概要と定義
ベアリングレスモータの定義は,東工大の千葉明教授らの著書”Magnetic Bearings and Bearingless Drives”によれば,”A motor with a magnetically integrated bearing function:磁気的に結合された軸受機能を有するモータ”であり,転がり軸受(ベアリング)を使用しないモータということを意味します.ブラシレスモータと同様の意味合いです.1980年代後半に千葉教授がベアリングレスモータの一般的なコンセプトを提唱し,現在世界中の多くの研究機関で研究開発されていますが,特に本邦とスイス・オーストリアが多くの論文を発表しています.
磁気軸受との差異
磁気軸受は,回転主軸を非接触で支える機械要素ですが,主軸を回転させるには,下の図に示すように,別途モータ機構をシステムに組み込む必要があります.一方,ベアリングレスモータは,先述した通り非接触磁気支持と回転の機能を両方兼ね備えているため,磁気軸受と比較すると小形・コンパクトな構造になります.特に,シャフト長が短いと,危険速度が高域になるため最大回転数をあげることができます.また,シャフト長が同じ場合,ベアリングレスモータは磁気軸受よりも高出力を得ることができ,さらに,鉄心や巻線の使用量を低減できるため,低コスト・省エネです.
磁気支持力の発生原理
下の図で,ベアリングレスモータの磁気支持力の発生原理を示します.回転子と固定子間の空隙部にN-S-N-Sの4極が発生している場合を考えます.回転子には吸引力が作用しますが,中心に位置する場合は半径方向に作用する力の総和は零となります.中心位置から回転子が半径方向に少しでも変位すると,吸引力によりその変位した方向に引き付けられてしまいます.回転子を磁気支持するには,この吸引力と反対方向に力を発生させる必要があります.この磁気支持力は,右側の図のように,空隙部の磁束密度を意図的に不平衡にすることで発生させることができます.一般的には,固定子に施された支持巻線に流す電流の大きさと方向を変えることで,磁気支持力を制御します.回転子の半径方向変位を検出し,所望の位置に留めるように磁気支持力を調整することで,回転子の非接触支持が可能です.
磁気軸受とベアリングレスモータのテキスト
一般社団法人 電気学会 磁気浮上技術調査専門委員会 編
ISBN: 978-4-904774-65-6