ブログリレー(松本剛昭)

ブログリレー

化学科 松本剛昭

この文章を読んでいる方々で、某予備校の現代文講師である林修先生を知らない人はあまりいないと思います。林先生といえば「いつやるか?今でしょ!」があまりにも有名ですね。このセリフがもはや一人歩きをしているくらいですが、実はこれ以外にも、私たち理学部の人間にとって本質的に思える言葉を林先生は発信しています。

「人間の思考は、類比・対比・因果の三つの作業を中心に展開する」

これは、物事の考え方についての方法論です。考察すべき問題があり、その問題にまつわる材料がいくつか与えられたとき、それら材料を比べたときに何が似ているか、何が異なっているか、似ていることと異なっていることの原因は何なのか…という作業を繰り広げることが「考える」ことだと言っています。この順序通りにあれこれ考えをめぐらすと、一つの問題について自ずと考察できてしまうから不思議です。

例えば「水とメタンの物性について考察せよ」という化学の問題があるとします。漠然とした問いかけなので答えは千差万別かもしれませんが、「類比・対比・因果」の方法に照らし合わせれば次のような考察ができるでしょう。

水とメタンは分子量が同じである(類比)。一方で、水とメタンの融点を比較すると水の方が圧倒的に高い(対比)。ファンデルワールス力は一般的に分子量に比例するので、分子間力がファンデルワールス力だけだとしたら水とメタンの融点は等しくなるはずである。しかし、水は水素結合を作るための極性をもつため、メタンと比べて分子間力が強い。ゆえに、融点が大きく異なるのは極性の有無によるものであると考えられる(因果)。

理学は、自然の理(ことわり)を解き明かす学問です。自然が魅せてくれる現象を我々が手にとって、あれこれと考えを巡らせて原理や法則を導き出す学問です。様々な学問がある中で、「考える」という行為の比重がとても高い学問です。したがって、「考える方法論」というものを意識的に身につける必要があります。

新たに入学してきたフレッシュな学生さん、そして大学の講義に一通り慣れている先輩学生さん、これまでに「考える方法論」を意識的に考えてきたことがなければ、ぜひ「類比・対比・因果」の方法を取り入れてみてはいかがでしょうか?講義の内容、レポートの課題、そしてこれからの人生について、考えることが楽しくなってやめられなくなるはずです。そうなればあなたは、もう立派な理学の人間の仲間入りです。