ブログリレー(阪東一毅)

ブログリレー

物理学科 阪東一毅

今年に入ってからテレビはコロナ報道一色でしたが、その陰でオリオン座のベテルギウスが昨年末から急激な減光を続けていたというのはご存じだったでしょうか。ベテルギウスはオリオン座に二つある一等星のうちの一つで、赤みを帯びた恒星です。赤みを帯びているということは恒星の寿命が近づいていることを意味しており、この減光は近いうちに超新星爆発が起こる予兆ではないかと噂されていました。

オリオン座は冬の星座ですが、冬は一等星が多いうえ湿度の低い季節なので空の透明度も高く、大変きれいで華やかな星空が見えます。近くには同じオリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバランがあり、この六つの一等星を線で結んだものが冬のダイヤモンドと呼ばれています。そのダイヤモンドの中心付近にベテルギウスがあり、星好きな人にとっては季節を彩る大変重要な星でした。この一等星として明るく輝いていたベテルギウスが昨年末から突如として減光し始め、それが超新星爆発の予兆であるとの噂が出ました。

しかし、その後2月に入ってから減光が収まり、一転してその後増光し始めました。現時点ではほぼ完全に明るさを取り戻しているようです。結局、なぜ減光したのかはよくわかっていませんが、少なくとも超新星爆発の予兆ではなかったようです。ベテルギウスの前を別の天体が通り過ぎたために一時的に減光したのではないかという説が有力だそうです。

当初、このニュースを聞いたとき誰もが聞いたことのあるベテルギウスという星がなくなってしまうのではないかというヒヤヒヤ感と、人類史上まれにしか起こらない天体ショーが見られるのではないかというワクワク感の両方がありましたが、現在はほっと一安心という気分です。超新星爆発という現象は大変貴重な天体現象ですが、西暦1054年にも別の星で観測されています。藤原定家の「明月記」にも記録が残っていることは有名ですが、昼間でも肉眼で見えるほど明るく輝いていたようです。この超新星爆発を起こした天体の残骸は“かに星雲”として星空に残っており、現在でも観測できます。

ここ数年多忙で星空を眺める機会は取れていませんが、富士山を入れた星景写真を載せておきます。10年近く前の夏の夜空ですが、富士山の陰影の右側に御殿場の登山ルートが明かりとなってくっきり見えています。今年は新型コロナの影響で登山ルートが閉鎖されるそうなので、この登山客の光跡も見えないことと思います。少し寂しいですが、ベテルギウスのようにいつか富士山が復活して活況を取り戻してくれる日が来ることを期待したいと思います。