接合部設計に資する材料特性値の解明
木質接合部を設計するにあたり,材料の力学的な特性値を明らかにする必要があります。特性値は力学試験を実施することで得られるのですが,試験するたびに数値が異なったり,ばらつきが大きかったりします。木質接合部の耐力性能をより正確に把握するためには,これらの原因を明らかにしなければいけません。現在,木材の加工条件が試験結果に及ぼす影響の解明や,鋼材の変形を考慮にいれた設計式の展開を主なテーマとして,木質構造の設計規準に採用されるような知見の獲得を目指しています。
新規デバイスの開発による接合部内部の応力の測定
地震や台風などで木質接合部に外力が与えられると,接合部内の局所では様々な方向に力が作用します。これが木材の割裂破壊の原因となり,接合部の耐力性能が低くなってしまいます。そこで,割裂の原因となる力がどれほどなのかを明らかにする必要があります。しかしながら,従来の測定装置では極めて困難です。当研究室では新たな応力測定デバイスの開発を試みています。開発したデバイスを用いることで,接合部での割裂発生メカニズムの解明につなげます。
高耐力木質接合部の開発
近年,中大規模建築物の木造化に社会的な関心が高まっています。このような建築物では一般的な住宅と異なり,より優れた耐力性能を持つ接合部が必要になります。当研究室では接合部の高耐力化につながる技術開発を模索しており,現在は,木材の樹脂含浸技術に着目しています。予め木材細胞の空隙を樹脂で充填させることで,局所的な圧縮に対する抵抗力を高め,接合部の耐力を向上させています。各種力学試験を通して,耐力性能や破壊性状を解明し,実用化に向けた知見の獲得を目指しています。
木質接合部の性能評価方法の検証
木質接合部の耐力性能評価は古くからの関心事です。耐力性能評価にあたっては,オーソライズされた工学的手法があるのですが,工学的であるために必ずしも木質接合部の力学的応答の全てを表現しきれたものではありません。当研究室では,工学的に得られる評価結果と,真に測定される力学的応答との違いについて研究しています。例えば,接合部を組み立てる際の各種条件が工学的評価結果に及ぼす影響を調べたり,降伏点と残留変位との関係を解明したりしています。これらの知見を集約して,より優れた評価方法の提案につなげます。
木材の建築利用による環境優位性の検証
木材は二酸化炭素が固定されて生成される材料です。これを建築材料として長期間使用することは炭素排出の抑制につながります。その一方で,木材を建築利用する場合には,伐採,運搬,乾燥,加工等で多くのエネルギーを消費します。木材が炭素排出の抑制に真に貢献しているかを把握するためには,固定量から排出量を差し引いた正味量を知る必要があります。当研究室では,官民を含めた組織と協力して製造工程における炭素排出量を測定しています。さらには,排出の内訳を調べることで,より環境負荷が低い製造方法の提案につなげます。