依頼講演⑤:光野秀文先生

暑い…暑い…暑い…という声が、人とすれ違う度に聞こえてくる浜松在住の世話人②(シンガポール産)です。ここは熱帯地方か???と疑いたくなる今日もペプチド研究に励む皆様に、依頼講演⑤でご講演いただく光野秀文先生のインタビューをご紹介させていただきます。

光野秀文先生

光野秀文先生は、東京大学先端科学技術研究センター生命知能システム・神崎研究室で助教を務められており、昆虫が有する驚異的な嗅覚能力を理解し、再現することでバイオセンサをはじめとする化学センサの開発研究に従事されています。毎日、新奇なペプチドや蛋白質に魅せられたい(本当は魅せたい)世話人①(青森産)が昆虫科学とペプチド科学との接点を探りたいということで、今回ご講演をお願いしました。

世話人②も「昆虫の視覚や嗅覚」と化学センサなどの「装置」と一見距離がありそうな二つの接点に興味津々です。それでは研究の楽しさが伝わる光野秀文先生のインタビューをどうぞ。

1)現在、どんな研究をされていますか?その研究との出会いについても教えてください。
現在、主に、「昆虫の匂い受容機構(主にガ類の性フェロモン受容機構)の解明」と「昆虫の嗅覚機能を活用した匂いバイオセンサの開発」を行っています。それぞれ大学院生時代と研究員時代に出会った研究です。

大学院生時代には、害虫に食害を受けた植物が放出する匂いによって害虫の天敵が誘引される、いわゆる植物-害虫-天敵間の三者系に興味があり研究室に入りました(ちなみに、大学院生時代の研究テーマはガ類の性フェロモン受容体の同定に関する研究)が、中でも、昆虫がもつ驚異的な嗅覚能力の素晴らしさに心がひかれて、現在の研究に至っています。

研究員時代には、現研究室に所属し、昆虫の嗅覚機能を応用する研究と出会いました。昆虫の嗅覚を人工的に再現することで、これまでにない超高性能な匂いバイオセンサの開発につながるのではないかという考えのもと、現在の研究に至っています。

2)今後どのように展開していきたいですか?
匂いバイオセンサの社会実装!現在までに、バイオセンサに関する数多くの研究が報告されていますが、匂いセンサとして実用化に至った例はほとんどありません。現在、多くの先生方と共同研究を進め、社会実装まであと数歩のところまで到達していると思っています。昆虫の嗅覚の素晴らしさを世の中に知らしめ、社会の役に立つ匂いバイオセンサを提供することが自身の夢です。

3)あなたが尊敬している科学者を教えてください。またその理由は?
みなさん、尊敬しています。特に、西岡孝明教授(京都大学名誉教授)、神崎亮平教授(東京大学先端科学技術研究センター所長)、櫻井健志准教授(東京農業大学)は、私の研究人生に大きな影響を与えてくださった尊敬する先生方です。

4)研究能力の中であなたが最も大切だと思う能力を1つ教えてください。またその理由は?
楽しいことをみつける能力。大学院生時代に指導いただいた先生からは「それをやって楽しいか?」と常々言われ、いまだに現所属研究室の先生から「楽しんでるっ?」と言われています。楽しいことをみつけることで、研究人生に立ち塞がるさまざまな障壁を乗り越えていけると思います(信じています!)。

5)若手研究者に特に伝えたいことを教えてください。
みなさん、頑張って研究しておられるので、私から伝えられることは多くありませんが、一つだけ。一歩引いて見てみてください。そうすれば、何か見えてきませんか?(怖い意味ではありません・・・)

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