館長挨拶

キャンパスミュージアムの役割

キャンパスミュージアム 館長 塚越 哲

大学博物館とは何をする場なのでしょうか.同じく大学にある図書館は情報を蓄積し,それを提供する場であるといえます.それに対して博物館はモノ(物)を蓄積する場ですが,モノの提供もできるのでしょうか.モノと情報の顕著な違の一つは,複製の可否に現れます.情報は容易に複製されシェアされ膨大な量となって人間社会に供給されますが,モノは唯一無二.どんな複製もオリジナルと等価にはなりえません.博物館はモノを蓄積しますが,基本的にモノを提供することはできないのです.

では博物館では何が提供できるかといえば,やはり情報なのです.しかし誰にでも同等にふるまう文字情報と異なり,博物館が提供する情報は,モノに対峙した個々の人がとらえたそれぞれ独自の情報であり,それは訪れた人の数だけ多様であるといえます.複製可能で等価なバーチャル情報が溢れかえる現代社会の中で,博物館はモノからヒトが直接受けるリアリティを提供します.

キャンパスミュージアムにある一つの標本/資料からあなたが何か感じとったなら,また日を変えてその標本/資料に対峙してみてください.きっと前回とは異なる何かを感じ取ることでしょう.それこそがキャンパスミュージアムの役割です.