酵母

栄養源飢餓が引き起こす細胞内イベントの解析

TORの機能

細胞が栄養不足になるとどうなるのでしょうか?細胞はこの飢餓を堪え凌ぐための様々な機構を持っています。これらの機構の中心で機能するタンパク質が当研究室で研究しているTOR(targetofrapamycin)です。このタンパク質が栄養源の有無を感じて、それに応じた適切な対応を細胞がとれるように命令を出しています。このTORは細胞の増殖、分化、細胞死を制御している非常に重要なタンパク質で、癌や寿命といった分野でも研究が進められています。このTORは酵母からヒトまで広く保存されており、哺乳類ではmTOR(mammalianTOR)と呼ばれています。
タンパク質を合成する装置であるリボソームの合成は栄養源飢餓になると即時的に停止しますが、この時リボソーム合成停止は多段階的に制御されていることを見いだし、リボソームの組み立てに関与する機構の解析を進めています。また飢餓で誘導される遺伝子の転写に関与する転写活性化因子は通常は細胞質に局在しており、飢餓になると核内に蓄積します。この核内蓄積に必要な新規タンパク質をTORがどのように制御しているのかを解析しています。TORの活性を阻害すると、形成されていた微小管が崩壊します。この現象を機構を解析中で、TORが細胞分裂の制御していることを示唆するデータを得つつあります。

 

染色体の複製・分配の機構の解析

図2 染色体の分離機構:細胞周期のM期前期では,図のようにスピンドル極体(SPB)と動原体が結合した紡錘体が形成されています。染色体が分離するにはまず動原体タンパクがAPC/Cを活性化し,セパレースと結合してその活性を抑えているセキュリンに,ユビキチンを結合させます。セキュリンにユビキチンが結合すると,プロテアソームがセキュリンを分解し,これによって,セパレースが活性化します。そして,セパレースが姉妹染色体間を結合させているコヒーシンを分解し,染色体が紡錘体の両極に移動し,染色体の分離が完了します。

複製された姉妹染色体の分配は、細胞周期にあってもっともダイナミックなイベントです。どのような機構で複製された姉妹染色体が均等に2つの細胞に分配されるのか、最近ようやくその理解が進みました。我々は、染色体の均等分配の機構を保証している重要なタンパク質(セキュリン及びセパラーゼ)の新しい変異遺伝子を作成することでこれらのまだ知られていない機能を発見しようと試みています。また、姉妹染色体に微小管を的確につなぐためのセーフティー機構(スピンドルチェックポイント)の機構も、現在進展の進む分野ですが、これまではスピンドルチェックポイントの不活性化に姉妹染色体間の張力が必須とされてきましたが、これと異なる結果を見いだし、現在研究を進めています。また、Bub2も染色体の均等分配に重要なタンパク質ですが、なぜBub2を欠損すると不均等分配を起こすかは不明でした。この機構も解明しつつあります。

 

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