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脂質分子の二分子層膜横断(フリップ・フロップ)に対する膜張力の効果

Moynulさんたちの「脂質分子の二分子層膜横断に対する膜張力の効果」の論文がアメリカ物理学協会 (AIP) の J. Chem. Phys. に掲載されました ( J. Chem. Phys. 148, 245101, 2018) [Abstract] [PDF]。この論文ではまず、巨大リポソーム(GUV)を用いた脂質分子の二分子層膜横断(フリップ・フロップ)の速度定数 kFF を求める方法を開発しました。この方法では、まず蛍光プローブでラベルされた脂質 (NBD-PG および NPD-LPE) が内側の単分子膜にしか存在しないGUVを、最近我々が開発した方法 ( Langmuir, 34, 3349, 2018) により作成しました。上記の蛍光ラベル脂質によるGUV膜の蛍光強度を共焦点レーザー顕微鏡により測定し、その解析によりNBD-PG や NPD-LPEのフリップ・フロップの速度定数 kFF を求めます。この方法を用いて、膜の張力が増大するにつれて、膜にポア形成をすることなく kFF が大きく増大することを発見しました。この結果は、これらの脂質分子が親水性のプリポアの壁面を拡散することにより2分子膜を横断することや、プリポアの形成頻度が膜張力の増加に伴い増大することを示しています。