静岡大学 電子工学研究所  極限デバイス研究部門・ナノデバイス分野 池田・濱﨑研究室

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何をやっているのか?

ナノメートルサイズの世界を体験しましょう!
『熱電変換材料』・・・その歴史は古く1800年代前半から研究されていますが,環境に優しい石油代替エネルギー応用の観点から,今また注目を集めています.熱電変換材料とは,読んで字のごとく,温度差(熱)と電気を直接変換することのできる材料です.物理的には,材料に温度差をつけると電圧が発生する『ゼーベック効果』と,電流を流すと温度差が発生する『ペルチェ効果』に基づいています.

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現在,私たちの生活で発生する熱のうち,およそ2/3が無駄に捨てられています.熱電変換材料を使った熱電発電は,こうした廃熱を再利用することのできる発電方法です.しかし発電効率が低いために実用化には至っておらず,現在は車やオートバイのエンジンやマフラーに取り付けて試験されている段階です.
逆に電気的に温度制御を行うことのできる,いわゆる『ペルチェ素子』は実用化されていて,私たちの身近なところでは,持ち運び可能なポータブル温冷庫や,車のシートの温度制御などに利用されています.しかしこれらの例でもわかるように,変換効率の悪さからこちらも小規模の応用にとどまっています.とても家庭用冷蔵庫に取って代わることはできない状況です.
熱電変換材料の効率を劇的に向上する方法のひとつとして,ナノテクノロジーが注目されています.材料をナノメートルサイズまで小さくすると,電子の閉じ込め効果やフォノン輸送過程の変化により,性能が大きく向上することが理論的に予測されているのです.私たちはこの性能向上を実験的に示すことを第一段階の目標としています.そのために,シリコンをナノメートルサイズまで薄くしたり細く加工して,熱起電力や熱伝導率を測定しています.
熱電特性を測定する対象がナノメートルサイズにまで小さくなると,それに応じた測定技術も必要になります.私たちの研究室では,走査プローブ顕微鏡(SPM)の一種であるケルビンプローブ顕微鏡(KFM)を利用して,熱起電力を測定しています.KFMは表面電位(プローブと試料のフェルミエネルギーの差)を計測するので,局所的な電位差(起電力)の測定ができるのです.また,走査電子顕微鏡(SEM)と赤外線熱画像カメラを組み合わせて,熱伝導率を評価することを進めています.これらの手法は,他機関では類を見ない,非接触での新しい測定方法です.
変換効率が向上すると,そこら中で捨てられている熱から電気を抽出したり,超低消費電力の冷却機やヒーターが実現できます.しかも,熱電素子は小型化が容易でメンテナンスも要らないという特長も持っているので,私たちの生活の至る所に浸透していくことでしょう.
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