ブログリレー(石原顕紀)

ブログリレー

生物科学科 石原顕紀

「自利とは利他をいう」

理学部学生の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。私は前期講義のオンデマンド教材作成に目処がたち、ほっとしています。加えて、受講生の皆さんからのフィードバックがなかなか好感触なことがとても嬉しいです。

さて、5月1日のブログで、私が静大理学部卒業であることは紹介しました。山内清志教授の指導のもと、当時環境ホルモンと呼ばれていた環境化学物質が甲状腺系に及ぼす影響について生化学的な手法を用いて解析していました。
そこが私の研究の原点です。最近は、これらの環境化学物質が発達障害の一因になっているという疫学的な報告などもなされ、注目しています。
なぜ、そこまで注目するか。我が家には2人の息子がいます。長男は発達障害のひとつである自閉症スペクトラム障害です。障害というとあまりいい印象ではないかもしれませんが、私は個性の一つだと思うようになりました。長男の育児にあたって、教えられたのだと思います。だから、注目したいのです。

ヒトは高度に組織化された社会に生きています。障害児は弱者でしょうか。大多数に適合できないという意味ではそうかもしれません。では強さの象徴である百獣の王ライオンは何故絶滅の危機に直面しているのでしょうか。
多様性、が重要であるという人がいます。私も同意見です。ヒトは、高度に組織化された社会の中、柔軟に様々な個性、遺伝子を残してきました。このことがヒトの種としての強さを生み出している。だから地球上に人類が繁栄しているのだと。
Diversity:多様性
Plasticity:可塑性(柔軟であること)
Sociality:社会性
大学も同じだと思います。いろいろな地域からいろいろな人が集まります。多様な人たちが、学科、サークルなど社会を形成しています。そこでは意見の食い違いもあるでしょう。ときに柔軟な対応に迫られます。

さて、障害者雇用に基準が設けられ、企業側が適応を迫られる中、社員の7割が知的障害者である会社があります。実は皆さんにもとても馴染みが深い会社です。小中高、大学も、授業で板書する際、チョークを使用します。この会社の主力製品はチョークなのです。
この会社の前会長さんの著書に「利他のすすめ」というものがあります。人は人の役にたってこそ生きている喜び、幸せを感じられるのだそうです。これが「自利とは利他という」の精神です。私は週末の夕方、近所をジョギングして健康維持に努めようとしています。その道中にあるお寺の門に「自利とは利他という」の文字が掲示してあります。身が引き締まります。

私は私の仕事を通して、皆さんが勉学を修める過程で役にたちたいと思っています。大学にいる皆さんが利他の精神を持つことで、とても優しい大学になると考えています。
利他の精神をもって、多様性を尊重し、大学という社会の中、柔軟に成長できたらいいですね。「利他」、こころの片隅においてくださると嬉しいです。