概 要
2自由度制御形ベアリングレスモータでは,回転子の半径方向2自由度(x,y)を位置決め制御するために,三相インバータを1台必要とします.また,シングルドライブベアリングレスモータでは,三相インバータを1台用いてd軸電流でz方向の支持力,q軸電流でトルクを制御し,磁気浮上回転を実現します.いずれの場合も,三相インバータ1台で独立した2種類の電流を制御します.ここで,三相Y結線では,u相,v相,w相のを流れる電流の関係はiu+iv+iw=0であり,独立変数は2つです.一方,パワートランジスタを6個用いる三相インバータでは,上下アームのスイッチング動作は排他的な関係にあるので,スイッチングの自由度としては3あることになります.この点に着目して,もし三相インバータで3つ独立した電流を制御できれば,追加のパワートランジスタ無しで制御自由度を拡張できるため,システムのさらなる小形化,低消費電力化,低コスト化が可能になります.まずは,一般的な三相永久磁石モータの回転制御(d軸電流とq軸電流を利用)と鉄球磁気浮上装置の位置決め制御(0軸電流,零相電流を利用)を,三相インバータ1台のみで可能か実証しました.
提案する巻線結線方法
三相永久磁石モータの中性点と電源の中点との間に鉄球磁気浮上装置の電磁石のコイルを接続します.この部分を流れる電流を「零相電流」と言います.零相電流を制御することで,鉄球に作用する力を調整します.零相電流をizとして,中性点に流れ込む方向を正とすると,電流の関係式はiu+iv+iw+iz=0となり,独立変数は3つです.これらを三相インバータで制御します.例えば,Tr1,Tr3,Tr5をOnにすると,iu,iv,iwは中性点に流れ込む向きに,izは中性点から流れ出る向きに電流が流れます.永久磁石モータに影響を及ぼさないように零相電流を流すには,各トランジスタのスイッチングどうしたらいいか,理論的に求めました.
磁気浮上回転実験
実際に三相PMモータと鉄球磁気浮上装置を,三相インバータを1台のみ用いて制御したところ,PMモータを回転させながら鉄球を磁気浮上させることに成功しました.コントローラは日本ナショナルインスツルメンツのCompact RIOを用いました.現在,モータ負荷時に位置決め精度が悪化する問題を,外乱オブザーバを用いて改善しています.また,ドライブ回路の改良を行っています