研究テーマ

住環境構造学研究室で近年取り組んでいる主な研究テーマを紹介します。

 

直交集成板(CLT)の面内接合部の開発

大規模なCLT工法建築物を実現させるためには,CLT同士の面内での接合が欠かせません。これに向けて,当研究室ではダンベル型接合具の開発に取り組んでいます。これは少ない接合具数でCLTパネル同士を接合するため,建築物の意匠性の向上が期待できます。また,パネル間のせん断変形時に生じる離間の抑制にも期待できます。当研究室では,せん断試験によりこの接合部の耐力性能の解明を目指しています。

【青木日香,小林研治:鋼板挿入によるCLT接合方法の研究.日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸),22072,2019年9月】

 

斜め打ちしたビス接合部の引き抜き抵抗性能

CLT工法建築物における効率的施工が可能な接合方法として,長尺ビスの斜め打ちがあります。これは欧州をはじめとした海外では実績のある方法です。地震や台風等により接合部に外力が作用した場合,CLTからビスが引き抜ける力が働くため,引き抜き抵抗性能の把握が必要です。当研究室では,国産スギCLTを対象として,様々な角度・打ち込み面でビスの引き抜き試験を実施し,打ち込み角度等の影響の解明に努めています。

【篠原朋樹,小林研治,小川敬多,田中 孝:直交集成板のビス引き抜き性能における打ち込み角度の影響.第70回日本木材学会大会要旨集,H16-06-1115,2020年3月】

 

鋼板挿入ドリフトピン接合部の割裂補強

鋼板挿入ドリフトピン接合は外力に対して,ドリフトピンが曲げ変形しながら抵抗し,一般的に高い靭性を有しています。しかしながら,部材寸法や端距離等の条件によっては,木材が割裂し,接合部は脆性的に破壊してしまいます。これを防ぐために,予め割裂が生じそうな箇所を長尺ビスで補強する方法を考案しました。接合部の力学試験により補強効果を解明するとともに,長尺ビスが負担する応力を測定して補強メカニズムの解明に努めています。

【松永大輝,小林研治,外西匡平:集成材を用いた鋼板挿入ドリフトピン接合部におけるビスによる割裂補強.第69回日本木材学会大会要旨集,H14-08-1545,2019年3月】

 

釘接合部のせん断性能評価における試験方法の違いの影響

木材と合板の釘接合部のせん断性能を調べる標準な試験方法は複数存在し,日本の規格と海外の規格,林産系資料と建築系資料などでは試験体仕様などが異なる場合があります。試験方法が異なることによる評価結果の違いを定量的に明らかにすることで,現在は個々に扱われている既往の研究成果を有効活用できると考えています。本研究では,各標準試験により得られた結果の比較に加えて,評価結果の定量的な違いを説明する解析モデルの構築にも取り組んでいます。

【Ogawa Keita: Comparison of evaluation results of nailed joints in shear properties obtained from two methods. Wood and Fiber Science, 51(4):441-447. 2019】

【渡邉直希,小川敬多,小林研治:試験方法の違いが釘接合部のせん断挙動に与える影響.2020年度日本建築学会大会(関東),22073,2020年8月】

 

含浸型WPC処理による木質接合部の高耐力化

多くの木質接合形式において,外力が作用した場合には木材の局所的なめり込みが生じます。これをミクロに見ると,当該箇所では木材細胞が圧潰しています。予め細胞内を樹脂で含浸すればこの圧潰を防ぎ,めり込みに対する抵抗が高まると考えました。当研究室では,ボルト接合部等の試験体に対して含浸型WPC処理を施し,力学試験によって接合性能の向上効果を調べています。この研究は,あいち産業科学技術総合センターと共同で実施しています。

【Ogawa Keita, Fukuta Satoshi, Kobayashi Kenji: Experimental study of lateral resistance of bolted joints using Japanese cedar (Cryptomeria japonica) treated with resin impregnation. Journal of Wood Science, 66:71. 2020】

 

繰り返し荷重条件における釘・ビス接合部の力学挙動解析

合板と木材の接合に釘やビスを用いることが多々あります。これら接合部では地震や風などによって何度も外力が作用するので,繰り返し荷重条件下における耐力性能を把握することが必要です。釘・ビス接合部は荷重の繰り返し数が増大すると,耐力が低下することが知られており,その原因として釘・ビスが疲労することが考えられます。本研究では,釘・ビスの疲労特性を考慮に入れた解析モデルを構築し,繰り返し荷重条件下における接合部の力学挙動の理論的な推定を試みています。

【Nagase Ko, Kobayashi Kenji, Yasumura Motoi: Estimation of failure lifetime in plywood-to-timber joints with nails and screws under cyclic loading. Journal of Wood Science, 64(5):612-624. 2018】

 

 

木造建築および木質内装に関わる炭素収支量評価

木材を建築物や内装に使用することは,炭素を大気中に放出せずに固定することになりますので,大気中の二酸化炭素濃度増加の抑制に貢献します。とはいうものの,木材を生産するにもエネルギーが必要となります。環境優位性を考えるうえでは,木材使用による炭素固定量と木材生産に要した炭素排出量の両方を調査し,正味量を把握することが大事です。本研究では,静岡県内で建てられた公共建築物・内装工事を対象として,その建築物における木材生産のあらゆる工程(製材・運搬・乾燥・加工等)を追跡し,炭素収支量を算出しています。この研究は,静岡県木材協同組合連合会・静岡木材業協同組合・株式会社フジイチ等と共同で実施しています。画像はこころ木造建築研究所からご提供いただきました。