松本 和明 准教授(日本近世史)

私は近世史(江戸時代)を専攻しています。寺社から政治制度や社会を見通すことを目的として、朱印地寺社という、徳川将軍から安堵された寺社領を有する寺社について研究を進めています。とくに、①幕藩領主との関係、②寺社と地域との関係、③寺社の内部構造と寺領・社領支配、を中心に分析を行い、近世の特質について考えています。

近年の近世史研究は、社会的諸関係から構造分析を行い、できるだけ微細に社会を把握しようとする研究が盛んです。政治・社会制度や思想など現代とは全く異なるものの、その時代に生きていた人々が何を考え、どう行動しようとしていたのかをひもとくことは、単純に面白いことでもありますが、自分の問題関心とは何か、ひいては自分自身が何者なのかを考え、社会や自己を客観的に見る視座を鍛えることと表裏の関係にあると考えています。その分析に必要な史料も豊富にのこされています。

10代将軍徳川家治朱印状(部分、個人蔵)

教育面では、近世史と近代史を担当しています。史料がある限りにおいてはどのようなテーマでも研究可能です(難しいテーマもありますが…)。また、研究を活かして中学校・高等学校で社会科・地歴科の教員として活躍している卒業生もいますが、必ずしも教職・専門職に就く必要はなく、例年公務員・一般企業への就職も順調です。どの道へ進むにしても、歴史を学んだことはきっと人生に役立つと思います。

静岡駅前にそびえる久能山東照宮の碑

 

【主な研究業績】

・「近世朱印寺社領の成立について―慶安元・二年の新規安堵を中心に― 」(『論集きんせい』29、2007年)

・「近世中後期出羽国宝幢寺領における土地移動と支配 」(渡辺尚志編『東北の村の近世』東京堂出版、2011年)

・「近世中後期における大坂町奉行所寺社支配について―元禄五年寺社改帳を手がかりに― 」(『史学雑誌』126-3、2017年)

・「近世寺院の御免勧化願いとその実態―文政期における駿府臨済寺の事例から― 」『人文論集』 73-2、2023年)

 

【卒業生による主な卒業論文のテーマ】

・「近世富士山信仰をめぐる経済活動―村山三坊にみるその変遷と特質」

・「嘉永茶一件に見る駿府茶問屋の動向と駿府町奉行」

・「近世後期伊豆国東浦地域における硫黄公害訴訟」

・「「学制」期における『重新静岡新聞』と学校教育」

・「大正~昭和初期におけるモダンガール像」

・「荻野太作日記から見る静岡大火」