行者穴遺跡と滝沢鍾乳洞遺跡での調査成果に関する普及活動

考古学分野では、3年生と4年生が履修する考古学実習Ⅱ・Ⅲの授業時間を利用しながら、考古学の調査研究成果を社会に還元する取り組みを行っています。昨年度は、浜松市浜名区に所在する行者穴遺跡と滝沢鍾乳洞遺跡での調査研究成果の普及活動として、両遺跡の様々な価値について調べ、大学祭などで展示を行いました。
行者穴遺跡では、近年、本州2例目になるとみられる旧石器時代の文化層が発見されていますが、近接する滝沢鍾乳洞遺跡においても、浜松市博物館などによる発掘調査で、様々な時期の考古資料が残されていることが明らかにされています。静岡大学考古学研究室では、浜松市との共同調査として、2020年度以降、両洞窟遺跡の調査研究を進めてきましたが、その過程で、考古学の発掘調査で明らかにされたことの他にも、洞窟の利用をめぐる様々な歴史があることがわかっていました。そこで、2025年度には、近年に至るまでの両洞窟遺跡の利用の歴史を調べて整理するとともに、両洞窟遺跡にどのような価値があるのかを説明する展示を行うことにしました。
滝沢町の歴史や洞窟利用について調べるために、資料を収集するとともに、両遺跡の地権者の方や滝沢町の方々からお話しをお聞きする中で、両洞窟遺跡は現在に至るまで様々なかたちで利用されており、多様な価値があることがわかりました。静岡キャンパスの大学祭期間中に開催した第52回考古展「滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡」では、発掘調査で出土した資料とともに、両洞窟遺跡の多様な価値について紹介する展示を行いました。同様の展示は、浜松キャンパスのテクノフェスタ期間中に高柳記念未来技術創造館で開催された特別展の中でも行わせていただきました。

第52回考古展の様子(1)

第52回考古展の様子(2)

11枚の展示ポスターのPDFファイルを下記のURLからダウンロードしていただけます。

http://hdl.handle.net/10297/0002002338

2025年度に実施した以上の取り組みは、令和7年度地域連携応援プロジェクトで採択された「静岡県浜松市浜名区滝沢町の洞窟遺跡を紹介する展示ポスター制作事業」(連携先:浜松市市民部文化財課地域遺産埋蔵文化財グループ、浜松市浜名区滝沢町自治会)として実施しました。以下のURL(短縮URLです)から報告書をダウンロードしていただけるので興味があればそちらも(8頁~11頁)ご覧ください(報告書の中には行者穴遺跡の調査について取り上げていただいた静岡新聞の記事も掲載させていただいています)。

https://x.gd/3EFRZ

 

世界史食事会を開催しました

世界史分野の恒例行事である、「世界史料理会」が今年も開催されました。過去に遡り、当時食べられていた世界各国の料理をレシピを元に再現し、みんなで食べる会です。今年のテーマは「独立革命期のアメリカ料理」です。
偉人に愛された料理をコンセプトにコーンミールのパンケーキ、マカロニ&チーズ、サラダを作りました。コーンミールのパンケーキは初代アメリカ大統領ジョージ・ワシントンの好物で、とうもろこしの風味が感じられます。マカロニ&チーズはトマス=ジェファソンが愛したとされる料理で、チーズとブラックペッパーの効いた、今でも親しまれている料理です。サラダは同じくトマス・ジェファーソン邸宅であるモンテチェロに残されていたレシピから再現しました。ドレッシングはオリーブオイルをベースに、こしょうを大量に使っています。アメリカの料理はファストフードを思い浮かべる方が多いかも知れませんが、広大な土地で豊かな食文化が形成されていたことが分かります。本間千枝子、有賀夏紀著『世界の食文化12 アメリカ』農山漁村文化協会、2004/04 などを参考にしました。

2025年9月に行者穴遺跡の発掘調査を行いました。

こちらも少し前(2025年度)のことになりますが、2025年9月12日から9月27日の日程で浜松市浜名区滝沢町に所在する洞窟遺跡である行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。考古学実習に関連するフィールドワークとしても実施しており、調査期間中に学部学生15名と修士課程の大学院生2名が調査に参加してくれました。

行者穴遺跡の2025年度の発掘調査の様子

行者穴遺跡の発掘調査は、1998年度に浜松市博物館によって実施され、その後、時間をおいて、2022年度からは静岡大学人文社会科学部(考古学研究室)と浜松市での共同調査として進められています。2022年度からの調査で、約2万8千~2万7千年前と約2万年前の2つの旧石器時代の文化層が残されていることが明かになりました。石器と動物遺体が出土する文化層が洞窟遺跡で発見されたのは、青森県の洞窟遺跡に次ぐ、2つ目の事例と思われます。九州や沖縄のいくつかの洞窟遺跡でも旧石器時代の文化層が発見されていますが、全体からみるとごく少数です。日本列島ではこれまでに1万を超える数の旧石器時代の遺跡が発見されていますが、そのほとんどすべては台地上に残される開地遺跡からは、保存条件の制約から主に石器資料しか出土しません、これに対して、洞窟遺跡では石器資料に加えて、動物遺体(骨・角・歯)も保存されるため、当時の動物資源の利用の手がかりを得ることができます。行者穴遺跡での2022年度以降の調査で、約2万年前の文化層からシカ類、ニホンザル、鳥類の骨や歯が出土しています。また、加工痕跡のある骨片やその製作に関わって生じた欠片も出土しています。ニホンザルの歯や鳥類の骨、その場所での製作の証拠を伴う骨器が出土するのは日本列島の旧石器時代の遺跡としては初めての事例になると思われます。これらについて2026年5月24日に開催された日本考古学協会総会で口頭発表したところ、注目を集めました。今後そうした成果を論文として発表するとともに、今後も調査を継続する予定です。

近年の調査成果は、複数メディア(2025年11月1日静岡新聞朝刊24面【社会】、2025年12月2日読売新聞(全国版)朝刊15面【文化】)で紹介されました。

https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=11392

学術雑誌に掲載された大学院生(修士課程考古学専攻)の論文

少し前(2025年度)のことになりますが、大学院(修士課程)に在籍していた考古学専攻の大学院生の論文が学術雑誌に掲載されました。福地朝彦さんの「釈迦堂遺跡における土偶利用の社会的背景について」(pp.35-46)は『山梨県考古学協会誌』第31号に、榛村敦也さんの「西貝塚と石原貝塚から出土した貝類遺物の再検討」(pp.1-20)は『静岡県考古学研究』No.57に掲載されました。いずれも卒業論文をもとに執筆したものです。

それ以前にも、考古学専攻の大学院生(修士課程)が執筆した論文が学術雑誌に掲載されたことが何度かありました。最近、学術雑誌に掲載された論文は以下のとおりです。

  • 外山真子2024「静岡県内出土縄文土器の敷物圧痕からみる編組製品の様相」『静岡県考古学研究』No.55 pp.1-16
  • 河原崎洸希2024「静岡平野における古墳時代前期の集落と掘立柱建物の諸類型」『静岡県考古学研究』No.55 pp.17-30
  • 井上雅也・中原康介・山岡拓也2022「縄文時代中期における神津島産黒曜石の分布とその特徴」『静岡県考古学研究』No.55 pp.85-100

これらは、外山真子さん、河原崎洸希さん、井上雅也さんが大学院(修士課程)に在籍していたときに、卒業論文をもとに執筆して、掲載されたものです。

2026年度日本史分野新3年生遠足を行いました

「神の道」をゆく神々

5月某日、日本史分野では恒例の新3年生の遠足を行いました。今年度は近年では例になかった三保方面へむかいました。

JR清水駅からバスで向かい、まずは御穂神社を見学しました。

つづいて「神の道」を進んで、日本史分野の卒業生も勤務している「みほしるべ」を訪れ、そのガイドのもと三保松原の歴史や抱える課題などを学びました。

あわせて、松原にて松葉かき体験を行いました。松葉かきを行わないと土が肥沃になりすぎて松が枯れてしまうそうで、世界遺産の景観保全にも大変なご苦労があることを体験的に学ぶことができました。

最後に、「羽衣の松」を経て三保松原の海岸でしばしたそがれ、お茶屋でアイスクリームを食べてタイムアップとなりました。

「みほしるべ」の方々には色々とお世話になりました。お礼申し上げます。なお、その後学生の皆さんは静岡の夜の街に消えていったと聞いています。

羽衣の松の解説をうけています

海よ~おれの海よ~♪

2026年度新2年生歓迎静岡歴史散歩を開催しました

  静岡市歴史博物館を参観するところです

4月30日(水・祝日)にコースの恒例行事でもある静岡歴史散歩を開催しました。

歴史学・考古学コースを選択した新2年生の歓迎と懇親を目的としています。

今年度はJR静岡駅北口に集合し、午前中は伝馬町の静岡平和資料センターを訪問し、1945年6月の静岡空襲を体験された方から貴重なお話を伺うとともに、戦争に関する資料展示を参観しました。
その後、駿府城公園に行き、昼食をとりました。

  賎機山古墳の内部を見学しています

午後は静岡市歴史博物館にて企画展「没後五〇〇年 戦国大名 今川氏親」を鑑賞し、その後は再び駿府城公園に戻り、石垣の発掘現場(工事中のため外から)・徳川慶喜邸跡・旧静岡英和女学院宣教師館(ミス・カニンハム)を経て、静岡浅間神社と賤機山古墳の見学を行い、解散しました。

教員とともに、静岡市職員のかたの解説もいただきました。また、総勢22名と大人数のうえ、ドイツとチェコからの留学生も参加してくれました。

終始曇りがちでしたが、その分それほど暑くもならず、歩くにはちょうど良い天候でした。
市職員や高校教員として活躍されている卒業生も各所で加わって下さり、その点においても有意義な一日であったかと思います。

中世西日比較経済史勉強会 A study session on the comparative economic history of medieval Spain and Japan

日本史分野の貴田の研究活動報告です。言語文化学科の大原志麻先生の紹介で、来日中のスペイン・バリャドリッド大学のダビ・カルバハル・デ・ラ・ベガ先生をお招きし、スペイン・日本の比較史的観点から中世経済史に関する、小さな勉強会を開催しました。

まず、ダビ・カルバハル・デ・ラ・ベガ先生には、中世スペインの社会経済に関するご自身の研究を紹介いただきました。主に15~17世紀のカスティーリャ地域をフィールドとされていますが、今回の勉強会では銀行家の日記を用いた金融ネットワークの復原や、村の徴税簿を利用した不平等と社会的流動性の分析について平易に解説いただきました。

15世紀のスペインで作成された徴税簿に関する史料的性格の解説と、これを用いた研究手法の説明

次に、日本中世史を専門とする貴田の研究報告に移りました。現在、数千件ほど知られる14~16世紀の土地売買証文を活用しながら、主に畿内近国の不動産市場の実態について定量的な分析を進めています。今回の勉強会では、室町・戦国時代の災害・飢饉・徳政といった自然・社会現象との関わりのなかで、市場の盛況と停滞を論じようとしました。

15世紀の京都近郊で作成された土地売買証文の解説と、定量的な分析方法の提示

大学院生も含めて4人だけの小さな勉強会でしたが、中世のスペイン社会と日本社会の間にある共通点や相違点にも議論が及び、文明史的な視野からそれぞれの社会のあり方を理解するに貴重な機会となりました。そして、日本史側のメンバーはカタコトの拙い英語を用いながらでしたが、スペイン史側の先生方からは鋭い質問をいただき、学問的にとても刺激的な時間となりました。

報告をご準備くださいましたダビ・カルバハル・デ・ラ・ベガ先生と、ご仲介いただいた大原志麻先生には改めてお礼を申し上げます。

学位記授与式(3月24日)

今年度は学部生22名、大学院生3名が卒業・修了しました。おめでとうございます。

大学院生は、専門的な学修の成果を活かして、2名が自治体の文化財関係、1名が高校教員に採用されました。社会に出てからも一層の活躍を期待しています。なお、昨年度は記載しませんでしたが、修了生2名が同じく自治体の文化財関係、1名の留学生が県内企業に就職しました。

学部生は、民間企業7名、公務員8名(うち文化財関係1名)、中高教員4名(非常勤講師を含む)、進学1名、その他2名となっています。近年は公務員が比較的多いようです。全員が歴史学・考古学と関連した職業に就くわけではありませんが、卒業論文を執筆する過程で培った汎用的な能力を十全に生かして、それぞれの進路で頑張ってくれるものと思います。

日本史(10名):民間4名、公務員3名、教員2名、その他1名
世界史(10名):民間1名、公務員5名、教員2名、進学1名、その他1名
考古学(2名):民間2名

日本史分野の授業紹介

今年度後期、日本史分野の3年生は、「日本史学史料講読Ⅱ」を受講しています。これは、近世史料の輪読を行うものです。今年度は、慶長16年(1611)から同20年にかけての徳川家康の日々の動向を記録した『駿府記』(続群書類従完成会刊行)を読んでいます。

輪読にあたっては、いつ、誰が、どこで、何をした(何を言った)、といった、いわゆる5W1Hを正確に把握することを心がけています。その際、行為の主体が誰であるか明示的ではなかったり、よく読まないと読み取れない場合が多く、たとえば敬意表現や助動詞の「被(らる)」「可(べし)」に注意するなどしながら読み進める必要があります。

また、言葉の意味や人名を逐一辞書で確認することはもちろん、今回は寛政期に江戸幕府が編さんした『寛政重修諸家譜』(かんせいちょうしゅうしょかふ)から人物比定を行ってもらっています。受講生の志望する時代は近世に限られませんが、日本史学を学ぶうえで、史料の使い方も会得してもらいたいということです。

寛政重修諸家譜を真剣に調べている人。見つかるかな?

と、まあ難しいことを書いておりますが、基本的にはざっくばらんにやっており、質疑応答も積極的に行ってもらっています。この分野のいちばん面白いところは、史料を皆で読みながら、ああでもない、こうでもないと、ときに気楽に、ときに呻吟しながら議論することにあると思っており、その楽しさと苦しみを体感してもらえればと考えています。

どなたも、最初はとまどうと思いますが、真面目に取り組んでいればすぐにある程度は読みこなせるようになります。日本語ですし。といいつつなかの人もはじめて読む史料のため一部苦戦しておりますが、皆さんと議論することを楽しんでやっています。

秋の空 積もる書籍と ガチャピンと

世界史ゼミ旅行(2025年11月30日実施)

世界史分野ゼミ旅行にて、富士宮市に行ってまいりました。ゼミ旅行は、毎年3年生が行先・旅程の企画をし、学部2~4年生と大学院生から参加者を募り、行っているものです。今年度は、教員を含め18名で、富士高砂酒造、富士山本宮浅間大社、静岡県富士山世界遺産センターを見学してきました。

富士高砂酒造では、1830年から続く酒造の歴史を学びました。

富士山本宮浅間大社では、4年生が卒業論文を無事書き上げ、提出できるよう、祈願していました。これから卒業論文は追い込みの季節なので、その前の願掛けです。

静岡県富士山世界遺産センターの屋上から見た富士山

静岡県富士山世界遺産センターの屋上から見た富士山

静岡で生活していても、なかなかこれほど綺麗な富士山をみることは稀です。当日は、見事な富士を十二分に堪能し、よい旅の思い出を作りました。