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物理学科 森田健
数ヶ月前に読んだ本に「良い教師は、子供からよく学ぶ」という一文があった。大学の教員なるもの、一応、教師の端くれなので、なるほどと思い、新学期は学生から多くを学ぼうと志していたところ、この全面オンライン講義である。
今学期、講義を通して新たに学んだことと言えば、次のようなものだ。
・動画の作成方法
・動画の配信方法
・エクセルのマクロの使い方
・Zoomなどの各種オンラインツールの使い方
こうしてみると確かに学んだことは多いのだが、学生から学んだことはほぼゼロだ。多分、あの本も、こういうことを言いたかったのではないだろう。やはり講義というものは、人と人とのつながりが大事だということを改めて感じる。
ただそうは言っても、大学の講義は、通常講義でも学生と教員の接点というのはあまりない。講義中や講義後に質問をする学生は数えるほどなので、講義でどこまで伝わっているのかあまりわからない。(もちろん、学生の顔色から、なんとなく伝わり具合がわかるので、オンラインよりはずっとましだが。) 私が大学生のとき「講義がわからなかったら教員が悪い。」と主張する先輩がいた。「大学なるもの学生を入試で選抜しているため、学生は基本的に優秀なはずだ。そんな優秀な自分たち学生にわからない講義をするとは、けしからん教員だ」という理屈だ。時が流れて、教員となり教える側になってみると「講義がわからないのは、もちろん学生が悪い。」と考えるようになった。「全員が満足できる完璧な講義なんかできるわけがない。それなのに質問もしないとは、けしからん学生だ」という理屈だ。確かに学生にとっては「けしからん教員」かもしれない。
結局、講義というものは、オンライン動画のように、一方通行で成立するわけがなく、学生と教員の両者がその場にいて、はじめて成立するものなのであろう。今後、通常講義が始まったら、学生の皆さんは、講義中にわからないところがあれば積極的に質問して、「けしからん教員」を指導してもらえればと思う。