この卒業研究の内容を紹介してください。
ありがとうございます! 簡単に説明しますね。
私の研究タイトルは「学生発案アイデアの商品化プロセスの検討 ― 観光温泉地・浜名湖舘山寺での地域活性化事例 ―」です。私は地域活性化プロジェクトに所属しており、その活動の一環として、地域の新名物を作るアイデアソンを主催しました。そこで出た学生のアイデアを地域事業所様が商品化してくださり、「ゆあがり牛乳プリン」として実際に販売されました。
本研究は、その商品化に至るまでのプロセスを詳細に記述・分析したものです。最終的には、今後同じような産学連携で商品化を目指す際の指針となる「共創ガイドライン」を作成しました。
この卒業研究に取り組もうと考えた動機はなんですか。
高校時代に自治体主催の地域活性化イベントに参加したことがきっかけで、観光や地域づくりに興味を持ち、大学でも勉強できたらいいなぁとおぼろげながらに思っていました。
そんな中、大学2年生の時に「先端情報学実習」という授業でこの分野を実践的に学べると知り、履修を決めました。
先端情報学実習とは、学部学生が先端的な情報学研究に主体的に取り組むことを目的とし、学生自身で研究課題を設定してプロジェクトを進める実習です。私は、社会学科の杉山岳弘先生と行動情報学科の白井靖人先生が行っていた「地域情報資源の活用とデジタル化に関する研究」に参加しました。この研究は、浜名湖畔にある観光温泉地である舘山寺をフィールドに、若者の視点から舘山寺の観光資源を再発見、活用方法を模索しながら、情報発信・企画・実践に取り組むことを目的とするプロジェクトです。
お二人の先生の指導を受けながら企画を進め、最終的に商品化まで漕ぎ着けることができたのですが、単に商品を作って楽しかったで終わらせたくありませんでした。経験を客観的に分析し、どうすれば学生も企業も本当の意味で納得してものづくりができるのか。失敗しないための指針を形にしたいと思ったのが、一番の動機です。
「ゆあがり牛乳プリン」について、紹介とあなた自身の客観的評価を教えてください。
ゆあがり牛乳プリンはこちらです!(画像)
地元の「いなさ牛乳」を使用したなめらかなプリンで、ゆあがりにぴったりな食べやすい味に仕上がっています。現在は舘山寺エリア内限定での販売ですので、気になる方はぜひ現地を訪れてみてください。
客観的な評価としては、1日平均63個という販売数を記録しており、ビジネスや地域振興の面では大きな成功を収めたと言えます。ただ、研究の視点で見ると、プロセスにおいて学生の参画が形骸化した場面もあり、産学連携のあり方としては多くの課題と学びが残る事例だったと評価しています。
「地域の銘菓・グルメ」に取り組む企業などは多いと思います。この研究ではいろいろな知見を得たと思いますが、その方面で活かせる知見はなんですか。
そうですね。
地域グルメの開発において「学生とコラボしました!」と発信される事例は多いんですが、実際にはコストやスケジュールの都合で、学生のアイデアが反映されきれないケースも少なくないです。今回も、商品としては成功しましたが、プロセス面での課題がたくさん見えてきました。そこから得た知見の例を2つ挙げます。
1つ目は「コミュニケーション」です。企業側が無理なものを単に切り捨てるのではなく、背景をしっかり説明し、学生と納得できる落とし所を探る。これがプロジェクトの熱量を維持するために不可欠だと痛感しました。
2つ目は「コーディネーターの重要性」です。学生の情緒的な想いと、企業の経営的な視点。この両者の間に立って橋渡しをする存在がいることで溝を防ぐことができます。
本研究で作成したガイドラインを活用すれば、企業と学生がより良い関係を築きながら、本当に地域に愛されるグルメを生み出せるはずです。
主査・副査の先生からどういう指導・講評をうけましたか。
完全に私がやりたい「持ち込み研究」だったので、最初は手法や方針を固めるのに苦労しました。そんな中、主査の藤岡伸明先生は私の意図やこの研究の社会的意義を深く汲み取ってくださり、具体的なアプローチへと昇華させてくださいました。また、将来のキャリアを見据えた多くのアドバイスもいただき、非常に視野が広がりました。
副査の杉山岳弘先生は先端情報学実習の指導教員でもあり、アイデアソンから商品化までずっと見守ってくださいました。時には厳しく、しかし成長に欠かせない価値観を多く示してくださったおかげで、人間としてもとてつもなく成長できたと感じています。
情報社会学科で過ごした4年間に学んだことは何ですか?
本当にたくさんのことを学ぶことができました。私は高校時代、理数科に通っていたのですが、文工融合でプログラミングや統計学などの基礎授業を学ぶことができた上、社会学も吸収でき、これからの情報社会を生きていく上で必要なスキルや考え方は、網羅的に学ぶことができたと思っています。
また、プロジェクトではリーダーをさせていただき、副査の先生の厳しくも温かい指導を受けることができたので、「企画力」や「調整力」はかなり育てられたのではないかと思っています。社会人としての思考や他者協働の在り方までインプット・アウトプットさせていただきました。そんな指導のおかげで、結果として第一志望だったメーカーの総合職から内定をいただくことができました。
この卒業研究を進めるに当たり、特に勉強した分野はなんですか。
木下康仁氏のM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)です。質的データを用いて理論的飽和を目指し概念や理論を起こす分析手法です。主査の先生に勧められて勉強しました。今回の参与観察では理論的飽和に到達することはできなかったのですが、理論を作っていく学びができたことは、今後生きていく上ですごくタメになったと思っています。
また、浜松キャンパスの図書館には個別ブースもあり、勉強に最適な環境でした。また、近くには市の図書館もあり、集中して学習できる環境が複数ある事実は、このキャンパスの魅力だなぁと思っています。
この卒業研究に取り組む過程で、あなたの中で変わったことはなんですか。
「物事は決して一面的ではない」と深く実感するようになりました。調査をしていると、どうしても片方の立場だけで物事を見てしまいがちですが、反対側の立場に立ってみると、そこにはそれぞれの事情や論理があることに気づかされます。これは商品開発に限らず、あらゆる場面に言えることだと思います。
SNSでの批判や日常の噂話なども、背景にある複雑な状況を知らないまま判断するのは浅はかであると強く感じるようになりました。この研究を通して、安易な二元論に陥らず、複合的な視点で物事を捉える姿勢が身についたことは、私にとってすごく大きいです。
指導教員講評
指導教員:藤岡伸明