【第164回】プラスチック産業への願い

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投稿者: 酒井 忠基 (1964年 静岡大学工学部工業化学科卒)


昭和39年に工学部工業化学科を卒業し、新材料として注目を浴び始めていたプラスチックの成形加工機械分野に進出する機械メーカーに就職しました。当時の大学ではプラスチックに関する講義がほとんどありませんでしたので、会社では米国やドイツの技術資料を集めて手探りでプラスチックの成形加工とは何かを学びました。プラスチックの生産量は、図に示しましたように、この頃から世界中で急速に伸び、最近では年間4億トンになっています。会社は各種の産業機械を手掛けていましたが、当方はほぼ一貫してプラスチック関連機械の研究開発部門で働き、入社当時は年間売り上げが数億円程度の事業が数千億円へと成長するのに貢献してきました。この成長の過程では世界各地のプラスチック関連の学会活動にも参画し、2017年には米国プラスチック技術者協会(SPE)からアジア出身者としてから初めて国際賞を授与されました。この年は学会が自動車発祥の地、デトロイトで創立されてから75周年であると同時に、当方も丁度75歳でした。

現在、我々の生活の隅々にまで便利に使われ、順調に発展してきたプラスチック産業ですが、最近は世界で年間3億トン以上の廃棄物を出し、海などがひどく汚染されるようになりました。石油資源の僅か3%を活用して作られるプラスチックですが、プラスではなく、”マイナスチック”であると悪口をいわれる時代にもなっています。これは生産されるプラスチックの約40%が容器・包装材など、使い捨て用途に向けられているからです。これ迄、リサイクル技術や生分解性プラスチックの開発なども手掛けてきましたが、急増するごみ問題には後手後手の対応しかできていません。3Dプリンティング技術やナノテク技術などを駆使してプラスチックの更なる高機能化を進めると同時に、使い捨て用途削減への画期的な技術開発、社会的な対応が不可欠です。まさに、SDGs(持続可能な開発目標)をプラスチック産業界が真剣に追求していかなければなりません。これ迄培ってきた知見や経験をもっと生かせなかったかと痛感させられる昨今です。