私たちが生きる社会は歴史的にみてどのようにして生まれたのでしょうか?
中世とは、現代日本にいたる地域社会の原型が形づくられた時代でした。村落・生業、都市・市場・港湾、流通・交通、金融など、社会の諸要素が現代につながる形で芽生え、人々のエネルギーと多様性に満ちた「黎明の時代」ともいえます。そうした中世社会の実像を解き明かしたいという関心から研究を進めています。
特に、文献資料の読解とともに、現地調査の成果にもとづき、前近代の村落景観を復原するフィールドワークの方法論を模索しています。また、現代の日本社会では少子高齢化・過疎化・限界集落化が進んでいますが、そのなかで散逸・消滅が危ぶまれる文化財の保存を目指しています。
それから、教育面では、日本史分野のなかで古代史・中世史を学ぼうとする学部生・大学院生の指導を担当しています。これまでの卒業生は、政治史・経済史などに限らず、文化史・社会史も含むさまざまなテーマで研究に取り組んできました。なお、就職した後、地域社会の現場で文化財の保存に取り組んでいる卒業生もいます。
【主な研究業績】
・貴田潔「中世における不動産価格の決定構造」(深尾京司・中村尚史・中林真幸編『岩波講座日本経済の歴史』第1巻 中世 11世紀から16世紀後半、岩波書店、2017年)
・貴田潔「筑後国水田荘の開発と「村」の枠組み」(海老澤衷編『よみがえる荘園―景観に刻まれた中世の記憶―』、勉誠出版、 2019年)
・貴田潔「駿河湾から広がる塩の流通―地域経済の多層性を捉えるために―」(貴田潔・湯浅治久編『諸国往反の社会史』〈東海道中世史研究1〉、高志書院、2024年)
【卒業生による主な卒業論文のテーマ】
・「陰陽道成立の過程と藤原良房の意図―山陵祭祀の視点から―」
・「平安期における唐物の入手・分配・利用―香料を中心に―」
・「古代・中世における夢の認識―『小右記』と『玉葉』の比較を中心に―」
・「『宣胤卿記』にみる中御門宣胤の交流―今川家の位置付けとともに―」
・「応仁の乱における民衆の一揆の在り方」