【第166回】盛岡少々紀行

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渡部 敦夫(昭和56年人文学部法学科卒)

今回、盛岡の実家に帰った時に、寄ってみたい店がある。こないだユーチューブで初めて知ったS食堂というラーメン屋である。名物おばちゃんと激辛ラーメンが売りのお店らしい。その日は前日の雨もちょうどあがり、家を11時に出発した。途中、下の橋で昔通っていた幼稚園の教会の横を通り、盛岡藩南部氏の居城、不来方城址公園の中を抜け、石川一少年が旧制盛岡中学の授業をさぼって詠んだ短歌の歌碑を横目に見て、中学時代の同級生が宮司をしているS神社の脇を通り過ぎると、ほぼ鳥居前の飲食店街の一角に、目指すS食堂があった。

11時20分に暖簾をくぐると、3坪程に4人掛けのテーブルが5卓置かれていた。そこには、既に60代の夫婦が辛そうなカレーラーメンを汗びっしょりで、食している。
右奥の卓に腰かけると、名物おばちゃんが来てくれて、「前に来てくれたことあるよね」と聞かれ、「初めてです。」と答えると最初から説明してくれた。「壁に貼っているメニューに緑色の印が付いているラーメンは辛さが選べます。お茶は自分で注いでください。」(セルフと言わないところがよい)
私は今週の人気1位のごますりラーメン(850円)を注文した。やがて、ごま12,000粒が入ったすり鉢と擂粉木棒が運ばれ、ごまを擂ることになる。擂り終わる頃、味噌か塩を選ぶのだが7対3で味噌が多いというので味噌を選んだ。
さて、問題の辛さだが全部で7段階あってチョイ辛からお花畑まであり、辛さに弱い私は、勿論、チョイ辛を選んだ。
12時になると近くの県職らしき集団が2組ほどドヤドヤとやってきてごますりラーメンやカレーラーメンを注文していた。
うれしいことにラーメンが出る前に汗拭き用のおしぼりとサービスのふろふき大根がでてきた。「これ汗拭きだから、机を拭かないようにね。」となかなかユーモアのあるおばちゃんの一言に思わず笑を嚙み締めた。
さて、ごますりラーメンだが、さっきのすり鉢が器として使われているのだ。なるほど一石二鳥だなと妙に感心しながら、一口食してみたが、確かにチョイ辛で安心した。4段階目激辛からはスープを全部飲み干さなければならないそうでお花畑に至ってはスープを残すとスパイス代200円を払わなければならないそうである。

美味しく担々麵風味のラーメンを頂いてから、家路の北上川のほとりに岩手山が見えた。まさに「ふるさとの山に向かひていふことなし」の心境であった。