【私の卒業研究】Kさん「西浦田楽の複合資料に対する生成AIを用いた検索プロンプトの設計と評価」

この卒業研究の内容を紹介してください。

卒業研究では、静岡県浜松市天竜区水窪町に伝わる民俗芸能である西浦の田楽に関する資料を対象に、生成AIを用いた資料内情報検索の方法について研究しました。

西浦田楽は国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統芸能で、研究室ではインタビュー記録や学習会の記録、映像資料、文献など、さまざまな資料を多数収集しています。ただ、これらの資料は量がとても多く、必要な情報を探すには一つ一つ確認する必要があり、効率よく情報を見つけることが難しいという課題があります。

そこで、生成AIを用いて資料の中から必要な情報を検索する方法に注目しました。特に、生成AIが資料内の情報を正しく抽出できるようにするための「プロンプト」というAIへの指示文を設計し、その効果を検証しました。

実験では、ChatGPTやNotebookLMという生成AIを用いて資料検索を行い、「検索もれ」「誤検索」「ハルシネーション」といった誤りの発生傾向を分析しました。その結果、AIへの指示をより具体的にすることで、検索の正確さや結果の安定性が高まり、誤った情報の生成を減らせる可能性があることが分かりました。


この卒業研究に取り組もうと考えた動機はなんですか。

研究のきっかけは、研究室で扱っている西浦田楽の資料の量の多さでした。研究室には、音声や映像、文献など多くの資料が蓄積されています。しかし、これらのたくさんの資料の中から必要な情報を探す作業は時間がかかり、研究者にとって大きな負担になると感じました。

 

そこで、こうした作業を支援できる方法として生成AIに注目しました。生成AIは、言葉の表記ゆれや分散した情報の検索などに対応できる可能性があります。一方で、必要な情報を見つけられない「検索もれ」、関係のない情報を抽出してしまう「誤検索」、資料に存在しない情報を生成してしまう「ハルシネーション」といった問題もあります。

そこで、生成AIを資料の検索に活用するためには、AIにどのような指示を与えればこれらの誤りを減らせるのかを検討することが重要だと考え、この研究テーマに取り組みました。


プロンプトの改良は興味深い視点と思います。改良にあたってどのような工夫をしましたか。

プロンプトの改良では、生成AIの「検索もれ」「誤検索」「ハルシネーション」を抑えることを意識して設計しました。

まず予備実験では、資料の中から情報をできるだけ幅広く探すように促す指示や、資料に書かれていない内容を作らないようにする指示をプロンプトに入れました。また、回答の根拠となる部分を引用して示すことや、推測と資料に基づく内容をはっきり区別することなども指示するようにしました。

その結果、プロンプトのあいまいさを減らすことで、検索の精度が上がる可能性が確認されました。そこで本実験では、判断の基準や検索する範囲、言葉の一致の基準などをさらに具体的にしたプロンプトを作成しました。その結果、検索の精度や回答の安定性が向上することが確認できました。


主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか。

主査の杉山岳弘先生からは、資料の数を増やした場合に生成AIの検索結果がどのように変わるのかを確認することや、実際にシステムを使うことが想定される研究者に話を聞くことの必要性について指摘をいただきました。

副査の金明美先生からは、民俗学の研究では、地域の歴史や文化的な背景を理解しながら資料を読み取ることが重要であり、これまでは、その判断の多くが研究者の経験や勘に頼る部分もあったため、解釈に偏りが  生まれる可能性もあったそうです。

そのため、生成AIを活用して資料の情報を幅広く集め、文脈を踏まえて検索できる仕組みを作ることは、研究の過程をより客観的にする可能性があるのではないかという講評をいただきました。また、このような方法が、地域文化の特徴だけでなく、他の地域との共通点を見つけることにも役立つ可能性があるというお話もいただきました。


情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

情報社会学科での4年間を通して、情報技術を社会や文化の中でどのように活用できるのかを考える視点を学びました。特にメディア情報学について、技術面と知識面の両方から学ぶことができました。

また、博物館学芸員資格と社会調査士の資格取得を目指しながら、文化資料の扱い方や社会調査の方法についても学びました。さらに、3年生後期からは交換留学制度を利用して1年間ドイツに留学し、ヨーロッパの博物館などの教育施設で文化資料に対するデジタル技術の活用事例について調査しました。

 

これらの経験を通して、情報技術を単なる技術として捉えるのではなく、社会や文化と結びつけて考え、実際にどのように活用できるのかを考える視点と実践力を身につけることができたと感じています。


この卒業研究に取り組む過程で、あなたの中で変わったことはなんですか。

卒業研究に取り組む中で、根拠に基づいて物事を考える姿勢が以前より強くなったと感じています。研究では、実験結果やデータをもとに結果を確認しながら考察を進める必要があり、自分が考えていたものと異なる結果が出た場合でも、その理由を考えながら検討を重ねる経験をしました。また、生成AIの出力はいつも正しいとは限らないため、その結果をそのまま受け入れるのではなく、資料と照らし合わせながら確認することも大切だと学びました。こうした経験から、結果を客観的に確かめながら研究を進める姿勢の重要性を実感しました。

さらに、研究を進める中で、自分一人で考えるだけでは解決できないことも多いと感じました。先生や先輩、同期の仲間に相談することで新しい視点を得ることができたので、周囲の人と意見を共有しながら研究を進めることは本当に大切なことだと思いました。


ドイツに留学したそうですが、そこでどういうことを得てきましたか。

文化や教育の分野でデジタル技術がどのように活用されているのかに関心を持ち、3年生後期から1年間ドイツに留学しました。

大学ではドイツ語や英語、情報学に関する授業を受け、語学力を高めるとともに情報技術についての知識を学びました。また、実践的な活動として、ヨーロッパの博物館におけるデジタル技術の活用事例を調査しました。留学中には12カ国70館の博物館を訪れ、展示や文化資料の保存・活用にどのようにデジタル技術が使われているのかを実際に見ることができました。

そのうち2つの博物館では、担当者の方にインタビューをする機会もありました。初めて英語でインタビューを行ったためとても緊張しましたが、実際にデジタル技術の導入を進めている方のお話を直接聞くことができ、とても貴重な経験になりました。

この留学を通して、語学力や専門知識だけでなく、自分から行動して学ぶ姿勢の大切さを実感しました。1年間という短い期間ではありましたが、自分にとって大きく成長できた経験だったと感じています。

指導教員講評

指導教員:杉山岳弘

Kさんの卒業研究は、浜松市天竜区水窪町に伝わる国指定の重要無形民俗文化財「西浦の田楽」に関する多様な資料を対象に、生成AIを用いた情報検索の方法を検討した、古い文化と新しい技術を組み合わせた意欲的な研究です。研究室には、長年にわたり、「西浦の田楽」に関するインタビュー音声、学習会の映像記録、行事や本番の映像資料、文献資料など蓄積されてきた資料が多数ありますが、それらは量が多く、必要な情報を探し出すためには時間と労力が必要です。この課題に対して生成AIの活用という新しい視点から取り組み、資料内情報の検索精度を高めるためのプロンプト設計とその評価を行いました。

本研究の特徴は、生成AIの利用を単に試みるだけでなく、検索もれや誤検索だけでなく、「ハルシネーション」といった生成AI特有の問題を明確に考慮し、それらを抑制するための具体的なプロンプトを設計し、実験的に検証した点にあります。また、Kさんは予備実験を通して、事例をひとつひとつ丁寧に分析し、プロンプトの曖昧さが検索精度に与える影響を見つけ、その結果を踏まえて用語に関する指示内容や判断基準をより具体化したプロンプトを設計しました。その結果、検索結果の正確さや回答の安定性が向上することを示し、生成AIを多様な文化資料の調査に活用する際の有効な指針を提示した点で高く評価できます。

研究の過程において、Kさんは、大量のデータと生成AIの出力に対して、資料との照合を根気強く繰り返しながら結果を慎重に検証していました。この姿勢は、こういった検索結果の性能を確かめる上では非常に重要なものであり、Kさんが本研究を通して身につけた大きな成果の一つだと思います。もちろん、すべてをひとりで進めてこられたわけではなく、研究室での議論にも積極的に参加し、周囲の意見を取り入れながら研究を着実に発展させていきました。そこもKさんの得意とするところでもあり、評価できる点でもあります。

Kさんは、明るくて、笑顔の絶えない学生であり、研究室の雰囲気を和やかにしてくれる存在です。研究を進める中で困難に直面する場面もありましたが、そのたびに諦めることなく、先輩や教員に積極的に相談しながら解決策を見出そうとする姿勢が非常に印象的でした。

さらにKさんは、学部在学中に1年間ドイツへ留学し、ヨーロッパ各地の博物館を訪問してデジタル技術の活用事例を調査するなど、研究に関連する経験を自ら積極的に広げてきました。こうした行動力と探究心は、今回の研究テーマにもよく表れていると感じます。

西浦の田楽という地域文化の資料と、生成AIという新しい技術を結びつけたKさんの研究は、地域文化研究と情報技術の融合という点で大きな可能性を示すものでした。Kさんは大学院への進学も予定しており、本研究で培った視点や方法論をさらに発展させていくことを大いに期待しています。

取材・編集:情報社会学科OSスタッフ(2026/03/17)

【私の卒業研究】Sさん「博物館展示の意図と来館者の博物館体験に関する研究-浜松市楽器博物館の特別展を事例に-」

この卒業研究の内容を紹介してください。

 この卒業研究は、浜松市楽器博物館の特別展「尺八 SHAKUHACHI ~竹がつなぐ和のひびき~」を対象に、来館者が展示を通してどのような学びや体験を得ているのかを明らかにすることを目的としています。具体的には、(1)博物館が意図したメッセージがどの程度来館者に伝わっているのか、(2)来館者の個人的コンテキスト(来館前の知識や経験、興味関心)が学習にどのような影響を与えるのか、(3)展示や順路の設計が、来館者に対してどの程度機能しているか、という3点について検証を行いました。

 研究では、浜松市楽器博物館の企画展を対象に予備調査を行い、その結果を踏まえて本調査を実施しました。本調査では、来館者の行動調査、インタビュー調査、アンケート調査の3つの手法を用いて調査を行いました。

 

この卒業研究に取り組もうと考えた動機はなんですか。

 情報学部の授業の一つである「先端情報学実習」で、浜松市楽器博物館と連携した活動に参加したことをきっかけに、卒業研究でも同館を取り上げることにしました。私は大学2年生のときから、浜松市楽器博物館が所蔵する楽器の演奏体験システムを制作するプロジェクトに参加していました。来館者が実際に体験するシステムを作る過程で、楽器博物館の展示と来館者の体験の両方に関心を持つようになりました。特に、浜松市楽器博物館の展示がどのような意図で制作されているのか、来館者は博物館でどのような体験をしているのかということに関心を持ったため、このテーマで研究に取り組むことにしました。

卒業研究の中では「行動調査」と「インタビュー」、「アンケート調査」の3つの手法が取り上げられています。この多角的調査手法によってどういう成果がえられましたか。

3つの手法を組み合わせて調査を行ったことで、来館者についての理解の説得力がより高まったと考えています。例えば、この卒業研究の行動調査では来館者によって鑑賞時間の長さに差が見られました。インタビュー調査の結果と照らし合わせると、短時間しか鑑賞していない来館者の中にも、展示の内容を記憶し、理解している来館者がいることが分かりました。また、アンケート調査によって幅広い来館者層の調査を行ったことで、浜松市楽器博物館の来館者の全体的な傾向を把握することができました。客観的な行動データと、来館者の主観的な認識を組み合わせたことで、博物館の来館者の多様性をより具体的に捉えることができたと思います。

 

予備調査で得た知見が本調査に反映されていて、優れた研究になったと思います。その過程の苦労、こだわりなどがあったら教えて下さい。

 今回予備調査を行ったのは、浜松市楽器博物館の展示や来館者の特徴を把握したうえで研究を進めたいと考えたからです。私はこの卒業研究を浜松市楽器博物館の今後の展示づくりの参考になるような研究にしたいという思いがあったので、博物館の特徴を理解したうえで本調査を行えるように予備調査を実施しました。

 来館者の傾向を知るために何度も博物館を訪れたのは少し大変でしたが、博物館の職員の方々と話をする中で、博物館や展示について理解を深めることができ、研究にも活かすことができたと思います。

 

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか。

 調査結果の分析について悩んでいた際には、主査の村野正景先生に相談に乗っていただきました。先生の助言を受けながら分析の手法や内容を検討したことで、自分の関心のある点について深く理解することができました。

副査の金明美先生からは、調査の計画から分析までの社会調査の一連の流れについて評価をいただきました。また、展示のメッセージ性やそれを受け手である来館者にどう効果的に伝えるかという点に着目したこの研究は、今後の浜松市楽器博物館の展示づくりに活かせる視点を提供したのではないかという講評をいただきました。

 

情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

情報社会学科で学んだ4年間で、幅広い知識に触れながら、自分の関心のある分野について学びを深めることができました。私は「情報」というテーマについて学んでみたいという漠然とした思いで入学しましたが、プログラミングや社会学、メディア学などさまざまな分野に触れる中で、自分の関心のあるテーマを見つけることができました。

また、浜松市楽器博物館との連携プロジェクトや浜松市の課題を解決するアイデアコンテストなど、自分が興味を持ったことに積極的に取り組むことができたのもよい経験だったと感じています。特に、アイデアコンテストでは、浜松市民の方々へのインタビューやオープンデータの分析、プレゼンテーションなどに取り組み、さまざまな経験を通して成長することができました。

卒業研究では博物館や社会調査をテーマに研究しましたが、卒業後はプログラミングへの関心や社会調査で身につけた力を活かしたいという思いから、システムエンジニアとして働くことにしました。4年間を通して、自分の視野を広げながら興味や関心を深めることができたと思います。

 

この卒業研究に取り組む過程で、あなたの中で変わったことはなんですか。

 卒業研究に取り組む過程で、調査を自分で設計して進めていくことの難しさを実感しました。社会調査士の資格取得を目指し、他の学生とグループで社会調査に取り組んだ経験はありましたが、卒業研究では調査の計画から実施、分析までを一人で進める必要がありました。来館者へのインタビューやアンケート調査を行う中で、どのような質問をすればよいのか、どのように調査を進めるべきかを自分で考えながら試行錯誤しました。卒業研究という実践的な経験を通して、自分で考えながら物事を進めていく力が身についたと感じています。

指導教員講評
指導教員:村野正景

Sさんの卒業研究は、情報学部で学んだ量的・質的調査の手法を博物館の現場で活かしたものです。信頼性の高いデータを調査によって得たことが第一の優れた点ですが、それ以上に、その分析結果を単なる学部生の卒業論文として学内にとどめるのではなく、実際の博物館へ還元し、館にとって、ひいては社会にとっても意義のある成果へと発展させたことが大変素晴らしいと思います。私は博物館館長やスタッフからも直接、Sさんの成果の貴重さや重要性を称える声をうかがっています。まさに社会に開かれた研究として高く評価できます。

私の研究室では、調査対象となる現場に自分の言葉で関心事を伝え、その場が抱える課題などと結びつけながら、関係者との信頼関係を築くことを大切にして研究を進めるよう指導してきました。Sさんの卒業研究は、まさにそれを体現したものです。このように、自らの関心を社会の現場と結びつけ、着実に探究を進めた姿勢は研究室でも、他の学生たちに大きな刺激を与えてくれました。

今後はシステムエンジニアとして社会で活躍する予定ですが、現場の声に耳を傾け、課題を丁寧に理解しながら調査と分析を重ねたこの経験は、プログラムやデータと向き合う仕事の中でもきっと生かされていくと思います。

取材・編集:情報社会学科OSスタッフ(2026-03-12)

【私の卒業研究】Tさん「学生発案アイデアの商品化プロセスの検討――観光温泉地・浜名湖舘山寺での地域活性化事例――」

   この卒業研究の内容を紹介してください。

ありがとうございます! 簡単に説明しますね。
私の研究タイトルは「学生発案アイデアの商品化プロセスの検討 ― 観光温泉地・浜名湖舘山寺での地域活性化事例 ―」です。私は地域活性化プロジェクトに所属しており、その活動の一環として、地域の新名物を作るアイデアソンを主催しました。そこで出た学生のアイデアを地域事業所様が商品化してくださり、「ゆあがり牛乳プリン」として実際に販売されました。

本研究は、その商品化に至るまでのプロセスを詳細に記述・分析したものです。最終的には、今後同じような産学連携で商品化を目指す際の指針となる「共創ガイドライン」を作成しました。


この卒業研究に取り組もうと考えた動機はなんですか。

高校時代に自治体主催の地域活性化イベントに参加したことがきっかけで、観光や地域づくりに興味を持ち、大学でも勉強できたらいいなぁとおぼろげながらに思っていました。
そんな中、大学2年生の時に「先端情報学実習」という授業でこの分野を実践的に学べると知り、履修を決めました。

先端情報学実習とは、学部学生が先端的な情報学研究に主体的に取り組むことを目的とし、学生自身で研究課題を設定してプロジェクトを進める実習です。私は、社会学科の杉山岳弘先生と行動情報学科の白井靖人先生が行っていた「地域情報資源の活用とデジタル化に関する研究」に参加しました。この研究は、浜名湖畔にある観光温泉地である舘山寺をフィールドに、若者の視点から舘山寺の観光資源を再発見、活用方法を模索しながら、情報発信・企画・実践に取り組むことを目的とするプロジェクトです。

お二人の先生の指導を受けながら企画を進め、最終的に商品化まで漕ぎ着けることができたのですが、単に商品を作って楽しかったで終わらせたくありませんでした。経験を客観的に分析し、どうすれば学生も企業も本当の意味で納得してものづくりができるのか。失敗しないための指針を形にしたいと思ったのが、一番の動機です。


「ゆあがり牛乳プリン」について、紹介とあなた自身の客観的評価を教えてください。

ゆあがり牛乳プリンはこちらです!


地元の「いなさ牛乳」を使用したなめらかなプリンで、ゆあがりにぴったりな食べやすい味に仕上がっています。現在は舘山寺エリア内限定での販売ですので、気になる方はぜひ現地を訪れてみてください。

客観的な評価としては、1日平均63個という販売数を記録しており、ビジネスや地域振興の面では大きな成功を収めたと言えます。ただ、研究の視点で見ると、プロセスにおいて学生の参画が形骸化した場面もあり、産学連携のあり方としては多くの課題と学びが残る事例だったと評価しています。


「地域の銘菓・グルメ」に取り組む企業などは多いと思います。この研究ではいろいろな知見を得たと思いますが、その方面で活かせる知見はなんですか。

そうですね。
地域グルメの開発において「学生とコラボしました!」と発信される事例は多いんですが、実際にはコストやスケジュールの都合で、学生のアイデアが反映されきれないケースも少なくないです。今回も、商品としては成功しましたが、プロセス面での課題がたくさん見えてきました。そこから得た知見の例を2つ挙げます。

1つ目は「コミュニケーション」です。企業側が無理なものを単に切り捨てるのではなく、背景をしっかり説明し、学生と納得できる落とし所を探る。これがプロジェクトの熱量を維持するために不可欠だと痛感しました。

2つ目は「コーディネーターの重要性」です。学生の情緒的な想いと、企業の経営的な視点。この両者の間に立って橋渡しをする存在がいることで溝を防ぐことができます。
本研究で作成したガイドラインを活用すれば、企業と学生がより良い関係を築きながら、本当に地域に愛されるグルメを生み出せるはずです。


主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか。

完全に私がやりたい「持ち込み研究」だったので、最初は手法や方針を固めるのに苦労しました。そんな中、主査の藤岡伸明先生は私の意図やこの研究の社会的意義を深く汲み取ってくださり、具体的なアプローチへと昇華させてくださいました。また、将来のキャリアを見据えた多くのアドバイスもいただき、非常に視野が広がりました。

副査の杉山岳弘先生は先端情報学実習の指導教員でもあり、アイデアソンから商品化までずっと見守ってくださいました。時には厳しく、しかし成長に欠かせない価値観を多く示してくださったおかげで、人間としてもとてつもなく成長できたと感じています。


情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

本当にたくさんのことを学ぶことができました。私は高校時代、理数科に通っていたのですが、文工融合でプログラミングや統計学などの基礎授業を学ぶことができた上、社会学も吸収でき、これからの情報社会を生きていく上で必要なスキルや考え方は、網羅的に学ぶことができたと思っています。

また、プロジェクトではリーダーをさせていただき、副査の先生の厳しくも温かい指導を受けることができたので、「企画力」や「調整力」はかなり育てられたのではないかと思っています。社会人としての思考や他者協働の在り方までインプット・アウトプットさせていただきました。そんな指導のおかげで、結果として第一志望だったメーカーの総合職から内定をいただくことができました。


この卒業研究を進めるに当たり、特に勉強した分野はなんですか。

木下康仁氏のM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)です。質的データを用いて理論的飽和を目指し概念や理論を起こす分析手法です。主査の先生に勧められて勉強しました。今回の参与観察では理論的飽和に到達することはできなかったのですが、理論を作っていく学びができたことは、今後生きていく上ですごくタメになったと思っています。

また、浜松キャンパスの図書館には個別ブースもあり、勉強に最適な環境でした。また、近くには市の図書館もあり、集中して学習できる環境が複数ある事実は、このキャンパスの魅力だなぁと思っています。


この卒業研究に取り組む過程で、あなたの中で変わったことはなんですか。

「物事は決して一面的ではない」と深く実感するようになりました。調査をしていると、どうしても片方の立場だけで物事を見てしまいがちですが、反対側の立場に立ってみると、そこにはそれぞれの事情や論理があることに気づかされます。これは商品開発に限らず、あらゆる場面に言えることだと思います。

SNSでの批判や日常の噂話なども、背景にある複雑な状況を知らないまま判断するのは浅はかであると強く感じるようになりました。この研究を通して、安易な二元論に陥らず、複合的な視点で物事を捉える姿勢が身についたことは、私にとってすごく大きいです。

指導教員講評

指導教員:藤岡伸明

 

取材・編集:情報社会学科OSスタッフ(2026-03-17)

【私の卒業研究】Oさん「スポンサーシップ開示が与えるインフルエンサーおよび消費者保護への影響の分析」

この卒業研究の内容を紹介してください。

卒業研究では、インフルエンサーによるPR投稿に着目し、スポンサーシップ開示方法と同一投稿内で紹介される商品数の違いが、消費者の広告認識やインフルエンサー評価にどのような影響を与えるのかを検証しました。

近年、インフルエンサーを活用した広告が広がるにつれて、SNS上では企業がインフルエンサーに依頼して商品を紹介するPR投稿が増えています。PR投稿では、企業との関係があることを示す「PR」や「広告」などの表示(スポンサーシップ開示)を行うことが求められています。しかし、表示が分かりづらかったり、曖昧な表現が使われたりする投稿も見られます。スポンサーシップ開示の明瞭化が求められている一方で、統一された表示基準が存在しないため、スポンサーシップの開示方法はインフルエンサーごとに大きく異なっているのが現状です。

また、商品を紹介するPR投稿では、スポンサーシップを受けている商品と受けていない商品が混在した複雑なPR投稿も存在しています。

こうしたSNS環境において、SNSの利用者が投稿をどの程度広告として認識しているのか、また、その投稿やインフルエンサーにどのような印象を持つのかについては、十分に研究されてきませんでした。そこで本研究では、架空のInstagramのPR投稿を用いた実験調査を実施し、消費者の広告認識やインフルエンサーへの好意度、信頼性評価への影響を分析しました。

 

この卒業研究に取り組もうと考えた動機はなんですか。

日常的にInstagramを利用する中で、PR投稿であるにもかかわらず広告だと気づきにくい投稿が多いと感じたことがきっかけです。特に、PR投稿であるにもかかわらず、投稿内で複数の商品が紹介されている投稿では、どの商品が広告なのか分かりにくいと感じる場面がありました。こうした状況が消費者の意思決定にどのような影響を与えているのかを明らかにしたいと思い、本研究に取り組みました。

内外の既存研究と比べて、本研究はどの点に新規性や独自性がありますか。

本研究の新規性は、InstagramにおけるインフルエンサーのPR投稿について、スポンサーシップ開示の有無だけでなく、同一投稿内で紹介される商品数や開示の明瞭さに着目した点にあります。従来の研究では、スポンサーシップ開示の有無やインフルエンサーの信頼性に焦点を当てた研究が多く見られました。本研究では、日本におけるPR投稿の特徴を踏まえた投稿を再現し、実際のSNS環境に近い状況下で広告認識や消費者評価への影響を実証的に検討しました。これらの点に、本研究の既存研究と比べた新規性があります。

 

消費者保護という観点から、本研究で特に重要だと分かった点は何ですか。

本研究の結果から、スポンサーシップ開示が行われていても、その表示方法や投稿内で紹介される商品数によっては、消費者が広告であることを十分に認識できない可能性があることが明らかとなりました。特に、複数の商品が同一投稿内で紹介される投稿においては、広告認識が低下する傾向が確認されました。

これは、投稿内の情報量が増えることで消費者の注意が分散し、スポンサーシップ開示への注意が向きにくくなることによる影響が考えられます。したがって、消費者保護の観点からは、単に開示を行うだけでなく、消費者が広告であることを適切に理解できるよう、開示の明瞭さや表示方法を工夫することの重要性が示唆されました。

 

企業や広告代理店、プラットフォーム事業者にとって、本研究はどのような示唆を与えると考えますか。

本研究の結果から、インフルエンサーによるPR投稿では、消費者保護の観点から消費者が広告であることを認識しやすい表示方法を設計することの重要性が示唆されました。そのため、企業や広告代理店は、単にスポンサーシップ表記を付すだけでなく、開示の位置や表現方法、投稿内で紹介する商品数などを含めたPR投稿全体の設計を検討する必要があります。

また、プラットフォームにおいても、スポンサーシップ投稿であることが利用者に明確に伝わるよう、視認性の高い開示表示の仕組みを整備することが重要であると考えられます。さらに、現行の制度ではスポンサーシップ関係があることを開示することが求められていますが、その表示方法は必ずしも統一されていません。消費者が広告であることを適切に認識できるようにするためには、開示表記や表示方法の標準化を進めることも、今後の制度設計において検討すべき課題であると考えられます。

 

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか。

主査である高口鉄平先生からは、調査設計の妥当性や分析手法の適切性について、多くのご指導をいただきました。本研究では、本調査に先立ち予備調査を実施しましたが、その段階から調査設計について丁寧に助言をいただき、研究全体の方向性を明確にすることができました。

また、本研究ではInstagramを模した調査用サイトと架空のPR投稿を作成しましたが、投稿の構成やデザイン面について何度も相談に乗っていただき、実際の閲覧環境に近い調査設計を実現することができました。多くの調査対象者を必要とする研究であった中、対象者数の設定や調査実施方法についてもご指導をいただき、十分なサンプル数を確保することができたのは高口先生のおかげです。


副査である杉山岳弘先生からは、分析結果を踏まえ、今後の施策や実務的示唆へとどのようにつなげるべきかという視点についてご指導をいただきました。論点を提示していただいたことで、考察をより深めることができました。

 

この卒業研究に取り組む過程で、あなたの中で変わったことはなんですか。

研究を通して、分析手法を主体的に学ぶ姿勢や、分からないことをそのままにせず、理解できるまで追求する姿勢が身についたと感じています。研究を進める中で新しく学ぶ研究手法や知識に直面する場面も多くありましたが、自分が納得できるまで文献を調べたり、指導教員の先生に助言をいただいたりしながら理解を深めていきました。

また、SNSをこれまでよりも批判的かつ客観的に捉えるようになり、日常的に接している情報の背後にある意図や仕組みを考える習慣が身についたことも、自身にとって大きな変化であると感じています。


情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

情報社会学科では、幅広い学問領域から情報学を学ぶことができました。私自身は特に、経済学・メディア学・法学・社会学を中心に、情報を取り巻く制度や市場構造、メディア環境について学びました。多様な視点から情報社会を捉える力が身についたことを実感しています。

現代社会において情報は、人々の意思決定や行動、価値観の形成に大きな影響を与えています。本学科での学びを通して、情報を単なる技術やデータとしてではなく、人々の意思決定やコミュニケーション、社会構造と密接に関わる社会的な存在として捉える視点を身につけることができました。

       

指導教員講評

指導教員:高口鉄平

 

取材・編集:情報社会学科OSスタッフ(2026-03-17)

大学生活を振り返って(Aさん)

■授業での学び

情報社会学科では、コミュニケーションやメディア、社会調査、ジェンダー論、都市論、公共圏や地域政策、情報社会の思想、情報社会の倫理・法律など授業を受講し、社会学、地理学、メディア学、文化人類学、言語学、法学といった多彩な分野について学びました。
入学前はメディアや情報社会に強い関心を持っていましたが、幅広い学問領域に触れることで、当初はあまり関心のなかった分野についても理解を深め、教養を広げることができました。

とくにフィールドリサーチの授業では、浜松市内の複数の事業所を訪問し、インタビュー調査を実施しました。アポイントの取り方から、インタビュー時のマナー、調査票の作成、結果の分析、調査内容の報告までを一連の流れとして実践的に学び、この経験は卒業研究で大いに活かすことができました。また、卒業時には社会調査士資格を取得しました。

授業以外にもさまざまな活動に参加しました。以下では、大学祭実行委員会、情報学部Web制作チーム、珈琲研究会、ガバナンス研究会、りんごラジオでの活動について紹介します。

■課外活動など

1.大学祭実行委員会での活動
大学1~2年生では、大学祭実行委員会の活動に特に力を入れて取り組みました。大学祭開催に向けた準備や大学との調整や交渉を行いました。
大学祭当日はテクノフェスタ(学園祭と同時開催の研究紹介企画)や各学部での保護者向けの催しものなど多数のイベントが行われるため調整が不可欠です。学生支援課のサポートのもと関係各所との調整や交渉を行ったことは非常に大きな学びとなりました。

また大規模行事を学生主体で作り上げた達成感は、何ものにも代えがたいものでした。大学祭実行委員会で出会った友人や先輩、後輩たちとは今でも毎年大学祭の時に飲み会を開催して顔を合わせています。

当時の大学祭委員は2年生までが活動のメインで、3年生以降は引退した先輩として後輩たちをサポートする体制でした。引退後も大学祭への思いは強く、卒業まで助言やサポートを続けていました(現役生の妨げにならないよう心がけていましたが、当時は少し煩わしい先輩に映っていたかもしれません笑)。

卒業論文では大学祭について研究し、戦後の大学祭とその背景にある社会状況や若者文化を外観し、進化する情報社会と若者文化から現代と未来の大学祭について考察しました。
また6校の大学祭実行委員会にインタビュー調査を行い、全国の大学祭の実態や学生文化の多様性について明らかにすることができました。

2.情報学部Web制作チームでの活動
通称「学部Web(がくぶうぇぶ)」と呼ばれており、情報学部公認の学生団体で行事や研究室紹介等の動画コンテンツを作成していました。一部、杉山岳弘研究室のサポートを受けながらも、企画・取材交渉・撮影・編集までを基本的に学生主体で行っていました。
学校行事を取材することも多く、リポートや行事参加者へのインタビューは、いつもドキドキしていました。

講義で学んだ取材時の注意点や編集による印象の違いといった理論を学部Webで実践することで理解を深めることもありました。学部Webでの活動は、メディア関連科目の学びをより深めてくれる貴重な経験でした。(残念ながら学部Webは現在活動をしていないと聞いています。)

3.珈琲研究会とガバナンス研究会での活動


3年生後期からは吉田寛研究室に所属しました。吉田研のゼミ室でもあるガバナンス演習室は、自主ゼミの「ガバナンス研究会」と「珈琲研究会」の活動拠点でもあるため、自然と活動に参加するようになりました。


珈琲研究会では、情報学部棟内での不定期のカフェ開催やメンバーたちとの珈琲の飲み比べ、浜松市内のカフェを訪問するなどの活動を行いました。それまでコーヒーがあまり得意ではありませんでしたが、活動を通じて珈琲の魅力を知り新たな楽しみを見つけることができました。

不定期のカフェ開催は、18世紀ヨーロッパで市民文化を醸成した「カフェ」や「コーヒーハウス」に倣っており、情報学部内に公共的な交流空間をつくることが目的の1つでありました。これも講義で学んだ公共圏やコミュニケーション論の実践的な学びの場でもありました。


ガバナンス研究会(通称「ガバ研(がばけん)」)では、個性的なメンバーによる多様な発表やディスカッションを通じて視野を広げることが出来ました。
またメンバーとは、ガバナンス演習室で映画を鑑賞したり、鍋やバーベキューを楽しんだり、吉田先生に誘われて佐鳴湖に花火を見に行ったりと楽しく有意義な時間を過ごしました。

4.りんごラジオでの活動
ガバナンス研究会は、東日本大震災以降、宮城県亘理(わたり)郡山元町と長期的に関わってきました。研究室配属後に吉田先生に連れられて山元町を訪れた際に「臨時災害FM放送局りんごラジオ」の存在を知りました。大学4年生の夏休みを利用し、活動に参加させていただきました。
夏休みが終わる頃に、りんごラジオの活動は残り半年であることを知り、最後までお手伝いをしたいと思い、合計9ヶ月程活動に参加させてもらいました。高校生時代放送部に所属していた経験を活かし、拙いながらもいくつかアナウンス業務も任せていただきました。

私が活動のお手伝いに入ったタイミングは震災から6年が経過し、道路や建物の多くは復旧していましたが、避難や震災前とは別の場所への住宅再建によってそれまでの人々のつながりが変化しており、地域コミュニティの再建などのソフト面での課題がありました。りんごラジオはどんな小さな出来事も町のニュースとして取り上げ、町民同士を緩やかにつなぐ役割を果たしていました。りんごラジオの存在は町民の新しい繋がりを作る存在になっていると感じました。
また町議会開会中は議会の様子を配信し、議場に来ることが出来ない町民に行政情報を届ける役割も担っていました。

取材を通じて、震災当時の辛い経験を伺う場面もあり、言葉に詰まることもありましたが、災害後の地域や公共性メディアの意義を現場で実感する貴重な学びとなりました。

多分野にわたる授業で培った幅広い視野と、フィールドリサーチや卒業研究を通して身につけた調査・分析の姿勢は、物事を一面的に捉えるのではなく、その背景や構造を意識して考える力へとつながりました。また、大学祭実行委員会や学部Web、ガバナンス研究会、珈琲研究会での活動を通じて、立場や価値観の異なる人々と協働し、調整や対話を重ねながら物事を進める難しさと重要性を学びました。

さらに、りんごラジオや山元町での経験は、仕事や日常生活の中で、社会との関わりの中にある自分の役割や在り方を考え続けるための確かな土台となっています。
こうした貴重な経験を重ねることができたのは、共に学び、一緒に活動した仲間や、温かくご指導くださった教職員の方々、そして地域の方の支えがあってこそであり、改めて深く感謝しています。大学生活を通じて出会った友人、先輩、後輩、教職員、山元町の方々とは今も交流が続いており、そのつながりこそが、私にとって人生の大きな財産であると感じています。

 

情報社会学科で学んだ思い出(Sさん)

 (この記事内の画像は、個人情報に配慮し、承諾のないかたのものには加工を施しました)

もう20数年前になりますが、私が入学した当時、情報社会学科は静岡大学情報学部の中でも新しい学科でした。新設の情報学部棟が完成し、4年間を浜松キャンパスで過ごせるようになり、整った校舎と最先端の設備に胸を躍らせて入学したことを覚えています。(同級生と約20年ぶりに再訪して。向かって左から2人めがSさん)

講義は幅広く、情報学に加えて、コミュニケーション学、社会学、経済学、文学、心理学、ジェンダー論など多様な分野を学びました。授業の一環で浜松まつりに参加したこともあります。地域の方々が最も盛り上がる行事を客観的に観察し学ぶのは、地域に根ざした大学ならではの経験でした。新しい学科ということもあり、新聞社や企業出身など実務経験の豊かな先生方が多く、実践的な視点から学べたことも印象に残っています。

大学1年の夏には1か月間の上海留学を経験し、それをきっかけに中国語や中国文学に関心を深めました。

(安徽省蕪湖の李白紀念館にて。向かって左がSさん)

3年生からは許山研究室に所属し、中国からの留学生との交流を通じてリアルな中国文化に触れ、中国の小説や随筆を読み進めました。3年生の夏に滞在した安徽省蕪湖は、華やかな上海とは異なる静かな街。日本語に頼らない生活に戸惑いながら「日子難過」(巴金『随想録』に登場することばで、「つらい」の意)と呟いた日を思い出します。こうした随筆も、原文で味わえるようになりました。

(勉強会のあとの手巻き寿司パーティ。向かって左がSさん)

ゼミでは、勉強の後に鍋を囲むのが恒例でした。大量の文献に囲まれ、議論を重ねながら鍋をつつく、そんな温かな時間が懐かしいです。

卒論では、初めて100ページ近い論文執筆に挑みました。論文の形式、参考文献の扱い、根拠の示し方、結論の導き方まで、すべてが学びの連続でした。友人たちの卒論も個性豊かで、データ収集や助言を互いに支え合いながら乗り越えた日々は、かけがえのない思い出です。

(卒業研究合宿を終えて、大井川鐵道のなかで。向かって右がSさん)

40代半ばとなった今、久しぶりに大学時代の友人と浜松キャンパスを訪れました。情報学部棟、学食、アパート、アルバイト先、浜松城を巡る中で、当時の情景が次々と蘇りました。LANケーブルをつないで夜遅くまで課題に取り組んだラウンジは、今も変わらずそこにあり、学生時代を象徴する場所です。

(久しぶりに大学内を散策)

大学の4年間はあっという間でしたが、人生の中で最も自由で充実した時間でした。学びを通して世界が広がり、全国から集まった仲間や恩師との出会いが、私の人生をより豊かにしてくれました。

社会に出てからも、大学で培った「考える力」「伝える力」「つながる力」は、仕事や人間関係の中で活きています。情報社会学科で過ごした日々は、今の自分を形づくる大切な土台です。