ラット

Wistar Rat (Alb-DsRed2 トランスジェニックラット)

ラットは日本古来から愛玩動物として飼育されており,18世紀の江戸時代の書物には,毛色やそのパタンの異なるラットについてすでに記載されている。現在では,疾患モデルラットを含めた数多くの系統のラットが実験動物として確立されており,またゲノムの解読が終わったこと等から,研究面でも医学,薬学,生物学など様々な分野で広く活用されている。

我々,細胞・発生プログラム講座の塩尻ー小池研究室では,主に肝臓の発生・再生メカニズムに興味を持って研究を進めている。その研究を進めるにあたり有用な実験動物として,Alb-DsRed2トランスジェニックラットを,自治医科大学の小林英司教授から御供与いただき,その系統を維持して活用している。

Alb-DsRed2トランスジェニックラット(図1)はWistar系統のアルビノラットに,図2に示すような,肝細胞で特異的に活性化するアルブミンエンハンサー/プロモーターの制御下で,サンゴ由来の変異赤色蛍光タンパク質(DsRed2)を発現する外来遺伝子コンストラクトを導入したラットである。すなわちこのラットが発生する過程で,肝細胞が分化すると(アルブミンタンパク質を発現するようになると),その肝臓(肝細胞)が蛍光観察下で赤く光って見えるのである。このことは肝細胞が分化したかどうかを見分ける際に,きわめて簡便な一つの指標として用いる事ができる。例えばこのラットの妊娠10.5日齢の胎児から肝臓の原基を取り出す。この時期の肝臓原基はまだ肝細胞が十分に分化しておらず,DsRed2タンパク質を発現していない。しかし,この肝臓原基を適当な条件下で培養してから蛍光観察を行うと, DsRed2タンパク質を発現して赤く光って見える肝細胞が観察できるようになる(図3)。

今後このラットを有効に活用して,未分化な細胞からの肝細胞の分化メカニズムや薬剤肝障害からの肝臓の再生メカニズムの一端を解き明かしていくつもりである。

 

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