薬剤分子や有機材料の開発において、精密有機合成は不可欠です。私たちは、有用な有機分子骨格の効率的な構築法や光エネルギーを利用した有機合成法の開発を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する環境にやさしい有機合成技術の提供を目指しています。
生物活性コア構築法開発と合成利用
天然から得られる生物活性物質には、共通の骨格をもつものが多数存在します。私たちは、生物活性に強く関わる骨格(生物活性コア)について、コンバーチブルな構築方法や、それを実現するための水中で駆動する不斉触媒反応の開発を行っています。開発した手法を用いて、抗真菌活性や抗マラリア活性、抗腫瘍活性を示す生物活性物質の合成に成功しています.

関連論文:total synthesis, enantioselective reaction, spirocycles
可視光を利用する有機分子変換
従来の有機合成は、熱エネルギーによるイオン反応が中心となっています。私たちは光の尖端都市を目指す浜松から、可視光エネルギーを利用するラジカル反応を開発し、持続可能な有機合成化学への変革に貢献することを目指しています。これまでに、青色光で活性化される有機分子触媒を用い、安価に導入できる「目印(特別な芳香環)」を付与した炭素-硫黄(C–S)結合を選択的に活性化することで、高反応性ラジカルを発生させる手法を開発しています。
ラジカルスイッチングの官能基創出
青色光で活性化される有機分子触媒(上の反応のものとは異なる触媒)を用い、目印を付与した炭素-硫黄(C–S)結合の炭素原子上にある水素原子を選択的に活性化することで、高反応性ラジカルを発生させる手法を開発しています。これにより一つの官能基(ベンゾチアゾールチオ基)で異なるタイプのラジカルを選択的に発生させる「ラジカルスイッチング」を実現しています。
水素原子移動触媒の開発
有機合成で使用される多くの反応では、官能基を取り除きながら新しい炭素-炭素結合を構築します。これに対し、光エネルギーを利用して水素原子を取り除くことのできる触媒(水素原子移動触媒)を開発しています。これまでに、炭化水素やアルコールから水素原子を取り除きながら新しい結合を構築することに成功しています。
関連論文:visible-light-induced reaction
有機反応を利用する生物活性天然物探索ツールの開発
生物活性を示す分子骨格と選択的に反応する有機反応を利用して、天然資源中の多数の有機物の中から生物活性天然物を見つけ出す手法の開発を行っています。独自の炭素ラジカル発生法を応用することで、メチレンラクトンを蛍光基でラベル化できることを確認しました。


