち取った。しかし、コロナ禍が世界を一変させる。医療を止めてはならない使命感のもと、コロナの陰性証明書を手に、感染への不安と戦いながら医療機関に医療を届ける緊張感は忘れられない。2026年現在、深く関わったその製品は残念ながら終売となったが、研究開発から治験、上市、そしてコロナ禍までを駆け抜けた経験は財産だ。

そして今年、私は42歳。定年まで残り18年、企業人生のちょうど折り返し地点である。この節目に、私はグローバルにフォーカスした新たな職に就くこととなった。これまでのキャリアとは異なる職務は、入社1年目のように新鮮で日々身が引き締まる思いだ。

果たしてこの選択が正解か今の私にはまだ分からない。しかし、18年後に定年を迎える私がもし、このリレーエッセイに再びペンを執るなら、きっとこう綴るはずだ。「あの日、想定と異なる研究室を選んで正解だったように、42歳での挑戦もまた、正解だった」と。

私の背中を押し続けてくれているのは、あの静大時代の『未知への選択』と、その結果得られた貴重な経験ができたという『成功体験』なのだろう。