卒業研究リスト(2025.03)

静岡大学 情報学部 情報社会学科

2024年度 卒業研究リスト

杉山岳弘研究室

英文法学習システムにおける学習者のエラー訂正を目的とした出題方法の試作
静岡大学あかつき寮の運営支援を目的としたデジタルアーカイブの試作
ドローン画像を用いた河川巡視のための画像情報の抽出方法に関する検討
秋葉信仰関連文化財の調査データを活用した「秋葉街道デジタルマップ」の制作
人の魅力を紹介する「魅力発見!三ヶ日似顔絵イラストマップ」の制作
効果的なSNS情報発信のための投稿内容分析に基づいたプロンプト設計
浜松市観光インフォメーションセンターにおけるコロナ禍前後の問い合わせ内容の比較分析


高瀬奈美研究室

アバターの外見がコミュニケーションに及ぼす影響
ワーキングホリデー経験によるプレキャリアの人たちの就職観の変化―オーストラリアワーキングホリデーを事例に―
仮想現実でのスピーチ練習と情意の影響:ジェスチャー・視線の役割
ゲーミフィケーションを使った教室での英語語彙学習の有効性
ARとVRを用いた言語学習における統合的動機に関する比較研究


許山秀樹研究室

祭囃子の系譜の研究  ―江戸・京の祭りと浜松周辺を比較して―
日本におけるラム酒文化


吉田寛研究室

ディズニープリンセス作品におけるヴィランズの変遷
近代的時間意識と情報社会
インターネット・レビューによって消費の形はどのように変容したのか
画像生成AIに反映される社会的バイアス


M.G.シェフタル研究室

技術革新と労働の価値の行方
在日ブラジル人の社会統合
文化の違いと広告表現:日中米の比較


近藤真研究室

日本語テ形節に関する統語的分析


中川恵理研究室

エージェントの機能に関する説明がヒトの同調行動に与える影響
日本語と英語の子供向けアニメにおける「ほめ表現」の違い


郭善英研究室

日本人ファンが求める男性アイドル像〜日韓アイドルファンへのインタビュー調査から〜
K-POPの海外戦略の変遷と現地化グループの台頭―日本市場の分析を中心に―
SNS利用における心理的な影響〜tiktokを中心に
日本のファクトチェック推進に向けたアプローチ―韓国・台湾との比較分析から―
コンテンツ産業の変化から見る推し活の意義―アイドルファンの活動を中心に―
スペインサッカー界の人種差別に関する考察〜ヴィニシウス・ジュニオールと過去の事例から〜


丸山友美研究室

週刊少年ジャンプにみるポストフェミニズムの展開―『めだかボックス』(2009-2013)を事例に
”職業アイドル”をめぐる生/性に 関するメディア文化論 ―男性アイドルにおける恋愛と結婚―
大河ドラマが描く歴史のリアリズムとリアリティ ―NHK『どうする家康』(2023)を事例に―
子どものジェンダー化とメディアのジェンダー表象 ―月刊絵本『キンダーブック』を事例に―


秋元菜摘研究室

浜松市旧中区における資源回収物拠点の再考―集合被覆問題とGIS分析から―


笹原恵研究室

性的指向の受容過程とアイデンティティの確立
大学生は化粧についてどのようなジェンダー観をもっているのか
いま、なぜ、家族葬なのか
子どもが不登校になった親はどのような支援を必要としているのか


原田伸一朗研究室

ゆるキャラの個人化と「中の人」の権利
ソーシャルゲームの円満なサービス終了について

伊夢瑛研究室

監視社会とプライバシー―日本は監視社会であるのか、監視社会の課題としてのプライバシー権―
画像生成AIと著作権 ―開発・学習段階と生成・利用段階から見る著作権侵害性の検討―


望月美希研究室

港の機能転換における合意形成―清水港・用宗港を事例に―
中山間地域における子育て支援―浜松市天竜区春野町を事例として―
日本におけるスマート農業の普及過程に関する考察―中山間地域における事例から―
浜岡原子力発電所の原子力防災に関する考察―福島第一原子力発電所事故をふまえて―


金明美研究室

ダム建設後の地域社会における内発的発展の可能性―愛知県設楽ダム建設の事例から―
デジタル時代における映画館・上映の場の役割―コミュニティシネマに着目して―


藤岡伸明研究室

越境学習の実状と展望
Jリーグの観客動員数増加の背景にある要因
若者のクルマ離れと社会への影響
プロサッカーチームによる地域支援と地域創生
山梨県のワイン産業に関する研究
ドローン教室における学習効果


岡久太郎研究室

人間とAIによって生成されたキャッチコピーの比較研究
SNSユーザ個人特性推論のためのデータセット構築と推論
コミュニケーションの観点から見た書籍の帯文キャッチコピー分析
広告コピーに見られる視点を表す言語表現の分析
恋愛ソングにおける比喩表現の認知言語学的分析
幼児を対象とした談話に見られる修辞的表現の分析


高口鉄平研究室

インターネット上の健康・医療情報収集行動が医療選択に与える影響の分析
ファッション産業におけるAIによるパーソナライズと価格戦略の分析
企業の炎上とその後の対応が与える消費者行動への影響の分析
パーソナルカラー情報がもたらす消費者行動の変化に関する分析
AI生成楽曲が聴者に与える印象分析
支払い方法と購入手段が購買意欲に与える影響分析

 

卒業研究リスト(2024.03)

静岡大学 情報学部 情報社会学科

2023年度 卒業研究リスト

原田伸一朗研究室

ファスト学問:コンテンツとして消費される学問
画像生成AIがイラストレーターに与える影響
バーチャルYouTuberと切り抜き動画
ファンベースの考え方を用いたオンラインゲームの運営:VALORANTを例に


杉山岳弘研究室

現代の日本における児童文学の装丁〜表紙のレイアウトから見るデザインの特徴に関する分析〜
VR演奏体験を通して楽器の文化的価値を学ぶコンテンツのデザイン
映画宣伝を目的としたショート動画制作手法〜セマンティックスコア法によるシーン抽出の検証〜
文法構造の理解度を向上させる英語学習システムの開発
情報Ⅰの学習意欲を向上させる導入トピックのストーリ化と動画教材のデザイン
生成AIを活用した浜名湖かんざんじ温泉観光協におけるSNSによる情報発信の仕組みづくり
出版社における小説の販売促進を目的としたXによる情報発信方法の分析


秋元菜摘研究室

WebGISを用いた防災教育―浜名湖弁天島における観光防災の事例
遠州鉄道周辺における都市構造―生活関連施設に関するGIS分析
浜名湖弁天島の観光まちづくりマップにおけるWeb連携の可能性
浜名湖の自然環境保全に向けた水産資源データの整備状況


高口鉄平研究室

ダークパターンが及ぼす企業イメージとリスクの分析
グルメに関する参照情報に対する信頼の分析
SNSにおけるルッキズムと行動の関係性分析
偽情報・誤情報の規制の在り方の考察―消費者視点からの検討―
エコーチェンバーを加速させるアンフォローの行動分析
交通系ICにおけるデータ利活用意向の実証分析
創作物における作品情報の価値分析−創作者としてのAIの意味−


吉田寛研究室

望ましい対話のための仮想空間の提案と実装
観光のまなざし −愛知県蒲郡市を例に−
コミュニケーションにおける適切な自己呈示について
炎上における他者を「叩く」ことの動機について
シティプロモーションにおけるSNS広報の現状と課題
「サードプレイス」における「交流志向」と「個人志向」
死者AIが許される条件は何か?


望月美希研究室

防災学習施設における災害展示の在り方−静岡県内の防災学習施設を主な事例として―
リノベーションまちづくりによる「商店街の社会的機能」の回復―岐阜県岐阜市柳ヶ瀬商店街を事例として―
リニア中央新幹線開発の被害構造に関する考察―長野県大鹿村を事例として―
中山間地域における地域づくりと移住者の受容―浜松市天竜区熊地区を事例に―
社会保障に関する申請主義の障壁とその克服―静岡県内自治体の行政手続のデジタル化の事例から―


堀内裕晃研究室

論理構造を組み込んだ生成AIの対話による人狼ゲームエージェントの構築
恋愛映画における恋人同士の会話の特徴分析
プロ野球中継における実況と解説の会話分析
トーク番組のテーマ展開研究
タレントの配置と会話テーマ展開の関連性の分析と考察
新卒採用キャッチコピーの特徴分析と考察


郭善英研究室

声優のマルチタレント化の要因の考察
「アイドルホース」に関する研究
オーディション番組が求めるアイドル像 ―「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」の分析から―
Jクラブのリブランディングから読み取る、Jリーグの存在意義
男性アイドルからみる「国民的アイドル」の変遷
日本のアイドル産業おけるSNS戦略について


丸山友美研究室

アニメ作品のモデル地で働く人々が見ている聖地巡礼のその先


金明美研究室

在日外国人高齢者への介護福祉支援の現状と今後の課題に関する考察:浜松市での調査とドイツの事例を踏まえて
西日本豪雨から見るコミュニティの役割について:岡山県倉敷市真備町の事例から
BTSファンダムが日本の韓国イメージに与える影響について:日本のBTSファンへのインタビュー調査を通して
人と音楽の関わりの考察:サブスクリプション・サービスに着目して
現代の若者の「恋愛離れ」と「価値観」に関する考察:アンケート調査を踏まえて


笹原恵研究室

浜松市における自治会の情報化に関する⼀考察―浜松市のDXサポート事業に着目して―
若者は恋愛離れしているのか
大学生は将来子どもを持つことをどのように考えているのか
新型コロナウイルス感染症蔓延による大学生活 への影響について
日本の少子化対策について


藤岡伸明研究室

浜松市における女性活躍推進のための取り組み:女性管理職比率の観点から
なぜミカン栽培を仕事にしたのか:親元就農者と新規就農者を比較して
プロ野球の観客動員数を決定づける要因の分析:中日ドラゴンズに注目して
浜松市におけるワーク・ライフ・バランス実現に向けた取り組み
静岡大学生の職業決定要因
留学生を対象とするデジタルストーリ−テリングの実践
現在のルーマニアにおける政治意識


M.G.シェフタル研究室

中国主流文化と「ライバー」サブカルチャー
ビデオゲーム依存の社会的な影響
アスリートの多様化から考えるスポーツ・ナショナリズム
言説空間上の「オタク」像


高瀬奈美研究室

高校英語検定教科書における接頭辞の調査:語源法に基づく英単語学習について
オンラインチャット上でのフィードバックがスピーキングに与える効果

卒業研究リスト(2022年度卒業、202303)

静岡大学 情報学部 情報社会学科

2022年度 卒業研究リスト

原田伸一朗研究室

動物型ロボットの虐待は認められるのか
プロゲーマーのキャリア問題
バーチャルシンガーの系譜
なぜ声優はYouTubeに進出するか
アバターコミュニケーションツールの研究:アバターの社会的普及に向けて
「投資リテラシー包摂」の⼿段としてのNFT


藤岡伸明研究室

コロナ渦以後における⼤学⽣の成績決定要因
演劇教育を通じた⾮認知能⼒の育成
⽇本のIT⼈材不⾜の現状に関する研究
SNS炎上から考えるインターネットとの付き合い⽅
⼤学⽣の就職活動の地域格差
⾼校⼊試の地域差


⾼⼝鉄平研究室

オタクの消費⾏動の定量的類型化分析
⾳楽コンテンツ変遷によるアナログの現状と今後の可能性
教育データ利活⽤における個⼈の選好分析
防災⽤品の準備におけるパーソナライズ化の効果分析
SNSにおける個⼈情報開⽰意識―Instagram “ストーリーズ”に着⽬した分析―
東京ディズニーリゾートにおける待ち時間の経済分析
都市OSの経済分析 – デジタルガバメント特化型都市OSの資⾦的持続性確保についての検討 –


吉⽥寛研究室

テクスト論から⾒る俳句
シェアリングの⽂化は⽇本において定着するか?
なぜ「撮り鉄」は写真を撮るのか?
「ファスト映画」と創作性――著作権法の視点からの分析――
⼤学祭における公共性と共同性


堀内裕晃研究室

オンライン英語学習環境における語彙学習システムについての検討:語彙習得に有効な学習機能に焦点を当てて
⽇本語⺟語話者の英語⾳声認識を促す効果的な学習法と教材の提案
詩的効果が広告効果に与える影響の分析
歌詞における⼈称の分析と考察
アプリゲームにおけるキャラクターの特徴と選択肢の傾向分析
テレビの変化と今後〜インターネット時代におけるテレビの在り⽅〜
⽇本⼈英語学習者によるto不定詞と原形不定詞の習得と効果的な学習⽅法の提案
コロナ禍と映画鑑賞の関連性
旅⾏先の決定にSNSが与える影響
好感度の⾼いテレビCMの構成と⾔語表現に関する分析と考察
ホームドラマにおける対⼈コミュニケーションの分析と考察
ワイプリアクションの分析と考察


杉⼭岳弘研究室

VR空間における⽴体表現された⽂字の視認性に関する研究
⻄浦⽥楽の⻑時間記録映像視聴時の⽣体反応と印象評価に基づいた映像編集⽅法の検討
若者のイベント参加⾏動促進を⽬的としたSNS情報発信の投稿分析
⻄浦⽥楽の演⽬の俯瞰を可能とする映像視聴システムの検討
⻄浦⽥楽の演⽬に関する⽂献の⽐較検証を可能にするデジタルアーカイブの試作


笹原恵研究室

若者の地元志向とライフスタイル
パートナーシップ制度の現在
新型コロナウイルス予防のためのワクチン接種の実態と情報⾏動に関する⼀考察


⾦明美研究室

⽇本における「サッカー離れ」についての検討:若者のコンテンツ消費の在り⽅に着⽬して


狩野愛研究室

アメリカのヒップホップがBLM運動に及ぼした影響―⼈種差別撤廃運動のアンセムの事例研究―
若者⽂化としての現代短歌 −若者による現代短歌の⽂化特性と制作の動機について−
2020年代にサウナが流⾏した要因の考察ーイノベーターが与える影響について
サッカー観戦者のチーム⽀援とSNS利⽤の関係についての調査研究
⽂化財修復のあり⽅に対する世界諸国と⽇本の考え⽅の⽐較
TV−CMにおける異化効果−異化効果が商品想起に与える効果の調査−


M.G.Sheftall研究室

「情報技術の発展によるニヒリズムの危険性」


伊夢瑛研究室

プライバシーポリシーにおける個⼈情報保有期間の公表の必要性


⾚尾晃⼀研究室

「萌え」から「推し」へ-時代の変化に伴う、オタク活動の変化
韓国で活躍する⽇本⼈K-POPアイドルの増加とその背景
ソーシャルゲームにおける課⾦⼼理について
Twitterにおけるイラストの拡散分析


岡久太郎研究室

⽇⽶NBA実況の会話分析と⽐較


秋元菜摘研究室

中⼭間地域における避難施設の再考−浜松市天⻯区における道路ネットワーク分析
路⾯性状の測定と地理空間データの利活⽤−GNSS・加速度センサ・3D点群データの併⽤
浜名湖弁天島エリアの観光とスマートシティ化に向けた課題
地域⽂化を活⽤したデジタルスタンプラリーによる浜名湖弁天島の観光⽀援
浜名湖周辺におけるエコツーリズムの可能性−地理的特性とGIS分析から

 

【私の卒業研究】Sさん「地方自治体における文書館設置と文書の電子化について」

(以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒論の内容を紹介してください。

私は「文書館」と「文書の電子化」という2つの柱で卒論を書きました。文書館とは国や県、市町村等行政機関、または企業、その他団体などがその活動の中で作成したり受け取ったりした記録資料を永久保存して、一般の利用に供する施設です。

日本では文書館と聞いてピンとくる人は少ないと思いますが、欧米では博物館、図書館と並ぶ3大文化施設として広く認識されています。

特に、行政機関は日々大量の文書を作成・処理しており、それら文書は私たち国民・住民に対し、説明責任を果たすための重要な資料となります。しかし、それらすべてを保存することは現実的に不可能なので、保存期限を定め(30年原則に従い、最高30年と定めているところも多くある)、保存期限の満了した文書は廃棄しているのが現状です。

しかし、これでは30年後には、現在の行政資料はすべて無くなってしまい、現在の街の様子や状況を知ることが出来なくなってしまいます。また、2001年に施行され注目を集めた「情報公開法」は、保存期限が満了していない文書(現用文書)にのみ効力を持つものであり、保存期限が満了した文書(非現用文書)は対象外であることはあまり知られていません。さらに現在進む市町村合併により、文書の散逸・廃棄が危惧されています。

このような状況において文書を救済する1つの手段が文書館というわけです。日本には2006年1月現在、都道府県文書館は29館、市区町村文書館は20館あります。これは欧米等諸外国と比べ、格段に少ない数字です。

そこで本研究では、近年における文書館設置の傾向についてまとめ、文書館設置に結びつきやすい要因を探り、どのように文書館を設置すべきかについて考察しました。さらに情報技術の進展により登場してきた「電子文書」の課題を踏まえ、文書館は電子文書をどのように扱おうとしているかについてまとめました。

このテーマを選んだのはどうしてですか?

研究室の先輩方の卒論を読んでいて、「アーカイブ」「文書管理」に漠然とした興味がありました。卒論テーマについて八重樫先生と相談したとき、それではとりあえずの方向性として「文書館設置の目安」を考察してはどうかというアドバイスをいただきました。

しかし、これがやってみたら難しかった。苦戦しました。目安はあるようでないようなものだったので。先生はそう簡単にはいかないと初めからわかっていたようです。多分、いつかは自分で気づくだろうということだったのでしょう。してやられました(笑)

 最終的に、頭を切り替え、そこから派生した形で全国の文書館の設立経緯から設立の要因を探ることを目的にしました。

この論文を書いて得られた知見はなんですか?

静岡県市町村を対象とした調査では文書館については、ほとんどの自治体がその必要性を認めていました。しかし、長引く財政難で設置が困難というのが多くの自治体の見解です。

その一方で、全国には小規模自治体ながらボランティアを募って文書館を設置した団体や文書館設置に積極的に取り組んでいる団体もありました。文書館設置は、文書は住民のものであり、地域の歴史を知る上での財産であるという文書に対する「考え方」の違いが大きいと感じました。

他の文書管理研究と比較して、Sさんの論文の長所は何ですか?

全国の10の文書館についてその設立経緯を比較した点であると思います。また私の卒業研究は、3年前、1年前の先輩の卒業研究を引き継ぐ形となっているのでそれを踏まえたうえで文書館施設やその利用についても詳しく触れられたと思います。あとは近年の文書館設置動向として設置年度の新しい文書館や設置予定の団体を研究の主な対象にしたことも新しいと思います。

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

テーマ・構成をある程度決めたら、出来るだけ早く書き始めるとよいと思います。

 私の場合、資料等はある程度読み、頭の中でまとめてはいたのですが、実際書き始めてみると、調べ足りないことがかなり出てきて、構成から見直す必要がありました。

 

締め切りまでそれほど時間がなく、愕然としたのを覚えています。また締め切りぎりぎりはよしましょう。体力にいくら自信があっても3日間ほとんど眠らずではさすがに集中力が落ちます。精神的にもつらいです。

 ある程度余裕をもって取り組むことをおススメします。

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

主査の八重樫先生からは、文書館設置の目安を地域の歴史という観点からも調べられたらよかったというコメントを頂きました。副査の藤井先生からは10の文書館について調べたことを評価していただきました。また自分でも感じているのですがもう少し電子化について踏み込んで書ければよかったとの講評をうけました。

情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

まず挙げたいのは、自分で主体的に動くことの大切さです。

 先生方は、私たちが積極的に動けば、それに応えてくださいます。価値のある情報は、待っているだけではなかなか手に入りません。自ら行動して、獲得するものです。私の場合、中国語の自主ゼミに参加して、中国語の能力を磨いたり、さまざまな分野の先生にご教示いただいたりしました。これは、他の大学に行ったら得られない、私の貴重な「資産」になりました。

 また頑張っていれば、その姿をどこかで見ていてくれて、行き詰まったときは適切な指導や助言をしてくださいます。

全力で事にぶつかり、色々なことを経験してください。

 

指導教員講評

指導教員:八重樫純樹

 日本では“記録資料”の保存・管理・運用について、行政も民間企業もあまり真剣に取り組んでおりません。諸外国、特に欧米(中国も)では各種社会活動機関・団体等では、活動記録を社会説明責任と後世への活動歴史(記憶)資料として、国家や各機関・団体では社会的記憶装置として一般化しており、膨大なデータベースが構築されております。また、社会情報化・グローバリゼーションのうねりの中で、これらの記録資料情報を世界一体化させようという動向にあり、世界の動向の中で日本は取り残されてしまいかねない情勢です。このため研究室では社会共有情報資源論の立場から文書館研究を柱の一つとして、S君が3度目のテーマとなっております。諸先輩の成果を踏まえた上でのS君の成果でした。

 難しいテーマで、どのようなまとめ方をするのだろうと思っておりましたが、非常に積極的でパワフルな活動をし、四国や九州方面の文書館機関へ直接出かけて調査するなど、かなり奮闘しました。何度か全体構想を変え、最終的には無事軟着陸といったところでしたね。本人も言ってますように、電子文書のアーカイブが非常に大変なテーマで、このテーマの充分な考察にはいたりませんでしたが、基本的調査を行ってくれました。二つの卒論を同時に遂行したようなものです。

 世界一体化動向から日本は取り残されそうなテーマもあり、後輩の卒研にも繋がると思います。最後の最後までパワフルにやってくれました。あのパワーは社会人としても期待できますね。

取材・編集:N(2006.3)

【私の卒業研究】Kさん「沖縄戦報道の現在」

(以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒論の内容を紹介してください。

 この卒業論文は、沖縄という地域に着目し、情報やメディアの力がどのように沖縄という地域を動かしてきたかを検証・分析しています。

沖縄という地域は、近現代、世界でも、独特の歴史を歩んでいます。琉球王国から大日本帝国への併合に始まり、世界大戦では史上最悪といわれた沖縄戦という地上戦を経験し、戦後は米国統治時代を経て、ようやく日本への復帰を果たしました。

このように、統治者が短期間で次々と代わることで、沖縄の人々は“沖縄学”や“沖縄人”という文化やアイデンティティーを形成してきています。

ではその過程の中で、メディア、特に沖縄地方紙はどのような役割を果たしてきたのだろうかという疑問から、この論文はスタートしています。よって、この役割や沖縄地方メディアの特徴などをより正確に捉えるため、それらが顕著に現れるであろう“沖縄戦”に焦点を絞り、1997年から2004年までの8年分の沖縄地方紙『沖縄タイムス』と中央紙『朝日新聞』の“沖縄戦”に関する新聞記事を読み込むという研究方法をとりました。

8年分の新聞記事を検証していくことで、多くの特徴や沖縄戦報道の実相を捉えることができました。一番特徴的であったのは、地方メディアによる“沖縄人”としてのアイデンティティーの育成です。『沖縄タイムス』は“沖縄人はこうあるべきだ”という発言を、具体的であれ抽象的であれ、し続けていました。これは他の地方新聞には見られない特徴です。

他にも“抵抗のジャーナリズム”や“キャンペーンジャーナリズム”といった特徴が見られました。そして“沖縄戦”という歴史的事件が現代の諸問題を語る際にも大きく語られているのがよく分かりました。沖縄にとって“沖縄戦”とは、歴史的事象という意味以上に、“沖縄人”というアイデンティティーの根底にある、絶対的な存在であったのです。

このテーマを選んだのはどうしてですか?

 3年次のゼミから、沖縄に関する書物を読んできたのが大きな要因です。ここで沖縄という地域の奥深さを知り、卒業論文時に、それらをより深く知っていきたいと考えるようになりました。

また、この論文では、地方メディアが特定地域のアイデンティティーの形成を助けていることについても指摘していますが、これもゼミ内で『<日本人>の境界』(小熊英二著)という本に出会ったことがきっかけです。

果たして我々はどのようにして、アイデンティティーの形成をしてきたのだろうかという歴史や現状に強い興味を抱くきっかけとなりました。

多くの本を読み、そして様々なことについて“知る”ということに加え、“考える”という機会を多く与えられる荒川研究室に所属できたからこそ、このテーマを選べたのだと思います。

この論文を書いて得られた知見はなんですか?

 まずは、“情報”や“メディア”の影響力の強さです。これは、論文を書く前にももちろん知っていたことではあるのですが、実際に論文を書くことで体感できたように思います。沖縄という小さな地域の持つ、底知れないパワーというものは、沖縄地方紙のもつ“抵抗のジャーナリズム”などの特徴に支えられているのではないかとも感じました。

 また、“沖縄戦”という歴史的事件をただ報じるのではなく、それが現代の問題解決に生きることもあったという点から、“沖縄戦”という存在の大きさを知りました。沖縄地方紙においては、“戦争を繰り返してはいけない”という趣向以外でも、“沖縄戦”を報じることがあるのです。

 そして“沖縄戦”は、現代の“沖縄人”というアイデンティティーすらも支えているのです。例えば本土生まれ本土育ちの人間が、“自分は●●県人だ”もしくは“自分は日本人だ”ということをそれほど強く意識するだろうか、その意識の裏に第二次世界大戦があるだろうかという比較を持ち出せば、沖縄メディアの訴えるものが如何に特徴的かが分かります。

これは史上最悪と呼ばれる“沖縄戦”を経験しただけでは生まれなかった意識ではないでしょうか。やはりその背景には、それらを強く訴え続ける沖縄地方紙があるのだと思います。

現代社会に潜む意識を、“沖縄戦”という歴史と沖縄地方紙が形成してきたということも、今回得られた知見です。

荒川先生の指導は、この論文でどのように生かされましたか?

 さきほどお話ししたとおり、3年次からの荒川先生の指導があったからこそ、この論文テーマに出会えました。これはとても幸せなことだと思います。

 調査方法の模索に始まり、研究途中にも、どのような点に注目して研究を進めればよいか等の指導もしていただきました。記事の検証でいっぱいいっぱいになってしまうため、それらを如何に分析していくかという多くの新たな視点の発見に、生かせていると思います。

他の沖縄研究と比較して、Kさんの論文の長所は何ですか?

 何よりも、8年間を通して、沖縄地方紙『沖縄タイムス』の“沖縄戦”に関する記事全てを研究対象としている点です。更に中央紙『朝日新聞』の同じ条件の記事を研究対象とし、比較して“沖縄戦報道”の実情を捉えようとしている論文は、他にないと思います。またそこからアイデンティティーの形成などへ視点を移しているのも、この論文の特徴です。

卒業研究作成に当たって、もっとも苦労したことは何ですか?

 やはり8年分の記事の検証です。半年以上かけて検証してきました。記事データ自体はWeb上で公開されているため、手に入れるのは容易でしたが、何しろデータ量もかなり多く、また記事の雰囲気も重いものが多かったため、非常に多くの時間をとってしまいました。しかし今振り返ってみれば、その積み重ねがこの論文の命になっていると思います。

 

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

 まずは興味のある分野を見つけることだと思います。私自身、1・2年次にはこの論文のテーマとなっている分野にはほとんど興味がありませんでしたが、ゼミなどを通して、この分野のおもしろさに惹きつけられるようになりました。極力多くの分野に目をむけ、まずは自分の知的好奇心をくすぐるものに出会えるよう努力すべきだと思います。

興味のある分野であれば、研究自体も、大変ではあるかもしれませんが、根気強くやっていけると思います。

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

 一地方新聞が“沖縄人”というアイデンティティーの形成に役立っているという主張についてが主でした。自分が論文内で力を入れたこの主張に触れてもらったのが嬉しかったです。

沖縄問題という重い問題にじっくり取り組み、一つ一つの記事を丁寧に読み込み、問題点をあぶりだしていることに成功しています。論文を読んで、その点に敬服しました。Kさんはこのような執筆態度はどのようにして身につけたのですか?

 これは、荒川先生からの指導、という一言に尽きると思います。私は元々熱しやすく冷めやすいタイプですので、このように膨大な情報を整理し、まとめ、執筆するという作業には向かない人間だと思います。

 しかし、掘り下げれば掘り下げるほど多くの問題があふれ出すこの沖縄問題という分野を選んだことに加え、荒川先生にこの沖縄に存在する様々な問題を如何に検証していくかという多くの道を提示していただいた結果、この論文のように、じっくりと一つのことに取り組むことが出来ました。

 興味が尽きることなく、最後まで好奇心をかき立てられながら執筆できたのは、本当に幸せです。

情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?

 情報の持つ力の強さです。情報は、たとえばどのような媒体であれ、それが真実の情報であっても虚偽の情報であっても、驚くほどの影響力をみせます。そんなことは分かっていると感じる人もいるかもしれませんが、どのようなことであっても、“何となく分かっている”と“自分自身で検証した上で分かっている”では大きな違いが有ります。実際に4年かけて情報の力を学べたことは、代えがたい私の財産となりました。

 

指導教員講評

指導教員:荒川章二

 Kさんの卒業論文『沖縄戦報道の現在』は、(1)沖縄戦という歴史的体験が沖縄の人々のアイデンティティー形成にどのような意味を持っているのか、(2)そのような意識化の過程で地域ジャーナリズムがどのような役割を果たしているのか、という二つの、いずれもかなり検証が難しい課題にチャレンジし、それを卒業論文としては相当の高水準で解明しました。

 私のゼミでは、3年次から沖縄関係マスコミ史の様々な文献を読み、また、演習の最初では(10分程度)、参加者全員が『沖縄タイムス』や『琉球新報』など沖縄関係の新聞から「今週の記事」をなんでも一つ拾い出し、紹介する形式の授業を行い、沖縄の新聞・あるいは沖縄での日常的出来事に親しむようにしてきました。このような2年間の沖縄関係文献講読の授業とKさんのたぐいまれな集中力・分析力とがうまく絡み合い、いい成果が出せたと思います。

 しかしそれにしても、Kさん自身が繰り返し強調しているように、8年間にわたる沖縄タイムスの沖縄戦関係記事をよくここまで読み込みました。沖縄戦という言葉を何らかの形で含めた記事は、実は毎年700~900件にも上ります。8年間では5000件を越える膨大な分量の記事になるわけです。Kさんは、この膨大な記事をきっちり読む込み、整理し、その変化や特徴を明らかにしています。

 卒研指導の途中、私はKさんに対し、この記事の意味は、また、この記事をなぜこう分析するのかというような質問を何度も投げかけましたが、そのほとんどに対し、内容をふまえた的確な回答が帰ってきました。Kさんが、記事をきっちり読み込んだことが確認できます。だからこそ、これだけの水準に持っていけたのでしょう。

 Kさんは、最後に「情報の力」について語っています。それは、情報学部での4年間の経験全体を通じて実感したものでしょうが、この卒業研究では、一度に出されれば途方にくれる程の、しかもバラバラで膨大な情報に筋道を付け、意味づけるという、《情報に価値を吹き込む》作業をしました。この作業がKさんの人生にとって「無形の力」になっていくことを期待しています。

取材・編集:H(2006.3)

【私の卒業研究】Mさん「校歌の歌詞に謳われる静岡県の地域イメージと 歌詞データベースの作成」

    (以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒業研究の内容を教えてください。

テーマは「校歌の歌詞に謳われる静岡県の地域イメージと歌詞データベースの作成」です。
この研究のテーマは地域イメージを把握することによって、地域アイデンティティを認識する範囲を特定することが目的です。なぜ地域イメージを把握する必要があるのかは2つの理由があります。

1.現在犯罪の増加や、災害などにおいて地域コミュニティのパワーが見直されています。その際、住民が自分自身が居住している地域を意識することが重要です。
2.また、平成の市町村合併における広域新自治体での地域アイデンティティを共有する範囲のずれが生じている可能性があることから、県内の地域レベルでの地域イメージ・地域アイデンティティが問題となっています。

そこで、静岡県の小学校を対象地域とし、校歌に歌われる景観要素を抽出し、そこから静岡県の地域イメージを把握しようとしました。校歌には教育理念や校風とともに郷土の歴史風土を謳いあげる特性があることから、地域イメージを把握するために、景観要素を抽出する際に用いました。

学校の基本情報(学校名、住所など)とともに、校歌から抽出した景観をデータベースとして作成しました。そして、それぞれの固有地名を校歌に謳う学校をArcGISを用いて地図上に点データとして表示し、地域イメージを分析しました。

この卒業研究を書こうと思った理由は何ですか?

3年生の頃から地域社会と情報演習を学んでいく中で、地域のあり方や地域の人々、地域コミュニティなどに興味を持つようになりました。しかし、具体的にどのような研究をしたいという明確な骨子はなかなか見つけられませんでした。

西原純先生と相談をしていくうちに、校歌を用いて地域の景観から地域のあり方を分析するという研究にたどり着きました。ちょうど現在市町村合併がすすめられていますが、広域名自治体が続々と誕生する中で、地域アイデンティティを異にする地域範囲も想定されると仮定し、地域アイデンティティを認識する範囲にはどのような広がりが見られるのかということを最終的には研究しています。

これまでの研究と比較して、あなたのこの研究の長所はなんだと思いますか?

校歌から景観を研究したものは既存研究でいくつか見られるのですが、今の時代に合わせて、その内容をデータベースとして構築しているところがオリジナル性があると思います。また、データベースから任意の景観要素を抽出させて、その景観を持つ学校をArcGISという地図表示システムを使用して、位置表示させて視覚的に把握できるようにしたところが情報学部らしいのではと思います。

市町村には、シンボルとして、花や鳥が定められていることがあります。それは校歌にはどのように反映していますか?

花はときどき校歌に盛り込まれていることがありますが、それほど影響力はなかったようです。また、動物という要素は校歌にあまり盛り込まれにくいようで、鳥を含めて、ほとんど校歌に反映されていなかったと思います。やはり校歌に盛り込まれる景観には広く地域の人々に認識されやすいもの(視覚的・イメージ的)が採用される傾向にあるようです。

静岡大学の浜松キャンパスに「校歌」を作成するとしたら、あなたはどのような言葉を織り込みますか?

景観要素に限って言えば、浜松に立地しているということで、“遠州灘”という言葉、それから“浜名湖”は織り込みたいと思います。それから浜松城も静岡大学浜松キャンパスに近い場所に立地していてシンボル的要素であると考えられ、織り込みたいと思います。

ただ、”大学”の校歌ということもあり、あまりローカルな要素をとりいれるのではなく、もっと視野を広げた歌詞を取り入れたほうがいいと思います。(とは言っても、すぐに思いつきませんが・・・)小学校・中学・高校・大学に入れるべき景観要素はそれぞれ異なると考えます。

卒業研究作成に当たって、もっとも苦労したことは何ですか?

集めた校歌からデータベースを構築することは大変でした。データベースソフトはMicrosoft社のAccessを使用したのですが、まったく扱ったことのないソフトでしたので、まず慣れることが大切でした。そこから景観抽出システムのプログラムも書いたのですが、“プログラムを書く”という行為を1年生以来していなかったので構造や書き方などもほとんど覚えていなくて試行錯誤の繰り返しでした。

しかもすぐに結果が出るわけではなく、システムエラーを繰り返しているうちは本当にできるのだろうか?という不安で気が滅入りそうになることもしばしばありました。

それから卒業論文として文章を書き上げる際にはなかなか言いたいことが言葉として現れてこなく、自分の文章力のなさに苦労しました。先生にご指導いただき、なんども添削をしていただいて、期限までになんとか仕上げることが出来ました。

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

技術的なことは何も言いません。精神的につらくなってくることがあります。なので、辛いときは友達と励ましあう。たまには息抜きもしましょう。だいたい計画をおぼろげに立てながら進めていくといいと思います。それから、わからないことがあったら、とにかく相談する!! 友達然り、先輩然り、先生にもどんどん質問をしにいったほうがいいと思います。

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

主査の西原先生には普段のときからほんの些細なことでも相談にのっていただいていました。システムを構築するときに「このようなシステムを作ってみてはどうか?」という助言もいただきました。

私は自分の論文にあまり自信がなく、できるかどうか不安だったのですが、先生には明確なビジョンがあるようで、適時明確なアドバイスをいただいたので、見えざる手によって気がつけば、論文ができていたという感じです。上手く誘導していただいて本当に感謝しています。

質問に訪れた際にはいつでも熱心に相談に乗っていただいたことも本当に感謝しています。

副査の八重樫先生からは、データベース(用語辞書)の基礎知識について学んだほうがいいというアドバイスをいただき、八重樫先生が受け持っていらっしゃるゼミに途中参加させていただき、用語辞書の概念(後に、自身のプログラム作成時に使用する)を学ばせていただきました。

情報社会学科で学んだことは何ですか?

なぜ情報社会学科に入学しようと思ったかというと、”いろいろなことが学べそう”と思ったからです。私は高3の時点で英語に興味がありました。しかし、これからの時代のことも考え、コンピュータにも興味がありました。また、社会で起こる現象を深く研究してみたいとも考え、社会学にも興味がありました。この3つの勉強の興味を一度にかなえてくれそうな学科が情報社会学科でした。
そして、実際にその3つを学ぶことが出来たのです。

英語の授業はコミュニケーションスキルズやリーディングスキルズ・リスニングコンプリヘンションなどで会話・読み・聞き取りをさらに深く学ぶことができました。また、TOEIC対策の授業も選択でき、私もその授業を選択し、TOEICにチャレンジしました。また、ロシア語を選択できたのもよかったです。

コンピュータに関しては、知識と実技を学ぶことができます。実技ではプログラミングに始まり、ExcelやPowerPointなども学びました。さらにはGIS、データベースなどさまざまな分野を学ぶことができます。

そのほかに心理学、都市学、経営情報学、コミュニケーション学などを1~2年のうちに学ぶことができました。

そして、自分の興味を持った分野(私の場合は、人文地理分野)について、さらに卒業演習という形で深く学ぶことができます。情報社会学科では3年から卒業予備演習というゼミ形式の授業が始まりましたが、そのゼミの内容も、1、2年のうちに幅広く学んだ内容から、自分の興味を持った分野を広く学べるよう、さまざまな演習(情報システム系、メディア系、社会学系、国際文化系など他にもいっぱい!)が用意されていて、選ぶのに迷ってしまうぐらいでした。

私が選んだ人文地理系のゼミでは、流行の地域的分散のシミュレーションを行なったり、土地区画整理事業についての住民の視点と行政との関わり方なども学ぶことができ、ソフト的・ハード的にも密度の濃いものとなり、とても充実していました。

このように、情報社会学科では、まず、1~2年で自分の興味ある分野を探すことができ、さらに3~4年ではそこから深く学ぶことができます。

しかも、興味ある分野を探すための窓口(授業内容)が多岐にわたっているため、「まだ何をしたいか具体的に見えていない」人にとっても、自分の視野を広げることができます。

指導教員講評
指導教員:西原純
Mさんの卒業研究は、小学校校歌の歌詞にある地名に焦点をあてて、住民の地域イメージや地域アイデンティティをさぐるという研究です。現在、平成の市町村合併が進み小学校が統合・新設されて、校歌が新しく作られていると聞いています。このように地元の人々にとって、小学校はかけがえのない存在で、校歌は地元地域の象徴です。

 Mさんの卒業研究は非常に魅力的なテーマですが、決して新しい研究テーマではありません。しかしながら静岡県を事例地域に選んだことで、富士山を校歌歌詞にもつ小学校が静岡県全体に広がっているという、静岡県の特異性もわかりました。やはり富士山は静岡県全体のイメージだったんですね。また伊豆地方は、天城山と狩野川をもつ小学校に大きく二分されます。天城山に思い入れをもつ地域と狩野川に思い入れをもつ地域が錯綜していて、私の研究室の伊豆地方出身の学生間で、どちらに思い入れが強いかで、激しい議論があったのはほほえましかったです。

 Mさんは、実際の校歌作詞者の方々に、どのようなプロセスで校歌の歌詞を考え、作詞していったかについても、インタビュー調査しました。そして校歌歌詞を集める作業で、静岡県内市町村の教育委員会のご協力を得ました。お陰様で、静岡県内全小学校535校の歌詞を集めることができました。

 またデータベース作成については、Mさんはマイクロソフト社のアクセスを使用しました。マイクロソフトアクセスは、他のマイクソフト系のアプリケーションソフトに比較して、システム作りが格段に難しいのですが、よく校歌歌詞データベースとして完成させたと思います。

 そして富士山でも、「富士の峰」、「不二が峰」、「芙蓉の峰」など表現にはさまざまな形があります。富士山を選ぶだけで、富士山を表している「表現」の全て検索できる「同義語の用語辞書」をもつシステムに完成できたことは、データベース構築の点でも非常に有意義だったと思います。

 さらに地理情報システム(GIS)ソフト ArcGIS を使って、データベースとGISを統合し、検索結果を自由自在に地図上に表示するシステムを作ったことも有意義だったと思います。静岡県内市町村教育委員会のご協力を得て完成させた校歌データベースなので、学校現場でも活用して頂けたらと思います。

 Mさんは、先行研究の精査、校歌作詞者へのインタビュー調査、校歌歌詞データの収集、データベースシステム作成、テーマ発表・中間発表・卒研発表会でのプレゼンテーションなど、多大な時間をかけ多くの苦労しました。しかし指導教員の私から見ても、Mさんの1年は実りの多い、うらやましい年だったと思います。

取材・編集:N(2005.3.20)

【私の卒業研究】Kさん「静岡県における主軸交通切断による影響」

(以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒業研究の内容を教えてく    ださい。

 卒業研究では、主軸交通という日本の大動脈と災害について、地理学的に考察し、静岡県における主軸交通の脆弱点を指摘し、今後取り組むべき課題を提言することを目的としました。

 論文の構成は、第1章では、静岡県の風土と先行研究を紹介し、本研究目的を述べました。
第2章では、旅客・貨物流動から静岡県と主軸交通の関係を考察し、主軸交通の現状を各交通機関別に述べ、東名高速道路と主要国道の交通量を図示しました。
第3章では、静岡県で想定される自然災害について述べました。
地震災害では、東海地震を想定し、静岡県の第3次地震被害想定の予想震度を基に主軸交通への影響を考察しました。次に、気象災害による主軸交通切断の事例から、東名高速道路と主要国道の通行規制の状況を図示しました。最後に、自然災害に対する諸機関の取り組みを紹介しました。
第4章では、新潟県中越地震における主軸交通の被害の概要や復旧状況、諸機関の対応について紹介し、中越地震から学ぶ被災時の主軸交通の復旧と地震対策について考察しました。
第5章では、以上から静岡県における主軸交通の脆弱点として、富士川河口部や浜名湖周辺等の危険箇所を要因別に指摘することができました。そして、災害による主軸交通切断の2次的な影響について考察し、諸機関の取り組むべき課題として、複軸による信頼性の高い交通ネットワークの構築や、ゆとりある交通容量の確保、交通と防災諸機関の連携の重要性について提言しました。

この卒業研究を書こうと思った理由は何ですか?

 静岡県は東海地震の危険性が危惧される地域であるとともに、日本の大動脈である第一国道軸に位置する交通の要衝になっています。私自身、度々新幹線や高速道路を利用しており、災害が起これば主軸交通どのような被害を受けるか多角的な視点から調べてみたいと思ったからです。

これまでの研究と比較して、あなたのこの研究の長所はなんだと思いますか?

 阪神大震災における主軸交通の切断による影響に関する先行研究は存在しましたが、静岡県を事例にした研究は静岡県が発表している第3次地震被害想定にとどまっています。そこで、縦割り行政・管轄の垣根を越えて、東名高速道路、国道1号線、東海道新幹線、東海道本線について、地震災害や気象災害といった自然的要因と交通量、交通容量や旅客数といった社会的要因から各主軸交通の現状と脆弱点を指摘し、地図上に表示しているところが成果であると思います。

また、2004年10月23日に発生した中越地震における主軸交通の被災と関係機関の取り組みを取り上げることができたことです。

静岡県やその他の組織が発表している災害予測と異なっているあなたの指摘は何ですか?

 災害は単独で起こるとも限りません。2次災害や別の要因による災害が多発的に起こることも考えられます。

静岡県は温暖なイメージがありますが、東部では毎年積雪があり交通に支障が出ています。また、濃霧や強風・高波といった普段あまり気にかけていない要因が意外に多いことや、交通容量に対して交通量が大幅に多くなっている区間を事故の危険がある為、脆弱点として指摘しました。

東海地震に対して、我々が備えておくべきことは何ですか?

 まずは身の安全を確保することが重要です。
家具や大型電化製品の地震対策は最も身近なことです。そして、普段から避難経路や避難場所について知っておくことです。その次に水や備蓄食料、被災時に情報を得られるようにラジオなどを用意しておくことです。

 最近世界各地で地震が多発し、地球規模で地震の活動期に入っていると考えられます。日ごろからいつ地震が起きてもいいように「備えあれば憂いなし」の精神で対策を講ずる必要があると思います。

卒業研究作成に当たって、もっとも苦労したことは何ですか?

 まず、データの収集に苦労しました。
本研究では国土交通白書や消防白書を始めとした役所の発行物のほかに、道路交通センサスや道路公団や国土交通省の内部資料を用いました。どのような種類のデータがどの様な形式で保管されているかも関係機関に問い合わせないと判らないので、データを準備するのに苦労しました。卒論の締切日にも依頼してあるデータが山のように届くような状態でした。当然、役所などの諸機関を訪問するわけですが、前もって勉強していかないと質問もできません。どこまでは理解できていて、何を聞くのか、どういったデータを必要としているのかをしっかり整理しなくてはなりません。質問する相手はプロですから、たくさんの専門用語も出てきます。話していただいた内容をどれだけ自分の物にするかが一番大切であり大変です。

 また、JRからは区間別旅客数や運休・遅延データが頂けなかったので、鉄道の詳細な分析に手をつけられなかったというのも苦労したところです。

 地図の作成では、どのようにすれば判りやすく見やすい地図になるかを工夫することに苦労しました。 最後に卒論本文を書き上げるのですが、これが一番苦労しました。章をどのように組み立てていくか、どのように結論に結びつけるか、それを裏付けるデータをどのように添付するか、本文の記述と平行して考えなければならなかったことです。何しろ時間が足りないので、最後の2週間はほぼ毎日徹夜状態でした。

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

 何をテーマとするかが最も重要なことです。
先生に薦められるテーマもすばらしいと思いますが、自分が日ごろ疑問に思っていることや知りたいと思うことを選ぶことが大切だと思います。興味の無い分野の本を読むことは億劫です。

自分の趣味をテーマに選ぶと、もっと知りたい、調べたいという欲求がでてきます。この姿勢がより深い研究につながると思います。

 もちろん私自身の選択においても個人的な趣向が大きく関係しています。例えば、海外の主軸交通の現状を見てみたかったので、ヨーロッパの高速道路をレンタカーで走ったり、TGVやユーロスターにも乗ってみて日本の主軸交通と比較してみたりしました。好きだからこそこのテーマに打ち込めた、という感じでしょうか。

修士課程まで進んだら、もっと広い視点からこのテーマに迫ることもできると考えていました。

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

 主査の岩崎先生からは主軸交通の脆弱点が地図で一覧できるように、きれいな地図を作るように指導を受けました。
副査の藤井先生からは全体的に判りやすく記述されているとの講評を受けました。

情報社会学科で学んだことは何ですか?

 情報社会学科にはあらゆる分野の先生方が居られるので、多くの基礎教養を身につけることができたと思います。また、3年次からは岩崎ゼミでGISと自然地理を、西原ゼミでは市街地再開発について学びました。多くの巡検にも参加し、様々な経験をすることができました。就職活動においても、この4年間で学んだことが自己アピールの一つとして役立ちました。

指導教員講評
指導教員:岩崎一孝

・テーマの独創性と重要性
東海地震を控えた静岡県における災害時の主軸交通への影響というテーマは、非常に需要であるが、他地域の先行研究が少なく、また資料の収集が大変なことから、これまであまり取り上げられなかった。この重要なテーマをあえて取り上げた点を大いに評価したい。

・多くの時間と手間をかけて収集した豊富な資料
日本道路公団、国土交通省総合政策局や中部地方建設局、JR東海などを足繁く訪問して、静岡県主軸交通に関する膨大な統計資料を収集した。この資料収集だけでもひとつの大きな功績と言える。

・豊富な資料および災害実例を基礎とした分析
上記の豊富な資料に加え、2004年10月に発生した新潟県中越地震の災害資料をも入手して静岡県の主軸交通への影響を分析したことにより、とても説得力ある考察と地震対策への提言をすることができた。

・図表などビジュアル面での表現工夫
交通関係などの資料を、単に統計処理して表にまとめることにとどまらず、GISソフトを活用して、地図など見やすく説得力ある手法で表現できている。このことにより、専門分野の異なった人にも容易に理解できる論文になっている。

取材・編集:N(2005.3.20)

【私の卒業研究】Rさん「まちづくりとしての地域イベント --大道芸ワールドカップを例として--」

      (以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒業研究の内容を教えてください。

 私の卒業研究では、愛知万博や浜名湖花博のように、地方公共団体が実地しているイベントに焦点をあてています。私たちの日常生活において「イベント」というものは、思っている以上に様々な所や場面で行われています。アーティストによるライブやコンサート、スポーツの試合もイベントであり、自治会で行うフリーマーケットなどもイベントなのです。人が何かの目的をもって集まればイベントになります。そう考えると、現代の社会はイベント化社会といっていいほどに、イベントが氾濫しているのです。

 今回は、多様に開催されているイベントの中でも、地方公共団体が行う「地域イベント」に注目しました。今日、地方公共団体もこぞってイベントの開催に躍起になっています。自分の住んでいる町や市のホームページでイベント情報をみれば、特にイベントの多さを感じることができるでしょう。しかし、地方公共団体が行う様々なイベントは本当に地域住民や地域自体によい効果を与えているのでしょうか。私たちの知らないうちに開催されているイベントも多くあり、また開催しても人が集まらない、地域に定着しない、費用に見合う効果が出ているようには思えないなどといった問題を抱えているイベントがほとんどだと思います。

 そこで、私はどのようにすれば、地域イベントをより効果的に行えるのか、そしてまちづくりにつなげていけるのかということを、静岡県静岡市で開催されている「大道芸ワールドカップ」を例にすることによって考えました。

 この「大道芸ワールドカップ」というのは、1992年より開催されているイベントであり、費用の半分以上を静岡市が出している地域イベントです。このイベントは毎年200万人近い来場者を集めており、静岡市に様々な影響を与えている、地域イベントとしては成功例といえるイベントです。この大道芸ワールドカップに実際にボランティアスタッフとして参加し、様々な人やまちを調査しました。

 その結果、地域イベントに必要なのは「市民力」と「市民力引き出す運営」であると感じました。ただ、人を集めたいだけなら、お金をかけて有名な人を呼んだり、派手なパフォーマンスをすれば、人は集まります。しかし、地域イベントには求められているものは、それだけではなく、イベント自体がいかにまちに影響力をもつかということです。大道芸ワールドカップではその運営はすべてボランティアの市民の力であり、当日のボランティアの数は1000人に上ります。また、商店街や地元企業など地域全体がイベントに関わっているのです。それによって、イベントはより大きくなり、市民がイベントに参加することによって、まちも変わるという好循環を生み出しているのです。
そして、この好循環を生み出しているのが「市民力を引き出す運営」なのです。

この卒業研究を書こうと思った理由は何ですか?

 私は大学時代、静大祭や駅伝祭という学校のイベントの運営に大きく関わってきました。そのため、イベント開催の難しさ、そして楽しさを身をもって感じました。このイベント運営を通して、イベントのもつ力にも非常に興味を持ちました。イベントというのは、テレビやインターネットと違い、多くの人と時間と場所を共有し、五感をフル活用して楽しめるものです。好きなアーティストのライブに実際に行き、その声を生で聞いて、体が芯から震えるような気持ちを感じるようなものです。私はこういったイベントの魅力に惹かれてしまい、卒業論文はなにかしらイベントに関わるものをと考えていました。そして、企業が行うイベントやスポーツイベントなど、様々な題材を考えてきましたが、最も興味を持ったのが、大道芸ワールドカップなのです。大道芸ワールドカップに参加し、本当に楽しい・面白いと感じました。それと同時に、自分の地元のイベントはなぜ、この大道芸ワールドカップみたいに面白くできないのだろうとも感じました。この考えが私の卒業研究の題材選択の原点です。

これまでの研究と比較して、あなたのこの研究の長所はなんだと思いますか?

 やはり、実際に大道芸ワールドカップのボランティアスタッフとして参加し体感したことにあると思います。また、商店街の会長さんや大道芸ワールドカップの実行委員長やプロデューサーにインタビューをし、当日はボランティアスタッフや、来場者など様々な人の話を聞いたことによって、新たな見方を発見することに繋がったと思います。

共同体にとって、イベントはどのような機能を果たしていると考えましたか?

 もっとも大きな機能は人と人を結びつけ、情報交換できる機能であると考えます。イベントに参加することによって人と人のつながりを築きます。人のつながり、新たな力の原点になるのです。そして情報交換することによって、イベントからのメッセージが共同体に広まっていくのです。

静岡大学の学生にとって、学園祭が大きなイベントになりますが、そこに人をたくさん呼ぶにはどうしたらいいと思いますか?

 私は、大学時代に大学祭の運営に関わっておりましたが、静大祭in浜松は毎年多くの来場者を集めていると思います。それは、毎年の宣伝活動などのたまものだと思っています。また、静大生も模擬店やフリーマーケットやテクノフェスタなど、自ら盛り上げ側として参加してくださる人が多く、このこともまた、多くの人を集める要因になっていると思います。運営側だけで、大学祭を作っていくのではなく、多くの静大生を巻き込むことによって、大学祭がより楽しめるイベントに成長するのです。また、運営側もただ人を集めるだけではなく、どのようにするばもっと楽しんでもらえるのか、そして、学生の盛り上げ役への参画を効率的に促すことができるということを考える段階へ進んでいると感じます。

 このことは、私が調査した地域イベントにも通じるところがあり、人の参加を促す運営方法が大学祭の運営においても必要になっているのです。

卒業研究作成に当たって、もっとも苦労したことは何ですか?

 卒業研究作成を通して、自分の力不足を様々な点で感じました。挙げるときりがありませんが、特に客観分析には苦労しました。

 実際に大道芸ワールドカップのボランティアスタッフとして参加していたため、油断しているとどうしても考え方が大道芸ワールドカップを擁護する考え方になりがちでした。特に考えを文章にまとめる際は苦労しました。

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

 卒業研究というものは、自分が興味をもったことを自分の力で掘り下げることができます。しかし、たとえ、興味があることでも自分の力が足らず、題材を変えなくてはならなくなることもあります。そのため、右往左往し、結局は無難な卒業研究に収まるという人も少なくありません。私も、イベントについてもっとこういう風に調べたいと思ったことは何度もあり、そのたびに自分の力のなさを感じてきました。そのため、是非後輩のみなさんには、1~3年の間に様々な力をつけ、自分の興味を持ったことを自分が満足するまで掘り下げて研究に打ち込んでほしいと思います。その研究が文章にまとまったときは、ひとしおの感動を感じることができるはずです!

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

 副査の西原先生からは実際に人の中に入り調査した点は興味深いというお言葉を頂きました。反面、具体的なデータからの分析が甘いというご指摘も頂きました。

情報社会学科で学んだことは何ですか?

 情報社会学科では様々な考え方を学びました。1~2年生の間は国際報道やジェンダーや地域社会など、本当に様々な分野を学び視野を広げることができました。3年生ではメディアと社会のコースに入り、マスメディアなどを本格的に学んできました。

 情報社会学科では、この情報が氾濫する時代に本当に必要となる視野の広さを身につけることができたように思います。

指導教員講評
指導教員:井川充雄

 Rさんは、毎年、静岡市で開催されている「大道芸ワールドカップ」を例に地域イベントの意義を考察しました。
Rさんの卒業研究の特徴の1つは、地域イベントを経済効果の側面からではなく、「まちづくり」の側面から捉えようとしたことです。花博や万博といった巨大なイベントから、町の小さなイベントまで、今日さまざまなイベントが行われていますが、こうしたイベントはえてして、収益や観客の動員数、インフラ整備の促進など経済効果から考えられがちです。しかし、Rさんは、そうではない側面、つまりそうしたイベントが、それに参加する地域住民や商店街、ボランティア、地元企業などのコミュニケーションを促進させ、それが「まちづくり」にとって重要であるということを示しました。

 Rさんの卒業研究の特徴のもう1つは、「大道芸ワールドカップ」に自身がボランティアとして参加する中で、上記の問題意識をふくらませ、卒業研究にまとめたということです。こうした研究方法は、参与観察といいますが、決して中途半端な気持ちでできるものではありません。時間と労力が大変かかります。Rさんは、半年以上、ボランティアとして参加しながら、多くの方々から話を聞きました。これは、文献などからは得ることのできない貴重なものです。Rさんは、以前から、大学祭の運営でリーダーシップを発揮してきましたが、そうした体験も卒業研究でも随所に活かされています。そのおかげで、Rさんの卒業研究は、他の人には決して真似のできないオリジナリティにあふれるものに仕上がりました。対象に積極的にアプローチするRさんの姿勢は高く評価されます。

 もちろん、卒業研究をまとめる過程では、ゼミのメンバーから出された意見や疑問に真摯にこたえながら、着実に論文を作り上げることができました。そのおかげで、自己の体験に基づきながらも、客観性のあるものに仕上がったと思います。

取材・編集:N(2005.3.20)

【私の卒業研究】Sさん「新聞の国際報道の現状と課題    -アテネオリンピックに関する記事の日米比較から-」

(以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒業研究の内容を教えてください。

 私の卒業研究は「新聞の国際報道の現状と課題-アテネオリンピックに関する記事の日米比較から-」というテーマです。簡単に説明すると、2004年の8月にギリシャのアテネで行われた夏季オリンピックを題材に、日本の新聞とアメリカの新聞を比較するという研究です。日本の新聞とアメリカの新聞が「アテネオリンピック」という同じ題材を取り上げたとき、その報道の内容や方法に違いが現れるのか、そこから新聞の国際報道における現状や問題点を見つけ出し、自分なりに今後の新聞の国際報道の課題を考察したものがこの論文です。

    

 実際に私がこの研究で行なったことは、2004年8月12日~31日までの、アメリカの新聞(The Washington PostとThe New York Timesの2紙)と、日本の新聞(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の3紙)からアテネオリンピックに関する記事をすべて収集しました。さらにそれらを新聞ごとにExcelを用いて表にして項目ごとに集計し、新聞社同士、日米間において比較分析しました。先行研究などとも照らし合わせ、新聞の国際報道の現状を知り、そこから今後の新聞の国際報道の課題を考察しました。

この卒業研究を書こうと思った理由は何ですか?

私が受講していた「国際関係論」という授業で、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロを取り上げたことがありました。その中で、アメリカの報道する同時多発テロと、カタールの衛星放送アルジャジーラが報道する同時多発テロではその内容が大きく異なっていたという事実を知りました。これはどういうことかというと、アメリカの報道ではテロの悲惨さなどを強く訴え、戦争へ向け国民感情を煽るような報道をしていたということです。

 同じ「同時多発テロ」という題材を報道していても、取材する側の国や文化、立場などにより、報道の内容が大きく異なるということを知りそこに興味を持ちました。まず、取材する側の違いによって生じる報道の内容の違いを知りたいという願望からこの研究を始めました。

これまでの研究と比較して、あなたのこの研究の長所はなんだと思いますか?

まず挙げられるのは、実際に日本の新聞とアメリカの新聞の記事を収集し、読んで分析したことだと思います。研究を始める前は、記事を集めるのはオリンピック開催中とその前後の20日間だったので、それほど量はないと思っていたのですが、実際に集めてみると、日本の新聞では各紙とも500近い記事が、アメリカの新聞では各紙とも300前後の記事が集まりました。小さな記事も多く含まれますが日米合わせて2105の記事数になりました。これらの記事をすべて表に入力していくのだけでもかなりの時間をついやし、大変苦労した点でもあります。しかし、多くの記事を集めたことにより、母数が大きくなったため、分析結果は特定の記事に左右されることなく、信頼できる数値になったと思っています。

 また、アテネオリンピックは2004年に開催されたばかりであり、他の方が研究していないだろうという長所もあると思います。オリンピックの研究は先行研究がたくさんあると思いますが、アテネオリンピックについては現時点であまり研究されていないと思います。私が卒業研究に取り組むまさにその年がオリンピック開催の年であったことはとてもタイムリーだったと感じています。

日本の新聞を読むときの態度・視点において、あなたの中で変わったことはありますか?

 大学に入ってから一人暮らしを始めたとき、実は私は新聞を購読していませんでした。私にとって、世の中のニュースを知るときは、テレビとインターネットが主な情報源です。印刷や配達のことを考えると、特に即時性という面で新聞はテレビやインターネットに勝つことは出来ません。これから先、インターネットの普及により、新聞はその存続さえ危ないのではないかと考えていました。

 それでも新聞がなくならないのは、「新聞に掲載される記事の信憑性が非常に高い」ということなのではないかと考えるようになりました。テレビやインターネットで流されるニュースは言わば使い捨てのニュースです。人々がそこから情報を得たらそれで役目は終わります。しかし、新聞は図書館に保存され、半永久的に残り、様々な人の研究対象として利用されます。印刷物として紙媒体で残り続けるということは新聞の他のメディアにはない特色の一つだと思います。保存されるメディアとして、新聞はいい加減な情報を掲載する訳にはいかないということです。もちろん他のメディアだからといって信憑性の無い情報をながしていいという訳ではないのですが。

 この研究をするようになってから、新聞の生き残りにより一層興味を持つようになりました。新聞は紙媒体のメディアだという特色に甘えることなく、内容の面でも速報性のあるテレビやインターネットの情報に負けないように、時間をかけて書く深い洞察力を持った記事を掲載して欲しいと思います。

卒論で取り扱った日米の新聞の記事の中で、特に印象に残ったものは何ですか?

やはり「競泳の北島康介の「泳法違反」に関する記事」です。北島はみなさんご存知の通り、100、200メートル平泳ぎで2つの金メダルを獲得するという偉業を成し遂げました。日本では北島の活躍を多く取り上げ、その栄光をたたえる記事が多く見られたのですが、アメリカの新聞はそうではありませんでした。アメリカの新聞では北島の「泳法違反」に注目し、北島を批判するような記事が多く見られました。

 同じ北島を取り上げていても、日米において取り上げられ方に大きな違いが見られおもしろいと思いました。正に私が見たかった「報道内容の違い」を見ることができた訳です。

あなたにとって、新聞の個性とは何ですか?

 今回読んだ日本の新聞では読売新聞と朝日新聞が特に似ていました。使う写真の構図だったり、取り上げる記事に違いがあまりなかったりということです。同じような内容の記事ばかり並んでいるのなら、どの新聞を購読しても同じになってしまいます。これから新聞が生き残って行くためにも、独自の切り口からの記事や、取り上げる記事の選択にもその新聞社独自のものを多く取り上げて、新聞社の特色をもう少し前面に押し出してもよいのではないかと思います。

卒業研究作成に当たって、もっとも苦労したことは何ですか?

 やはり記事の収集とその記事を表にして分析したところです。記事数の多さでも苦労しましたが、アメリカの新聞においては慣れない英語を読むという作業が加わり、さらに時間を費やす結果となりました。

また、最後に結論として、今後の新聞の国際報道の課題を考えるところで、今までの先行研究にはないような独自の視点はないかと考えるのも苦労した点です。

卒業研究を進めるに当たって、後輩に何かアドバイスはありますか?

 私が卒業研究を進めるにあたって、主査の先生がおっしゃられた「卒業研究は大学4年間の締めくくりになるもの」という言葉がずっと忘れられないでいました。記事の多さに圧倒されて、どれだけ研究対象の新聞の数を減らそうと考えたことか……。でもここで妥協したら私の大学4年間を否定することになると思って、妥協はしませんでした。結論に行き詰まったときも何日もパソコンの前に向かっていろいろ考えました。

 卒業研究は大学4年間の集大成として一生残るものです。自分が大学で学んだことをフルに詰め込んで、自分で納得のいく卒業研究を仕上げてください。頑張った後には卒業研究という実際の物と、達成感という目に見えないモノを手に入れることができると思います。

主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか?

 収集・分析した記事の多さは評価していただきました。
足りなかった点としては、量的に分析はできたが、もっと深く記事の内容をひとつひとつ分析することができたらよかったという指導を受けました。

情報社会学科で学んだことは何ですか?

 情報社会学科では幅広い分野の勉強ができたと思います。コンピュータの初歩的な技術を身につけたり、プログラミングをしたりするなど、技術系のことも勉強できましたし、心理学や経済学、英語、文化、言い出したら切りがないほどたくさんの学問を学ぶことが出来ました。これだけ多くの分野があると、自分の興味がある分野が必ず見つかると思います。

 情報社会学科の先生方は、各々の分野に精通している方が多くいらっしゃるので、1・2年の授業で自分がもっとも興味を持った分野の先生のゼミに入れば、その分野についての深い知識を得られると思います。

 また、人との出会いにも恵まれました。情報社会学科に入って本当によかったと思っています。

指導教員講評
指導教員:井川充雄

 Sさんは、昨年開催されたアテネオリンピックを題材として、新聞の国際報道の分析を行いました。
今日、「情報のグローバル化」という言葉をよく耳にします。確かに、インターネットを使えば、世界のさまざまな情報に接することができます。また、テレビなどのマス・メディアにも、世界各地からの映像が飛び込んできます。しかし、その一方で、情報とナショナリティ(「国民」性)は密接な関係があります。特に新聞やテレビといったマス・メディアは、基本的に国家の枠内で活動するため、ナショナリズムが発露する場にもなりやすいという特徴を持っています。

 Sさんは、9.11の同時多発テロ以降、国際報道に強い関心を持ってきたそうです。そして卒業研究でも、そうした問題関心に基づいてテーマを選択しました。オリンピックというのは、一見、テロや戦争と違う平和の祭典です。しかし、選手は国を代表して出場する以上、ナショナリズムが発揚する空間でもあります。したがって、その報道の仕方は、国によって違うのではないかというのが、Sさんの出発点でした。

 研究方法は、いわゆる内容分析というものです。実際の紙面から関係記事を抽出し、その分量や内容の傾向などの特徴を比較します。実際、Sさんは、アメリカの新聞2紙(The Washington PostとThe New York Times)と、日本の新聞3紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞)を対象としましたので、半月余りの新聞記事といっても膨大な量になります。しかも、英語の新聞も含むわけですから、オリンピックに関係する記事を抽出するだけでも大変だったと思います。しかし、そうした基礎的な作業をいとわずに行ったおかげで、Sさんの卒業研究は、実証性に富んだ重厚なものに仕上がりました。

 このようにして、Sさんは、自分なりの問題意識を出発点にして、情報学部で学んだ知識や技術を活かしながら、仮説を立て、データを集め、分析を行いました。こうした卒業研究のプロセスは、後輩のみなさんにも、ぜひ見習ってほしいと思います。

取材・編集:N(2005.3.20)

【私の卒業研究】NYさん「静岡県における地区販売会社の営業拠点配置モデルとシミュレーション分析」

(以下の記事は、情報社会学科が2学科制の際の【私の卒業研究】です。現在の3学科制の情報社会学科とは扱う内容が一部異なりますが、参考までに掲載します)

卒論の内容を具体的に紹介してください。

テーマは「静岡県における地区販売会社の営業拠点配置モデルとシミュレーション分析」です。

大手メーカーがナショナルブランドの販売網を形成するために販売エリアを分割した際、その分割された各単位地域を管轄し、卸売・小売会社としての役割を担っているのが地区販売会社です。地区販売会社が営業拠点をどのように配置して、いかに効率的な営業活動を行なうかということが企業にとって重要な要素になると考えました。

そこで卒論では、地区販売会社における営業拠点の配置地点を予測できるモデルを提示しました。

本研究では、「モデルにより導き出される<理論上の営業拠点配置形態>」と、「実際に企業にアンケート調査を行うことで把握する<現実の営業拠点配置形態>」を対比し、構築したモデルが有効であるかどうか分析しました。

具体的にはどういうことでしょうか?

 研究のメインとなるモデルは、「需要量」と「営業効率」の2要素が規定要因となっています。「営業効率」とは、営業活動に伴うコストの大小を指します。営業活動の訪問先が営業拠点から離れるほど営業員の移動時間が長くなって移動費用もかかるため、効率的な営業活動ができなくなるという考え方です。
以上のことを踏まえて、このモデルでは「人口」「道路距離」の2つの指標を用います。

 構築したモデルについて、実際のデータ(静岡県74市町村の人口、市町村間の道路距離)を用いてシミュレーションを行いました。同時に、先行研究で提示されている既存モデルについてもプログラミングしシミュレーションを行ないました。その結果、既存モデルに比べ、本研究で構築したモデルの方が現実状態によりよく適合しており、モデルの有効性が実証されました。

この卒論を書こうと思った理由は何ですか? あるいは、この研究を通して、何を知りたかったのですか?

 3年次のゼミで日野正輝『宮城県における「地区販売会社」の事業所の配置形態』という論文を読んだことがきっかけです。
論文内では、事業所の配置メカニズムが計算式のモデルで表されていたので、モデルをプログラミングしてシミュレーションを行なったのですが、論文は対象地域が宮城県だったので、もっと身近な地域である静岡県を対象としてモデルのシミュレーションを行ない、モデルの有効性について分析したいと思いました。また、論文内で提示されていたモデルを改良してより精度の高いモデルを構築したかったこと、更に私自身プログラミングが好きだったことも、このテーマを選んだ理由の1つです。

 研究の目的は「企業にとって合理的な営業拠点の配置形態を予測できるモデルを構築する」ということだったのですが、最初は、世の中に数多くある企業の拠点配置行動をモデル化すること自体可能なのか、たまたま宮城県でモデルの実証がうまくいってしまったのではないかと心の中で疑っていました。本当にモデルを用いて拠点配置形態を予測できるのかということが、実は最初に知りたかったことです。最終的にモデルを導き出すことが出来たので良かったです。もし出来てなかったら「拠点配置メカニズムのモデル化は不可能である」という結論にでもなっていたんでしょうか。

これまでの研究と比較して、あなたの研究はどんな点が優れていると思いますか?

 これまでの研究で提示されてきたモデルは、「1つの企業は、1市町村内に1拠点しか配置しない」という条件を設定していますが、実際には市場規模の大きい市町村には複数の拠点を配置しています。先行研究でモデルを検証する際にも、同一市町村内への複数拠点の配置が課題であると指摘しつつもそれを考慮したモデルは構築されてきませんでした。

 この卒論では、同一市町村内への複数拠点配置が可能なモデルを提示できたことが最大のポイントです。これにより、より実用的なモデルになったと思います。

卒論を作成する過程で苦労したことはなんですか?

 最も苦労したのは、企業へのアンケート調査です。実際に静岡県内の地区販売会社はどのような営業拠点の配置形態をとっているのか、どのような要素を考慮して配置地点を決定しているのかということを把握するためのアンケート調査だったのですが、まずアンケート票を作成する段階でつまづきました。

 単純に「営業拠点の所在地はどこですか」、「どんな事を考慮して配置地点を決めますか」という質問だけではなく、その背景にある事情(地区販売会社全体の販売エリアや、営業活動の内容等)を捉えるためにどのような質問をすればよいか、とても悩みました。

 アンケート票が出来上がって、実際にアンケートを行なう段階になったら、今度はアンケートを行う企業を探すのに苦労しました。自動車の販売会社は数多くあるのですぐに見つかりましたが、家電や事務機器等の販売会社がなかなか見つからず、その結果、アンケートの対象業種が自動車に偏ってしまいました。

 また、アンケートを行なう上で企業1社1社に電話で依頼をしたのですが、とにかく緊張してしまい、特に最初のうちは、心の準備を10分して、電話をし終えたらまた休んで…という状態の繰り返しでした。こんな具合で、アンケートに関する作業は何から何まで大変でした。でもよい経験になったと思います。

あなたがこの研究を作成した後に、企業のどのような点を見るようになりましたか?

直接研究内容とは関係ないのですが、今回アンケート調査で色々な企業と折衝する機会があり、どの企業においても、まず総務課の方に応対していただきました。ほとんどの企業の方が親切に対応して下さいましたが、中にはそうでない企業もありました。

私は調査に協力していただく立場なので偉そうなことは書けませんが、企業の中でお客様にとっての窓口としての役目を担う立場というものを考えさせられました。

私自身、就職後は接客の機会が非常に多くなるので、今回の教訓を活かし、お客様の気持ちをよく考えて行動できるようになりたいと思います。

主査・副査からどのようなコメントをもらいましたか?

卒論を無事提出し、発表会が終わった後には「皆よく頑張りました」と声を掛けていただき、一方で「モデルの指標に加重平均をかければ更に実用的なモデルになる」といった、今後につながるアドバイスをいただきました。

私の作業がなかなかはかどらないので、先生にはご心配をお掛けしたと思いますが、最後まで丁寧に見ていただき、本当に助かりました。ありがとうございました。

卒論を書くに当たって、後輩に対するアドバイスはなんですか?

当り前のことなのですが、作業を先延ばしにすると大変困ったことになります。例えば先程述べたアンケート調査にしても、「今日は気が乗らないから電話依頼は明日にしよう」ということをしていると、アンケート回収が12月頃までかかり、焦って集計することになってしまいます。

後から「時間が無い!」と騒ぐ事になるのは分かっていても、忙しければ忙しいほど現実逃避したくなるのが人の常です。負けずに頑張りましょう。

情報社会学科で学んだことは何ですか?

情報社会学科の授業では、1年次に習得したタッチタイピングに始まり、webページ作成、プログラミング、データベース、GIS等、様々な分野において基本的なことを学びました。

特に、これらは演習形式の授業が多かったので、技術も身についたし、友達と教え合ったりすることでより知識を深めることができたと思います。

指導教員講評
指導教員:西原純

 NYさんは、高校時代には理系クラスに所属していたそうで、元々、目標課題をいくつかのステップに分けて考えることが上手で、しかも高いプログラミング能力も持っていました。

 私の研究テーマである都市システム論の分野では、県域レベルでのメーカー・商社の販売拠点配置が都市群の階層と都市群ネットワークを構成していることが知られていました。そこで、メーカーや商社の販売拠点の配置がどのように決定されているかが、非常に重要な研究課題でした。また企業側からみても、新たに販売網を展開する際に、どの都市からどのような順序で拠点を置いていくかは、重要な経営課題です。

 この県域レベルでのメーカー・商社の販売拠点配置モデルとして、東北大学の日野先生による日野モデルが最も先駆的なものでした。しかし企業の業種によっては、需要量が大きい大都市では一つの企業でも複数拠点が配置されて、実際の配置とモデルによるシミュレーション結果が一致しない場合がありました。NYさんの研究は、この点について、他の研究事例をもしっかりと精査して、モデルの改良を試みた研究でした。

 私の研究室での卒業研究の進め方は、毎週毎週の卒業研究セミナーで、先週1週間の作業報告を行なって、それに対してお互いの意見を出し合っていき、次の1週間の方向性を決めていくという方法をとっています。NYさんは、そこで出された新しいアイディアを、新しい改良モデルとして、次の週にプログラミングし、シミュレーション結果を報告できる能力がありました。

 またモデル構築・シミュレーション分析とともに重要なのが、実際のメーカー・商社の地区販売会社へのアンケート調査です。アンケート調査に先立ち、まず電話で調査を依頼し、次に実際に訪問して調査票を預け、後日、回収するという作業を繰り返しました。アンケートの集計・分析で出てきた疑問点をさらに回答企業に問い合わせたりして、たいへんだったと思います。

 他の研究では、とかくモデル構築・コンピュータシミュレーション分析では、企業の実際の事情に注意を払わない場合が多くあります。しかしNYさんは、企業に実状をふまえたモデル構築・コンピュータシミュレーション分析を行い、足が地に着いた研究を行うことができました。

 さらにNYさんは、モデルによるシミュレーション結果を現実と比較し、自分のモデルを評価する手続きを非常に厳密に行いました。一般に、モデル構築・シミュレーション分析では、その結果の評価がおろそかになりがちです。その意味でも、NYさんの研究は高く評価できます。

 このように、NYさんの研究成果は、実際に静岡県以外の県におけるメーカー・商社の地区販売会社配置にも高い精度で適用可能で、応用範囲が広く有用なものだと思います。

取材・編集:N(2004/03/26)