ベアリングレスモータの巻線統合化

これまでのベアリングレスモータの多くは,磁気浮上巻線と電動機巻線を別々に施す「分割巻線」方式でしたが,本研究では,両巻線を統合し1種類の巻線のみでの磁気浮上回転を実現しています.支持力発生のための電流とトルク発生のための電流を統合巻線に重畳させます.この時,お互いが干渉しないように電流を流す必要がありますが,理論計算を基に,所望の支持力とトルクを発生させることができる巻線構造および制御手法を本研究では新たに提案しています.本ベアリングレスモータは,12スロット10極の表面磁石貼付形(Surface-Mounted Permanent Magnet,SPM)ベアリングレスモータで,四相巻線構造です.

一般的なモータと比較しても,巻線構成は同じで,パワートランジスタ数が若干増える程度で,ベアリングレスモータ駆動を実現します.ベアリングレスモータの特長として,磁気浮上以外にも,半径方向のアンバランス抑制制御が可能です.一般的なベアリングで支持される回転体では,回転中心と重心の位置は一致しません.なるべく一致するようにバランス取りと呼ばれる作業があります.回転中心と重心が一致しないと,アンバランス力が回転数の二乗で大きくなり,高速回転時にはモータおよび装置全体が大きく振動します.しかし,ベアリングレスモータの場合,重心を通る軸(慣性中心)で回転させることができるため,バランス取りが不要で,低消費電力かつ装置の振動が少ない駆動が可能です.下の動画は,提案する12スロット10極の四相統合巻線形永久磁石ベアリングレスモータにブロアを取り付けて実験しています.ブロアをつけて回転させても,回転同期成分の外乱力が装置全体には伝わりません.