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6残基の抗菌ペプチドの細胞内やベシクル内への侵入に対する膜電位の効果

Farzanaさんたちの「ラクトフェリシンB  由来の6残基の抗菌ペプチド の細胞内侵入やベシクル内侵入に対する膜電位の効果」の論文が、アメリカ微生物学会 (ASM) の J. Bacteriology に掲載されました (203, e00021-21, 2021) [Abstract]。この論文では、蛍光プローブ・リサミンローダミンBレッド (Rh) をラベルした6残基の抗菌ペプチド であるLfcinB (4-9) (Rh-LfcinB (4-9)) と1個の(蛍光プローブ・カルセインを細胞質に含む)大腸菌細胞との相互作用を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)で研究し、低濃度のRh-LfcinB (4-9)がカルセインの漏れを起こさずに大腸菌の細胞質に侵入することを見出した。この結果は細胞膜にポア形成などの損害を与えずに、このペプチドが細胞質に侵入することを示している。一方、H+-イオノフォアであるCCCP存在下では、ペプチドは細胞質に侵入できなかった。CCCP存在下では膜電位が損失することが知られているので、ペプチドの細胞質侵入には膜電位が重要な役割を果たしていることが分かった。タイムキルアッセイ法により、この低濃度のペプチドは短時間で大腸菌を殺す活性を持つが、CCCP存在下ではその活性が阻害されることが分かった。また、Rh-LfcinB (4-9)と1個の大腸菌スフェロプラストの相互作用をCLSMで研究し、カルセインの漏れを起こさずにRh-LfcinB (4-9)がスフェロプラストに侵入するが、CCCPが侵入を阻害することを見出した。次に、Rh-LfcinB (4-9)のE.coli-lipid GUVの内腔への侵入に対する膜電位の効果を、最近我々の研究室で開発された方法  (Biophys. J. 118, 57, 2020) を用いて研究した。GUV内腔への侵入の速度を意味するペプチドの内腔への侵入の確率は負の膜電位の増加とともに増加することを見出した。以上の結果は、膜電位がRh-LfcinB (4-9) の大腸菌細胞質やGUV内腔への侵入の速度を増大させ、その結果細胞死が誘起されることを示している 。