2.柿田川湧水・河川水に生息する原核生物群集
(1)柿田川湧水中の原核生物群集の構成(FISH法による解析)
湧水中の原核生物の群集構成を蛍光顕微鏡下で分類群(ここでは綱レベル)ごとに異なる遺伝子をターゲットとして識別した結果を以下に示しました。バクテリアのプロテオバクテリアが多いこと、また、少ないながらも アーキア(古細菌)が存在することががわかります。
FISH法を用いた直接検鏡による湧水中の原核生物の群集構成(2013年6月14日採取).
(2)柿田川の原核生物群集の構成(次世代シーケンス解析)
次世代シーケンスを用いて詳細に目レベルにまでおとし、群集構成を調べた結果が次図です。
次世代シーケンスを用いた遺伝子解析による柿田川の原核生物の群集構成(目レベル).
富士山麓東南に広がる三島溶岩流の末端からわき出る湧水中には湧水1mlあたり1000 (103)から10,000 (104)程度の原核生物(細菌と古細菌をあわせたもの) しか存在しません。この値は湖や海の値と比べても100分の1程度の少なさです。しかしながら、その少ない数にもかかわらず多様な微生物が富士山の地下からわき出る湧水には含まれていることが明らかになりました。国道1号線の直下で柿田川の最上端にわき出す湧水は、酸素を多量に含んでいるにもかかわらず、湧水中には酸素を嫌う原核生物や、その水温が年間を通じて15℃前後と低い温度で一定であるにもかかわらず、40℃以上の環境中に生息する好熱性細菌も含んでいることが分かってきました。
その多様な原核生物がわずか1.2kmの柿田川の流れの中でさらに多様性を増していることが上図で分かりますが、その理由は川の中に繁茂する水生植物であることが分かってきました。
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本研究は、公益財団法人 河川財団の河川整備基金助成事業(25-1215-202, 26-1215-019, 27-1215-014, 28-5211-039)によって実施しました。