スロットレス高速ベアリングレスモータ

本研究では,直径30mmの中空円筒形回転子の50000rpm以上での高速回転を目的としています.直径と回転数の積であるDN値が150万以上の場合,一般的な転がり軸受の適用は難しいため,本研究では,静圧空気軸受にて円筒形回転子の並進と傾きの4自由度を非接触で支持します.残りの回転子の軸方向と回転の運動制御を,1ユニットのベアリングレスモータのみで実現します.提案するベアリングレスモータ構造は,4極の永久磁石を90度ツイストした回転子と,三相6個のコアレスコイルから構成されます.一般的なモータの固定子は,歯と呼ばれる部分と,その歯と歯の間の巻線が挿入されるスロット呼ばれる部分があります.この,歯の部分で,高速にモータが回転すると,鉄損と呼ばれる損失が増大します.そこで本研究では,高速回転時の損失低減のため,スロットがない(すなわち歯が無い)スロットレス構造を採用します.提案構造では,固定子のd軸電流(界磁調整)で軸方向支持力,q軸電流(トルク調整)で回転を制御するため三相インバータ1台のみで駆動可能であり,これを『シングルドライブベアリングレスモータ』と称しています.本研究では,原理・構造提案,有限要素電磁界解析による原理確認,および実機製作と性能評価を行い,60000rpmでの非接触高速回転を実現しています.固定子コアは,リング状の電磁鋼板を積層し,その内周面にコイルを張り付け,ホール素子とともにエポキシ樹脂でモールドしました(made by アサヒ電気研究所).静圧空気軸受は数マイクロメートルのオーダの位置決め精度が必要で,このモータの精密組み立ては,浜松のAPマシンズさんにご協力いただきました.

ベアリングレスモータの構造
駆動原理図
スロットレスモータの固定子
試作したモータ