ブログリレー
数学科 松本敏隆
在宅授業が始まって二か月が経とうとしています。一部対面授業も始まりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。静岡の下宿住まいの人も多いと思います。私が大学生の頃に住んでいた下宿は、古い家屋を利用したもので、トイレ、洗面、洗濯機共用で風呂無しの間借りでした。当時ワンルームマンションは未だ少なくて、友人達の多くも似たような所に住んでいました。住んでいた下宿のすぐ目の前には小川というか水路があって、この時期には蛍がちらほら舞うという、なかなか風情のある環境でした。大学1年生の頃は、数人の友人と数学基礎論の本を読む自主ゼミを行っていました。途中で公理的集合論の本に代わりつつ、1年半くらいは続いたと思います。このとき勉強した内容は現在の専門には繋がっていませんが、友人達とあれこれ議論しながら勉強したことはよい刺激になっただけでなく、数学に対する自分の理解を深めることにも非常に役立ちました。自主ゼミを行ったことが無い人は、現在の状況が改善されたら、友人と興味が共通する分野の本を選んで自主ゼミを行ってみてください。
あと一か月余りで夏休みということで、読書案内ではありませんが、私が大学に入学する前後に読んでいた本を紹介します。
[1] 「物理学とは何だろうか 上、下」 朝永振一郎 著、岩波新書[2] 「近世数学史談」 高木貞治 著、岩波文庫 [1]は高校生の時に、新聞の新刊広告を見て買って読んだものです。天体の運動から熱の分子運動論の完成までの格闘が描かれています。熱に関する部分は難しく思いましたが、ケプラーがティコ・ブラーエの観測データ(地球から見た角度のみ)から惑星の軌道を導き出したアイデアに関する部分は、とても興味深く読んだ記憶があります。 [2] はガウスから始まって、アーベル、ヤコビの楕円関数論までの数学史が主に語られています。ガウスの凄さが垣間見える本です。