投稿者:前田 節子(平成14年 農学部人間環境科学科卒業)
静岡大学農学部3年次編入学の許可を頂いた時、「農学をしっかり学ぶことができる!」という嬉しさでいっぱいだったことを思い出します。42歳の春、無謀にも新たな挑戦がスタートしました。学部卒業で終わるはずが、修士課程を経て岐阜連大博士課程まで進みました。学位取得後、協力研究員の期間も含めると、約10年間農学部のお世話になっていたことになります。ご指導いただいた諸先生、研究室をはじめとする学生の皆さんには感謝の言葉もありません。子育てと家業がある中の学びでしたが、「好きこそものの上手なれ」の通り、辛いと思ったことはあまり記憶にありません。人生の方向が大きく変わりました。
これも、ひとえに周りの方の支えがあったからでしょう。今さらながら感謝です。
現在は、日本平の麓にある静岡英和学院大学短期大学部食物学科で食品学や食品加工学を中心とした分野で教員をしています。カリキュラムを見ると、「食」の周辺領域にある「医」の分野との連携は、以前から推進されてきたものの、「農」については、栄養士養成に必須とされてこなかった事実に、赴任して間もなく気付きました。つまり、作物を栽培して収穫し、それに調理、加工を施し消費者が摂取するという、いわゆる「川上から川下まで」という食の流れがあるにも関わらず、川上の領域の学びが栄養士養成において十分になされていないのは、大きな問題であると考えたのです。
そのような折、平成24年、静岡大学農学部地域フィールド科学教育研究センター(農場)が、教育関係共同利用拠点として文部科学省から認定を受けました。それを契機に、他大学のフィールド教育を農場で実施することが可能になりました。平成25年度には、静大農学部と英和学院大学短期大学部の間で単位互換制度の協定を締結するに至りました。現在、柑橘、イネ、チャおよびトマトなどの作物や園芸作物の栽培から収穫、加工までの一連の工程を、英和生も農場で学ばせていただいています。共同利用拠点での学びを積極的にカリキュラムに加えたことにより、「農と食の連携」が、学生にも浸透してきました。最近では、英和の良いところに、「農」を学ぶ教育プログラムがあることを学生自らが挙げるようになりました。また、現場に足を運び、自分の目で見て感じ考えたこと、これが何よりも貴重であると学生自身が述べ、生産者へ思いを馳せる場面も多くなりました。
一方、英和で開講している食品加工学特別実習を、年間約50名の農学部の学生が履修してくれています。このように、お互いの得意分野を生かした新しい形の学びが深まりつつあります。
フィールド教育は、新たな教育ステージへ展開する可能性を含んでいます。今後、共同利用拠点(農場)を軸とした異分野間での連携がさらに深まることを期待しています。