【第158回】龍爪山について

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投稿者:浅野 安人(昭和47年 理学部物理学科卒)

龍爪山は、静岡市葵区と清水区にまたがって聳える秀麗な山である。葵区の大岩方面から見ると山の形は1つの峰に見えるが、清水区の草薙方面から眺めると山の形は2つの峰からなり、左側の少し尖った三角形に見える山頂の山を文殊岳(1041メートル)、右側奥の丸みを帯びた山頂の山を薬師岳(1051メートル)と呼んでいる。この二峰を総称して、龍爪山と呼ぶ。龍爪山を中心に、北側に真富士山(1343メートル)、青笹山(1543メートル)、十枚山(1725メートル)、安倍峠をへて南アルプスの高山へと続き、南側へは東海自然歩道で賎機山に至る麓山の山並みが続いている。三角形がところどころ飛び出たなだらかな山並み、これが、静岡、清水平野から望む、印象的な天と地を分けるスカイラインとなっている。

龍爪山は、地学的に見ると、糸魚川、静岡構造線が通っている縁に位置し、海底火山の隆起した火山の山である。この山筋が北に伸び、安倍奥の山々に連なっている。稜線の東と西で山梨県との県境をなす山並みでもある。龍爪山は、さしずめ南アルプスの支脈が南下してきて、その1000メートル級のブナ林地帯回廊の南端の行き止まりといった趣を呈している。逆に、このブナ林地帯回廊が、安倍奥や甲斐の奥山に入って行く入り口であったといえよう。

しかし、龍爪山は歴史の中に、なかなか山の名前を表してこない山である。古代、中世を代表する駿河の山としては、和歌で「しづはたやま」、歌枕としての「倭文幡山」である。倭文幡山は時雨の似合う名所として古くから良く知られ、山頂の眺めに、時雨が集約されて、山名由来の起源になったということである。

夏になると山頂には夏雲が発生して落雷がしばしば起こり、龍が山頂に降りてくるように、また岩や樹木に爪痕を残すように感じられ龍爪の名がつけられるようになったと『庵原郡誌』に記載されている。

また、龍爪山にはめったに雪は降らないが、雪が降ると春が来ると古くから言い伝えられている。