ブログリレー
地球科学科 塚越哲
与えられた贅沢な時間を2つの機会に
毎日「ステイホーム」.TVやネット情報にふれる時間が圧倒的にふえました.なんと授業すらも.おそらくコロナ前よりずっと社会から情報を得るようになったと思います.皆さんはもう大学生,社会にも責任を持つ世代であると当時に,私たち教員よりもずっと長く生き,社会に貢献してこの社会の中で生きてゆくのです.この今をぜひ社会を見つめる機会にしてほしいと思います.
現在のような逼迫した状況になると,どうしても余裕がなくなり,有益か否か,損得,優劣はたまた敵味方といった価値観が支配的になりがちです.生き抜かなければなりませんから,生きる基本に近いところの情報収集や判断が本能的に勝るのでしょう.でもそれでは,人間以外の他の動物と同じになってしまいます.
他人に感染する可能性がありながら仕事をして他人に移したとか,陽性と知っていて出歩いたとか,が大きな批判を集めています.でも元々社会とは様々な人を擁して成り立っていますから,そういう人がいるのはあたりまえです.社会の仕事は,それを糾弾することではなく,「そのような人を含めて」どうやって成り立たせてゆくのか,を考えることではないでしょうか.社会の安全性を考えれば,当然そのような行動は慎むべきことです.しかし,他人を監視し,糾弾しあうような社会は,快適さと引き換えに本当に安全をもたらすのかを考えることも必要です.他人に厳しい社会が形成されれば,都合の悪い真実は封印され,多くの人からは見えなくなります.そこにどんな危険が醸成されていても,です.
要は,長い時間持ちこたえ,より多くの人が快適に生きられる社会はどんな社会であるのか,この機会に自分の目でよく見,考えてみてください.社会や国家が私たち一人一人を受け入れる「器」になるのか,それとも不適格者を排除する「檻」になるのか.
さて「ステイホーム」にはもったいないほどいい季節です.マスクを着けて,ひとりで少しの時間,散歩はいかがでしょうか.幸い静岡大学のキャンパスとその周辺は豊かな自然に恵まれています.こんな時でないと,散歩などしませんよね(私は散歩が趣味なのでよくします,「徘徊」の方が適切な表現かも).「10時20分開始の授業に行く」とは別の歩き方をしてください.
季節柄,鳥の声がよく聞こえます.普段人間活動の音でかき消されているからでしょうし,そもそも普段はあまり気にしていないからでしょう.飛行機やヘリコプターの音も少なくなりました.その代わり,鳥の鳴き声や風の音がよく聞こえます.それに自分の足音,「こんな足音だったのか」と気づかされます.足音も個性があります.ペットは足音でだれかを判断できます.自分の足音を聞いてみてください.
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足元に目を向けましょう.その草花の名前は?知らなくてもいいか?名前を知っても何の得にもならない,と考える人もいるでしょう.でも,ある草花の名を一つ知ったとします.例えば「マツバウンラン」という草花の名を知ったとします.しかし他の草花は?ほとんど知らない.「ほとんど知らない」ことを改めて知ることができます.
足元の草花は園芸植物でなければ,ひょっとして(多分)人類の登場もよりずっと前からこの地球上で花を咲かせていたでしょう.自然は過去の地球からの遺産です.ずっと前から花を咲かせ,種を作り,また花を咲かせてきた・・・その前はどんな植物だったのだろう.
人生の中で普段あまりしない,こんな考えを巡らせるいい機会です.贅沢な時間をぜひ.