特別講演①:向井秀仁先生

いつも第50回若手ペプチド夏の勉強会のHPをご覧いただき、ありがとうございます。ここ最近40度を超える暑さの中、実験に励むペプチド関係者のみなさまいかがお過ごしでしょうか。

今回は第50回若ぺの特別講演①でご講演いただく向井秀仁先生のインタビューをご紹介させていただきます。

向井秀仁先生(長浜バイオ大学HPより

向井秀仁先生は、長浜バイオ大学バイオサイエンス研究科に在籍し、タンパク質の生合成、成熟化および代謝の過程で産生されるペプチドを”秘密の, 神秘的な”を意味する”cryptic”と “peptide”から「cryptide」と命名し、それらペプチドの生理的・病態的な存在意義の解明に関する研究を中心に進められています(世話人②(シンガポール産)はこの言葉を創るセンスがとても羨ましいです)。

また、若手ペプチド勉強会では、常連中の常連で、世話人②が知る限り毎回ご参加いただき、若手研究者と熱い議論を交わしてくれています。それでは向井先生の人柄が溢れ出るインタビューをどうぞ。

1)現在、どんな研究をされていますか?その研究との出会いについても教えてください。
夏の勉強会でもお話させていただきますが、我々はタンパク質の生合成、成熟化および代謝の過程で産生されるペプチド、特にミトコンドリアタンパク質由来のペプチドの中に、高い自然免疫を活性化する能力を持つペプチドが存在することを世界に先駆けて発見しています。そして現在では、動物の個体内でそれらペプチドが、様々な炎症に関わっていることがわかりつつあります。炎症は様々な疾病に伴って起こり、しばしば致死的な反応を示しますが、それらの反応には未だ明らかになっていない点がたくさんあります。その制御機構を明らかにし、治療に結びつけるのが我々の目標です。

研究との出会いは、私が米国に留学していた1990年代に遡りますが、夏の勉強会では、普段話をしない、そのころのセレンディピティについてもお話したいと考えています。

2)今後どのように展開していきたいですか?
自然免疫機構は多数の未知生理活性ペプチドによって司られている可能性が高いことが我々の研究で明らかになってきています。しかし、その情報を集約して伝えるシグナル分子の存在も、我々の研究からおぼろげながらも見えてきました。このシグナル分子の機能を調節できれば、多くの炎症性の疾患を治療できるようになるのではないかと期待しています。近い将来、病に苦しむ多くの患者さんに希望を与えられるよう、研究室一丸となって努力しています。

3)あなたが尊敬している科学者を教えてください。またその理由は?
まず、私にペプチド研究の面白さを教えて下さった、恩師・宗像英輔先生です。またGタンパク質を発見しノーベル賞を受賞したProf. Alfred Goodman Gilmanと、私の留学時代に直接いろいろご指導いただいた東島勉先生です。お二人とも今の研究につながるセレンディピティに導いて下さった、大恩ある恩師です。

4)研究能力の中であなたが最も大切だと思う能力を1つ教えてください。またその理由は?「研究を楽しむ」ことでしょうか。楽しいからこそ、目的に向かって真摯に実験に向かえるのだと思います。また我々のように生物を相手にした研究では、ほんの小さなことも見逃さない観察力が求められます。動物行動や表情の変化から、新たな発見があることもあります。さらに、自分が導いた実験結果を、そのまま受け入れ、それからいろんなことを「妄想」し楽しむことだと思います。その上で仲間と議論することで、思いもしなかった新たな仮説が生まれることもあります。

5)若手研究者に特に伝えたいことを教えてください。
自分自身が未熟で、若手研究者の皆さんに何か言えるのか、躊躇するところもありますが、是非、研究を楽しんでもらいたいと思います。それと、若いうちに外国を含めたいろいろな研究室での経験を積んでもらいたいと思います。独創性の高い研究をしたいと思っていても、なかなかそれにたどり着くのは難しいかと思いますが、様々な研究室での経験を掛け合わせれば、案外、世界の誰も気づかない仮説に遭遇できるのではないかと考えています。是非、ペプチド科学分野の若手研究者の皆さんが、日本発の独創的研究成果をあげていただけることを期待しています。

 

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