分類:脊椎動物門両生綱有尾目アンビストマ科アンビストマ属
学名:Ambystoma mexicanum
英名:axolotl, Mexican salamander
一般の方には「ウーパールーパー」といった方がわかりやすいかもしれませんが、生物の教科書や図説では「幼形成熟」の例として「アホロートル」がよくとりあげられます。一般には、「アホロートル(axolotl)」は「学名:Ambystoma mexicanum」という種の和名(英名)なのですが、しばしば「アンビストマ科に属する動物の幼生」あるいは「アンビストマ科に属する幼形成熟個体」の総称として使われ、別種を示すこともありますので、名前にはご注意ください。また、ペットショップなどで売られているアホロートルには、ワイルド、ホワイト、ゴールド(アルビノ)、マーブル、ブラックなど体色に関する品種が知られていますが、ホワイトの眼は黒く、ゴールド(アルビノ)の眼が赤いという違いに注意下さい。なお、ショップで見ることはありませんが、生まれつき眼がないアイレス系統というものも知られています。
アホロートル(Ambystoma mexicanum)は、メキシコ原産の有尾両生類で、通常は首の周りに大きな外鰓を持ち、幼生時だけでなく成体(全長15?25cm程度)になっても変態せずに一生水中で過ごします。基本的には肉食性で、イトミミズや水棲昆虫、小魚など水中で動くものに反応して、捕食行動を示します。これまでの研究から、アホロートルは、餌が動いた時に生ずる水の微小振動や餌動物の筋肉が発する微弱電流を体表にある側線器官で検出して、餌捕りに役立てていることがわかってきました。また、餌を捕らえた後は、餌の味(味覚情報)や硬さ(機械感覚情報)が飲み込むか吐き出すかの決め手になるようです。味覚神経の神経応答と行動実験の吐き出し率の関係を詳しく調べたところ、アホロートルは甘味をほとんど感じず、苦味や酸味は低濃度でも忌避し(嫌う)、塩味は低濃度で積極的に摂取する(好む)ことがわかりました。
塩味に対する嗜好性は、同じ有尾両生類のホライモリ(mudpuppy, Necturus maculosus)にはみられませんが、これは2種で塩味受容に関わるイオンチャネルが異なるためと考えられています。哺乳類で主に塩味受容に関わるアミロライド感受性Naチャネルが、ホライモリにはほとんどなく、アホロートルには少し存在するのかもしれません。このアミロライド感受性Naチャネルは、哺乳類が個体発生の水棲から陸棲に移行する周生期に増加しますが、サンショウウオ類では同じ現象が変態期に起こるらしいこともわかってきました。また最近では、ヒトで効果のある苦味抑制剤がアホロートルでも効くらしいという結果が得られました。苦味受容のメカニズムは、ヒトとアホロートルで共通性が高いのかもしれません。